音楽×ワイン×温泉のストーリーを松本から!
VOL.23 篠﨑隼介さん 1985年生まれ、38歳 界 松本 総支配人
良質で豊かな温泉と信州ワインが満喫できる「界 松本」。記事はこちら。総支配人を務める篠﨑隼介さんは若いスタッフを束ねる、2児のよきパパでした。
――キャリア採用にて入社と聞きました。
2018年2月に採用されました。大学卒業後、外食産業でマーケティングや人事などに携わり、その後ウェブマーケティングの会社に転職しました。BtoB(企業同士の取引)とBtoC(一般消費者向けのビジネス)の両方を経験したのですが、私にはBtoCが向いていると感じるようになりました。大学では地域経済の研究をしていてエコツーリズムにとても興味がありました。転職活動をしているなかで、星野リゾートとの縁をいただき、入社に至っています。地域との関係性を強く感じる会社という印象でとても魅力を感じました。
星野リゾートはフラットな組織を謳っていますので、そのあたりは一般の企業とは異なり入社当初はだいぶ戸惑いもありました。これまで指示を受けてから動くという働き方でしたので、自由度が高い分、今までとは真逆の働き方でした。
――最初から「界 松本」に配属だったのですか。
「界 アルプス」の開業に合わせて応募したのですが、時期がうまく合わず、「界 松本」の配属となりました。出身は群馬で東京と千葉で育ったので、長野には縁もゆかりもないのですが、松本は過ごしやすいですし、浅間温泉は街に近くてとても便利です。ただ、私は千葉が長かったので、海産物の美味しさに親しんだもので、そのあたりがちょっと…笑 でも美味しいお肉があります。
しっかりした企業の中で、マネージメントをしたいという意識があり、入社当時から支配人になりたいという思いがありました。2020年に支配人に立候補しようかと思ったのですが、ちょうど新型コロナの蔓延が始まり、それどころではなくなってしまいました。スタッフも少人数で運営を回しつつ、いかにこの危機を乗り越えるかを当時の支配人とともに切り盛りする日々でした。そして、2023年に支配人に着任になりました。現在、1年が経ち、まだまだ自分の至らなさを痛感する次第です。
支配人の仕事では、組織の開発というのが大切だと思っています。現在50名ほどのスタッフがいますが、快適で安全に働けるのはもちろんですが、先々のキャリアに活かせるような仕事の提案をしていくことを心掛けています。離職や仕事のモチベーションの低下にならないように。星野リゾートでは新卒採用に力を入れていて、若いスタッフが多く、中間層がちょっと手薄というのが実情です。若く情熱のあるスタッフのモチベーションをいかに維持するか、総支配人として常に考えているところです。
じつは昨年から現地で高卒の採用を始め、4名のスタッフが働いています。ただ未成年なのでワインが飲めないのです。ワインが飲めないのにサービスはしなくてはならないというのが、本人たちがちょっと苦戦しているところです。
――育児休暇も取られたと聞きました。
1人目の子どものときは取らなかったのですが、支配人になる前年、2人目の誕生の際に1か月の育児休暇を取りました。「界 松本」では、子どもがいる男性スタッフは全員、育児休暇を取っています。半年の休暇を取っているスタッフが2名います。取りやすい環境であることには間違いありません。上の子どもが3歳でしたので、2人目の時に1か月でも取れたことは大きかったです。1人目の時から育児には参加していたのですが、育児休暇期間は家で朝から晩まで育児に集中していました。また、育児休暇期間も情報のキャッチアップはしていたので、復帰後もスムーズでした。現場のスタッフも「お帰りなさい」と温かく迎えてくれました。
――施設の魅力づくりについて教えてください。
「界 松本」では音楽、ワインという地域の特徴を考えた上で様々な取り組みをしています。直近ではワイナリーとのつながりの強化です。地域の職人や作家、生産者の方と希少なご当地文化体験ができる「手業のひととき」では、サンサンワイナリー様のご協力で、プライベート見学や収穫体験などを実施しています。また、サンサンワイナリーが実施している収獲サポート体験があり、私やスタッフが手伝いにも行きました。大変印象的だったのが、前年に「手業のひととき」に参加されたお客様が、今年の収穫ボランティアに自ら申し込まれて参加されたということがわかり、ワイナリーの方も驚かれていました。お客様と地域が、私たちの宿やアクティビティを通して繋がったということは、とても嬉しい限りです。
ほかは、味噌・醤油などの発酵文化の紹介や、来夏の予定で音楽×クラフトの魅力を作っているところです。松本では、「クラフトフェアまつもと」を初夏に開催しています。これは日本で一番古いクラフトフェアです。また、松本はギター生産量日本一なんですよ。
「界 松本」はお客様の年齢層が比較的高いので、大人のお客様が満足してくださる魅力づくりを意識しています。繁忙期はファミリー層も多いのですが、それ以外はお子様連れが極端に少ないのが、この施設ならではだと思います。松本は街の魅力や資源がとても豊富です。ですから、40~50代の方が喜んでくださるように、何をどう伝え魅力を感じてもらえるか取捨選択して、魅力づくりを進めています。「音楽×ワイン×温泉」という滞在のストーリーをお客様にお伝えし、存分に楽しんでいただきたいですね。
関屋メモ
ご自分の性格をせっかちで短気という篠﨑さん。まったくそのように見えないのですが、しっかりした口調で説得力のある話に感心させられました。総支配人として、2児のパパとして奮闘中。息抜きはお酒タイムだそうで、学生時代にはスコットランドでウイスキー蒸溜所巡りをしたそうです。計画性がないので思い立ったらスコットランドへ行っていたというのも、じつはとても行動派なようです。このコーナー、若いスタッフのインタビューは原石のようなキラキラですが、篠﨑さんのお話はいぶし銀のようなキラキラ。言葉の端々にスタッフや家族を大切に思う気持ちがあふれていました。
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)