小学生の頃、親戚の集まりで東京在住の伯母に福島訛りを笑われた私。もう絶対訛らない!と心に誓い、だっぺなど語尾に張り付く訛りを封印したのは遠い、遠い昔のこと。今は福島の方言も気に入っています。例えば、「うるかす」。水に浸してふやかすことを意味しており、「お米をうるかす」のように使います。標準語では同義語が見つからない便利な方言のひとつ。先日、宮城県大崎市のしの竹細工工房を取材した際、対応してくださった館長さんも「竹をうるかす」とおっしゃったのを聞いた時は、おお!ここでも使われているのかと嬉しくなりました。
それはさておき、ゆらゆらと頭が動くさまも愛らしい会津の民芸品「赤べこ」。この「べこ」も、牛を意味する東北の方言です。会津若松市内を歩けば、駅のエントランスや公園、市内を走るバスのラッピングなど、いたるところで赤べこを目にします。
この赤べこの発祥の地は、奥会津の柳津町にある古刹・福満虚空蔵菩薩圓藏寺だといわれています。
福満虚空蔵菩薩圓藏寺は紅葉の名所(写真提供:公益財団法人福島県観光物産交流協会)
約1200年前に開創されたこの寺には、ある伝説があります。大地震で倒壊した本堂を再建するため、難儀しながら木材を運んでいたところ、どこからともなく赤い牛が現れ、資材を運ぶ手伝いをしてくれたのだとか。この伝説に由来して産まれたのが、民芸品の赤べこなのです。
体に描かれた黒い斑点は天然痘の痕を表しているとされ、流行り病にかかった子どもに赤べこを贈ったところ、たちどころに回復したという話も。コロナ禍にあって、疫病を祓う「あまびえ」が全国でもてはやされていますが、福島出身の私としては、赤べこがコロナウイルスからの守り神と強く推したいところ。
コロナ禍以前から、仕事机の上には実家から連れてきた赤べこが鎮座していますが、年代物のため、背中にのせていた米俵が行方不明になっていました。このままでもいいのですが、より強いご利益を得たいと考え、この度新しい赤べこをお迎えしました。それが、こちら。
野沢民芸のオンラインショップで購入した赤べこ
赤べこは作り手によって表情がまったく異なります。手元にあった赤べこは古すぎてどこからお迎えしたのかわかりませんでしたが、「顔」を頼りに調べたところ野沢民芸の赤べこが馴染み深い顔だったので、そちらからお迎えしました。
赤べこさん、みんなを病から守ってね!