トコトコ東北 by 川崎久子

第13回 キュートな小寸こけしも! こけしの生地・遠刈田温泉でこけしにまみれて幸せ気分(宮城県・蔵王)

蔵王町・遠刈田(とおがった)温泉にあるみやぎ蔵王こけし館には、コレクター寄贈のこけしが多数展示されています。その点数は日本有数の規模なのだとか。白石市の弥治郎こけし村からは車で20分ほどと近いので、ドライブがてら足を延ばしてみました。

みやぎ蔵王こけし館に到着すると、入り口でこけしの顔はめがお出迎え。エントランスホールにはこけしの大きな灯籠やこけしの油絵などが飾られ、装飾もこけし愛に満ちています。

展示室に入る前から顔はめ・特大灯篭・ランプシェード・絵画と、
いろんな形のこけしを見ることができ、わくわくします。    

遠刈田温泉で生まれた遠刈田系こけしは、現在確認されているこけしにまつわる史料のなかで最も発生年が古く、ここがこけし発祥の地と目されています。頭部が比較的大きく、頭頂部やこめかみ辺りから鬢にかけて赤い手絡(てがら)が描かれているのが特長で、しゅっとした鼻筋や切れ長の目をしており、弥治郎こけしよりも大人っぽい涼やかな顔立ちだなぁという印象。胴の模様は菊や、菊を変化させた模様が描かれ、とっても華やかです。


遠刈田系こけし。中央のこけしは内閣総理大臣賞を受賞した佐藤一夫工人の作品

展示室内にはこけしや木地玩具合わせて5500点あまりが展示され、壮観! 地元の遠刈田系をはじめ、弥治郎・鳴子・作並といった宮城県内のこけしのほか、肘折など東北6県のこけしが系統別に整然と並んでおり、それぞれの違いが一目瞭然です。

大型こけしのコレクションも見応えありますが、特に注目したいのが小寸こけし。胴の大きさはちょっとぽっちゃりめの大人の親指ぐらいでしょうか。数えきれないほどたくさんの小さなこけしがカゴにこんもりと盛られ、さらにかごの周りにもあふれています。

胴回り親指大サイズの小寸こけし。
1本1本すべて手作りかと思うと、気が遠くなるような圧巻のコレクション量。

こけし工人は大きな作品を作る一方で、刃物の切れ味や緻密な筆技が問われる小さなこけし作りにも挑戦してきました。この小寸こけしのなかでも、「袖のなかに入れて持ち歩ける」くらい小さなものを「袖珍こけし」「寸珍こけし」と呼び、通な方々のコレクションとして珍重されたのだとか。私も大型のこけしより、2寸程度の小さめのこけしを好んで求めることが多いのですが、寸珍こけしはさらに小さい!目を凝らして見るそのほんのりとした表情や胴の模様も美しく、これぞ職人技です。

キレイに並べられた寸珍こけし。
小指程度の大きさで、持ち運び用の入れ物もあります。

近年、こけし工人の高齢化が進んでいますが、遠刈田系こけしでは若手の育成にも力を入れています。ショップには若手工人の作品も並んでいるので、ぜひ好みのこけしを探してみてください。

館内のショップに並ぶ若手作家の一人、小山芳美工人の作品。

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