夏の花と言えば蓮です。京都でも様々な所で見ることができます。大沢の池のような開けた場所でも見られますが、京都らしいのは寺院に咲く蓮で、宗派を超えて蓮池があります。蓮はインド原産で、中国を経て仏教とともに日本に伝わってきたと言われています。現実世界のような泥の中から育ってもそれに染まらず、水の上で清らかな花を咲かせるがゆえに、仏教の教えでは特別な花とされています。
蓮越しに見る相国寺放生池にかかる石橋
今回は京都市内中心部と東西南北の名所を紹介します。まず北は相国寺です。室町幕府三代将軍足利義満により創建された臨済宗相国寺派の総本山です。御所の北に位置し、総門(南にある門)から入ってすぐ左手、勅使門の目の前、放生池に蓮は生息しています。北に向かって天界橋と呼ばれる石橋も趣があり、様々な色の蓮と睡蓮が美しく咲き誇ります。柵があるので池のそばまでは行くことができません。
左が相国寺の蓮。右が南禅寺の蓮
東は南禅寺です。実は蓮池はほとんど知られていません。勅使門の前ですが、境内の外で見えない場所にあるので、知らない人は通り過ぎます。門に向かって中央に石橋があり、その両側一面に葉が茂り、隠れるように花が咲いています。
南禅寺の蓮池、勅使門が見えます
市内中心は二か所がおすすめで、そのうち一か所が革堂行願寺です。京都では、革堂(こうどう)とだけ呼ばれて有名ですが、何処?と思われる方がほとんどだと思います。寺町通丸太町を下がったところにある天台宗の小さな寺院ですが、創建は古く寛弘元年(1004)で行円上人よります。上人が鹿を射止めたところ、仔を孕んでいたことが分かり、それを悔いた上人が常にその皮をまとって鹿を憐れみ、人々から皮聖と称されていたことから、革堂と呼ばれるようになりました。
蓮の鉢に咲く花越しに見る革堂の本堂
ここの蓮は、蓮池でなくすべて鉢植えです。門から本堂への参道の両側と、本堂の両脇に所せましと蓮の鉢が並べられています。花と伽藍をからめた写真が撮りやすいです。猫好きの間では猫寺として有名で、境内には何匹も猫がいます。
革堂境内の蓮
次号では市内中心のもう一か所と南西の名所を紹介します。