VOL.24 界 出雲 谷 悠太郎さん

プライベートも充実させ、島根の魅力の種を拾う!

VOL.24 谷 悠太郎さん 1993年生まれ、31歳 界 出雲

風光明媚な岬に立つ「界 出雲」。記事はこちら。「灯台と水平線を望むお詣り支度の宿」がコンセプトです。スタッフの谷悠太郎さんは島根を第2の故郷と位置付ける、温泉と音楽を愛する2児のパパでした。

―――入社のきっかけを教えてください。

20164月に新卒で入社しました。サービス業にはあまり興味がなかったのですが、学生時代に映画サークルや音楽、お笑い活動をしていたので、自分で考えてコンテンツを作るのが好きでした。テレビ局などに入社希望だったのですが、星野リゾートが力を入れる魅力づくり、街づくりという部分に惹かれました。社風も、大企業にないベンチャー気質というのがあり、現場でひとりひとりが考えて仕事をするというところも気に入っています。「界 出雲」には2022年の開業に合わせて配属となりました。

今は通常の業務やシフト管理、さらに出雲エリアの戦略会議に参加しています。これは市役所や周辺の事業者が集まり地域のリレーションづくりをするものです。参加して思うのは、地域には大きなビジョンが必要だと。「界 長門」がある山口県の長門湯本温泉の再生の際に、代表の星野が「日本の温泉のトップ30に入る」と掲げたのですが、このような明確なビジョンがないと、ひとつにまとまって進むというのは難しいと痛感しています。短期的ではない長期的なビジョンを掲げることが大切で、現在出雲市の方々が中心となってまちづくりの計画を立ててくださっています。私も戦略会議を通して、星野リゾートで経験してきたマーケティングや広報のやり方を生かしながら、地域のために貢献したいと考えています。

―――2024年の災害は大変だったのではないでしょうか。

79日に大雨により道路が崩落し通行止めになってしまい、約2か月間宿を閉めました。2022年に開業し、施設としての魅力をさらに広げていこうという矢先の災害でしたので、大変でした。支配人と2人でひたすら掃除をし続け、再オープンに向けて準備をしていました。おかげで支配人との絆が深まりました(笑)。

914日に再オープンが決まり、その後は満室に近い状況が続き、ありがたかったです。またこの年の4月に入社した新入社員が辞めてしまうのではないかと危惧したのですが、誰も辞めずに、早く出雲に戻りたいと言ってくれた時はうれしかったですね。

―――島根県が大好きだとうかがいました。

島根県はリピーター率が高いエリアで、出雲大社や松江城などそれぞれのコンテンツが素晴らしいのですが、それをひとつのストーリーとして捉えて観光をしてほしいという行政側の意向があります。とくに出雲市に限ると、出雲大社にお詣りしても宿泊は松江や玉造温泉ということが多いことが課題です。「界 出雲」では、出雲大社へのお詣り支度がしっかりできるということを全面に打ち出していますので、多少なりとも貢献できているのでは、と思います。お客様の反応としては、強塩泉の温泉での禊風呂というコンセプトを喜んでくださる方が多いですね。また、石見神楽もお客様の満足度が高いです。私も一度、本場の石見神楽を鑑賞しましたが、火を使ったり煙が出たりと、派手なパフォーマンスに圧倒されました。決して退屈な伝統芸能ではないのです。

「界」は地域とのつながりを作り、地域の魅力を発信する宿ですから、今までになかったような魅力の種を持ってくるというのが、自分の役割だと思っています。そのためによく遊びに行くことを心掛けています。地域の皆さんと仲良くなり、いろいろな情報を仕入れる。休みの日には出雲大社の近くのお店を回り、仲良くなっています。島根県の一番の魅力は、伝統を守り抜く姿勢と、その中で新しいことに取り組んでいくことの融合ではないかと思います。東京出身なので、当初はすごい田舎に来たなという印象だったのですが、今では島根は自分の感性に合う第2の故郷と思っていますし、妻が島根出身なので文字通り故郷です。

―――休日の過ごし方を教えてください。

子どもが3歳と0歳で、家ではできる限りサポートするようにしています。周辺のお店巡りの時にはベビーカーに子どもを乗せて、家族一緒に出掛け家族ごと顔を覚えてもらおうと実践しています。また学生時代に音楽バンドをしていて、今はひとりで作曲とパフォーマンスをしています。家と職場だけではない、音楽とのつながりの人間関係もできてとても楽しいです。新しいコミュニティが生まれて、今が一番楽しいですね。

音楽活動も全力投球(本人提供)

温泉も大好きで大田市の温泉津(ゆのつ)温泉の元湯に通い詰めています。ほかでは体験できないような熱い湯で温泉の虜になり、温泉街の方々とも仲良くしています。かつてのレトロな雰囲気がありつつ、温泉津に移住して飲食店を開く方もいて、とても盛り上がっています。田舎のほどよい距離感、ほどよい規模感がとても自分に合っていると感じています。これからも島根の魅力の種を探し続けたいと思います。

 

関屋メモ

熱く語りつつ冷静に分析している、そう思いながら始まったインタビューは、音楽への情熱や温泉津温泉の熱弁へと、最終盤に谷さんの本領を引き出せたような気がしました。仕事に対しても楽しみを見つけ、さらに新しいコミュニティで自分をさらけ出す。第3、第4と、様々な居場所があるほうが、人は生き生きと毎日を過ごせるような気がします。

そして今回、印象的だったのが、"「界」をはじめ星野リゾートのスタッフが日本の様々な地域で実際に生活し、土地の魅力に触れることができることが、日本にとって価値あることだと、多々感じる″という言葉でした。暮らしているからこそわかる何か-それは驚くような魅力であったり、絶対に解決したい問題であったり。谷さんの言葉の端々に説得力を感じる所以だと思いました。内緒で教えていただいたアーティスト名を検索し、個性的な曲と詞、そして歌声を聞きながら帰路につきました。

 

取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)

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