VOL.15 星野リゾート 青森屋 櫻庭舜輔さん

津軽弁を公用語に、溢れる青森愛でおもてなし!

VOL.15 櫻庭舜輔(さくらばしゅんすけ)さん 1990年生まれ、32歳 (星野リゾート 青森屋)

「星野リゾート 青森屋」といえば、どっぷり青森文化に浸れるところ。そんな特徴ある施設を支えるスタッフのひとりが、櫻庭舜輔さんです。ユニークな前職を持つ青森県人が計画していることとは……。

 

―――前職は警察官とのこと。どうして星野リゾートに?

じつはもともとは料理人を目指していたのですが、一人前になるには東京へ行った方がいいと言われたのですが、青森に留まっていたいと思っていたときに高校の友人から、警察官に向いているといわれて……。警察官の試験を受けたところ、受かってしまいました。11年間、警察官として県内各地を転勤して回りました。

旅行が好きで、警察官になってからも各地を訪ねていました。旅行先のスタッフの方の対応が気持ちがいいと、また来たいなという気持ちになり、私もそういう仕事ができればと思ったのです。青森が好きで、私の訛りで青森愛を伝えて、青森好きを増やしていくことができればと思いました。私の訛りについては、父が私が生まれたときに、津軽弁をマスターさせると宣言したそうで、とにかく、津軽弁をとことん仕込まれました。津軽弁ではおでこ=なづぎ、うなじ=ぼんのご、と言いますが、とにかく徹底的に仕込まれて、地元の友人のなかでも群を抜いて訛っていました。それを活かせるのが、この施設だと。

交番・駐在所勤務が多く、その時も津軽弁を思いっきり駆使して、地元の方々と親交を深めました。警察官はやりがいのある仕事でしたが、自分も楽しみ、誰かを楽しませたいという想いが強くなっていったのです。そして転職のラストチャンスだと思い、友人からもホテルマンが向いていると後押しされて、入社しました。県内には星野リゾートが3施設あるのですが、面接のときに、私の訛りを最大限に発揮できるのは青森屋しかないと力説して、押しに押して、願いが叶いました。

 

―――具体的なお仕事について教えてください。

20224月から、フロント業務をメインに、方言講座「これであなたもあおもりンガル」などのアクティビティを担当しています。施設の中心的存在であるじゃわめぐ広場にいるだけで、青森の雰囲気を感じることができると思いますし、客室・青森ねぶたの間は、ここまでやるか~という面白さがありますが、より地元感を、もっと青森感を出してみたいと思っています。

まだまだ標準語のスタッフが多いので、私の役割は、津軽弁をスタッフ全員に感染させることです。視覚だけではなく、言葉から、耳から入る情報も青森一色にしたいです。お客様には、何をしゃべっているかわからないけれど、青森に来たなという気分を味わっていただきたいです。ですので「これであなたもあおもりンガル」では、ネイティブの早さでお話していますが、ただ、あまり訛ってばかりではわかりにくいですので、きちんと標準語でもご説明します(笑)。言葉の意味は分からないけれど、なんか面白いと笑って楽しんでいただければ。

―――警察官時代の経験が活かされることはありますか?

フロント業務では、お客様との11のコミュニケーションです。前職ではほんとうに様々な人と接してきました。その人が発する雰囲気や言葉遣い、目線などのちょっとした動作で、自分なりに考えて動いてきました。話をするタイミング、距離を置いたほうがいいタイミングなど。ですので前職の経験を活かして、フロント業務でも、じっくりご説明をしたほうがいいのか、早く切り上げたほうがいいのかなどの判断ができていると思います。

前職の上司で、白バイの交通取り締まりをしていた方から、違反者を検挙した際に「最後は、笑顔で帰らせろ」という教えを受けました。その上司が、いろいろな角度から話をすると、かなりの確率で違反者が笑顔で帰っていきました。すごい技術です。コミュニケーションがいかに大切かを学びました。

―――今後の夢を教えてください。

青森は美味しいものが多く、景色もよく、そして何よりも地元の方が人情味があり、あたたかいのが大きな魅力だと思います。そのあたたかさやまごころをお客様にお伝えし、青森に住んでみたいと思わせるほどにしたいですね。

また、青森以外の場所から見る青森の良さを見つけたいとも思っています。星野リゾートは各地に施設がありますので、ほかの地域の施設で働いて、その魅力や文化も吸収し、青森屋に戻ってきて還元したいです。外から見える青森をもっと知ることができれば、アプローチの仕方も変わってくるのではないかと思います。そして、あわよくば各施設で津軽弁を広め、社内公用語を津軽弁にする!と画策しています。 

 

関屋メモ

櫻庭さんは早口でよくしゃべる、よく訛る、よく笑う。前職のテクニックを駆使し、ゲストを満足させることに邁進していることも、言葉の端々からよく伝わります。私は両親が東北人なので、櫻庭さんの津軽弁がほんのわずか、わかるようなときがありますが、初めて聞いた方は英語よりわからないことでしょう。お若いのにこんなに訛りが染みついている方も珍しいものです。休日は食べ歩きやドライブ、最近は登山も始めたということで、さらに青森の良さを拾い集めているようで、それも仕事に活かされることでしょう。「お客様にとって、この旅行が最後の旅行だったら、ということを念頭に置いて接客している」という話が印象的でした。最後の旅行、櫻庭さんに接客されたら嬉しい~

スタッフとともに八甲田山登山(左が櫻庭さん)本人提供

 

取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)

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