苔香居(たいこうきょ)と聞いても、ご存じの方はまずおられないと思います。かくいう私も知人に紹介されるまでは、全く知りませんでした。一言でいうと、国文化庁登録有形文化財の指定を受けた個人の邸宅(山口家住宅)です。山口家は400年前から庄屋を務めた氏族で、公家葉室家・徳大寺家に仕えていました。葉室家が東京遷都に伴いこの地を去ったために代わってこの地域を管理するようになりました。20代目の現当主・山口俊弘氏は100年前の暮らしを見直し、近づけるよう挑戦されています。地下水も出るし、竈も現役です。
江戸時代後期に建てられて、ほぼ当時のままの主屋と
苔香居の名前の由来になった数十種の苔で覆われた美しい庭
今も現役の竈と土間にしつらえた囲炉裏。井戸水も出ます。食のイベントに使われます
苔香居とは茶人でもあった先々代が名付けた庵名で、苔の香りがする住まいという意味だそうです。扁額は上村松篁の筆。場所は 京都市西京区山田上ノ町26で、阪急電車嵐山線上桂駅から1km西、山麓高台にあります。まず立派で壮大な茅葺の長屋門に圧倒されます。そして奥に歴史あるたたずまいの主屋が見えます。さて、この素晴らしい空間である苔香居を、多くの方に味わってもらい、また建造物を保全し、次世代へと残していくために2019年よりワーケーション施設としての活用が始まりました。保全活動の会員ではない一般の方(平日10時から日没まで事前予約の問い合わせのあった方)は利用料金は日額3,300円(税込)、要・事前予約です。
明治期の座敷で夏の設えになっています。
ここでのんびり読書したり、庭を眺めたり、静かな時間が流れます
庭に囲まれたワーキングスペース。空調、Wi-Fiなど快適な環境です。
新緑、紅葉、雪景色と四季を感じられます
利用時の一時外出や飲食物の持ち込み可、備え付けのキッチンでちょっとした調理もできます。庭に面した風情ある座敷や、薄暗い茶室で過ごすのもよし、一心に仕事と向き合うのなら、快適な空調とWi-Fiもしっかり飛んでいるワーキングスペースとしての機能を備えています。
茶室がある広大な庭を巡るのも楽しいです
山口家が元士族だったのがしのばれます
外国人の方は近隣の提携サービスアパートメントで数ヶ月単位で滞在し、まったりと過ごすようです。また月1回程度、無料開放日が設けられ、苔香居での時間を体験できます。日本の食や文化のイベントとして、竈で飯炊き、囲炉裏で鍋造り、当主直伝の蕎麦打ち体験なども不定期で開催され、外国人のみならず日本人にも好評です。山口家と合同会社achicochiという企業が、文化財活用やPRを協力しあって行なっています。登録有形文化財で仕事をするという、貴重な体験をしてみませんか?
〒615-8274 京都市西京区山田上之町26阪急嵐山線 上桂駅より徒歩約12分
予約、問い合わせ https://achicochi.life/taikoukyo-coworking-japanese/#cta