第38回 島との絆を深め、パワーアップした集落「星のや竹富島」前編

石垣港からフェリーで約10分、赤瓦の民家と白砂の道が続く美しい島・竹富島。旅恋どっとこむでは、2016年にこの島にある「星のや竹富島」のご紹介をしました。→こちら
2019年6月に開業7年目を迎えるこの宿を今回は新たな角度からご紹介したいと思います。

まず、竹富島ゆがふ館へ立ち寄ろう

竹富島は石垣島の南西海上約6kmにあり、サンゴ礁が発達してできた周囲約9kmの楕円形の島です。島のほぼ中央部にある東、西、仲筋の3集落は、かつての琉球の農村集落の景観をよく留め、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

集落を歩けば、白砂を敷きつめた道や琉球石灰岩の石垣、赤い瓦葺きの民家とフクギなどの屋敷林が立ち並び、驚くような非日常の世界が広がっています。このような美しい風景を留めるために、島では「竹富島憲章」を制定し、自治組織を作り伝統文化と自然・文化的景観保全を島人の手で行なうことを決めました。竹富島は「うつぐみの島」と呼ばれます。うつぐみとは、みんなで一致協力し、助け合う精神のことなのです。

竹富島集落(提供:星のや竹富島)

島の港に到着したら、まずビジターセンターの「竹富島ゆがふ館」を訪ねてみてください。島の自然や文化、歴史がわかるとともに私たち観光客がこの島で守らなければいけないことも教えてくれます。動植物を持ち出さない、ビーチ以外では水着姿や上半身はだかでは歩かない、神聖な御獄(うたき)には立ち入らない、ごみは持ち帰る(日帰り客)。
島の集落を歩くと、その道は美しくごみひとつ落ちていません。これは、島の方が早朝、箒で綺麗に清掃し、「ほうき目」をつけて掃き清めているからです。

受け継がれる島の伝統文化

島の東に位置する「星のや竹富島」は4番目の集落を目指し、造られました。

「竹富島景観形成マニュアル」に従い、48棟ある離れ形式の客室は島の伝統建築を踏襲しています。琉球赤瓦の屋根、魔よけのシーサー、客室の入口には石積みの壁・ヒンプンが立てられています。これは路地から家が見えないようにするための目隠しであり、魔物が家に侵入するのを防ぐ目的もあります。また竹富島の家屋は玄関がなく広い縁側が「ゆんたく(おしゃべり)」の場。その縁側もあり、南向きに設計され、海からの心地よい南風を迎え入れます。

第4の集落を目指す「星のや竹富島」


客室の前にはヒンプンが

客室を結ぶ道には手積みで組んだ石垣(グック)が続き、既存集落と同様に石敢當(いしがんとう)が埋め込まれています。これは魔よけで、沖縄では魔物は直進しかできないといわれ、道とグックの交差ポイントに設置されます。そして、客室前の前庭も道ももちろん、スタッフの手により美しく掃き清められているのです。

掃き清められる前庭


バスタブも解放感たっぷり

施設内にある「ゆんたくラウンジ」。ここでは居ながらにして琉球文化を楽しむことができます。まずは手作り体験。この日は魔よけの箒作りを楽しみました。島で育った苧麻(ちょま)を乾燥させて取った麻を使い、小さな魔よけの箒を作ります。島民がお守りとして持っているというこの箒、予期せぬ自分へのお土産になりました。

お守りの箒作り


完成品

さらに、落花生を使ったジーマミー豆腐を味わい、心地よい島唄を聞き、夜は泡盛カクテルをたしなみ、そのあとはプールサイドに移動して星空の下で、てぃんぬ(天の)深呼吸! このラウンジにいるだけですべて体験できるのです、もちろん無料で。居合わせたゲスト同士でおしゃべりもあり、まさにゆんたく。都会を離れ、ゆるやかな時間がはじまります。

ジーマミ豆腐は甘辛二種類


癒される島唄


飲みやすい泡盛カクテル

島の大豆で豆腐作りスタート

敷地内にある畑。これまでも島野菜やハーブを栽培してきましたが、島の生活に密着に繋がっていた畑の文化を継承するべく、スタッフのひとり、小山隼人さんが島のおじぃに弟子入りし、まずは島の粟を種子取祭(タナドゥイ)へ献上することを始めました。

大豆や大蒜などが育つ畑

種子取祭は約600年の歴史があるとされ、五穀豊穣と子孫繁栄を願い9月か10月の10日間(新暦の10月か11月)に渡って行われ、7日目と8日目には80余りの伝統芸能が神々に奉納されます。昔は島の農家で育てられていた粟の種を蒔きそれを奉納していたのですが、現在は畑を引き継ぐ人も少ないとのこと。そこで小山さんは敷地内で粟を育てます。試行錯誤の末、収穫した粟を公民館長のもとへ。心臓バクバクの小山さん、粟は合格点をいただき、祭に献上することができました。

笑顔が素敵な小山隼人さん

祭り期間中は粟と米、小豆を練った伝統食イイヤチもいただけるそうです。
ところでこの種子取祭には、「星のや竹富島」のスタッフも島民の一員として参加しています。舞踊や接待、給仕など、「うつぐみ」の心を分かち合っているのです。
小山さんが現在力を入れているのが、クモーマミ(小浜大豆)の復興プロジェクトです。かつて島で栽培されていた大豆。島からなくなってしまっていた在来種の種を石垣島にある八重山農林高校から分けていただき、畑で育てています。取材時はちょうど枝豆ほどの大きさに。

若いクモーマミ

 

おばぁに習い豆腐作り(提供:星のや竹富島)

島の子どもたちと一緒に5月中旬に収穫し、6月1日のイベントで豆腐作りを行なう予定です。島の次世代の子どもたちへ、伝統ある食文化を伝えバトンを渡す。小山さんのはじけるような笑顔に”竹富島愛“を感じました。

後編は豊かな食材を使った離島のフレンチと、施設のバックヤードのお話も少し。

星のや竹富島
沖縄県八重山郡竹富町竹富
℡0570-073-066(星のや総合予約)
料金:1室1泊7万5000円~(税・サービス料、食事別)※通常は2泊より

 

取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)

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