石垣港からフェリーで約10分、赤瓦の民家と白砂の道が続く美しい島・竹富島。旅恋どっとこむでは、2016年にこの島にある「星のや竹富島」のご紹介をしました。→こちら
前編に続き、後編でもこの宿の様々な取り組みをご紹介したいと思います。
五感が研ぎ澄まされる休日
「星のや竹富島」での滞在は、贅沢そのものです。ここでいう贅沢とはラグジュアリーとは少し異なります。沖縄でラグジュアリーを追求するならば全室オーシャンビュー、プライベートプール付き、バトラーサービスなどの贅沢なリゾートホテルもあることでしょう。しかし「星のや竹富島」では、普段、おざなりにしていた五感が研ぎ澄まされ、味わったことのない贅沢な気分になれるのです。
朝は聞いたこともない鳥の声で目覚め、昼は窓を開け放ち南風が通り過ぎる触覚を愉しみ、雨が降りそうな匂いや雲の動きを追いかけ、鮮やかな草花を目に焼き付け、夕方はプールで遊び、そして夜は暗闇に畏敬の念を覚える。夜、敷地内は最小限度の灯りのみ、あたりは暗く、見上げれば星や月。これを贅沢と言わずして、何が贅沢でしょう。喧騒の都会から遠く離れ、本当に豊かな時間を取り戻せるはずです。そして、もしかしたら台風の日も五感を働かせて面白がれるかもしれませんね。
琉球ヌーヴェルというご馳走
そして夕食のフレンチも五感を刺激するものです。
沖縄特有の食材にフランス料理の技法を用いて創り出された新たな琉球料理。総料理長は長野・軽井沢のホテル『ブレストンコート』の『ユカワタン』の料理長だった中洲達郎さん。フランス料理界で最も権威のある「ボキューズ・ドール」国際料理コンクールにも出場し、今は竹富島の食材を熟知しています。島の観光業に次ぐ産業である車海老の養殖。この車海老はもちろん、ハタ科のミーバイ、島菜、ウイキョウなどなど、鮮やかであり、やさしい独創的な料理が続きます。
牛フィレ肉の豆腐ようを使った旨みの強いチーズのようなソース、淡白な白身魚を締める柑橘のほのかなソース……食材の調和が見事です。
そして最後はぜひ、ハーブティーを。そう、敷地の畑でとれた生のハーブを目の前でブレンドする贅沢で香り豊かなお茶です。
そして、元気に目覚めた朝食も、沖縄の伝統的な重箱料理、御三味(ウサンミ)や、ゆし豆腐粥などをたらふくいただいてください。
積極的に島を回ろう
何もせずに日がな一日、客室でゴロゴロするのもいいですが、やはり島を回ってみましょう。「星のや竹富島」では集落の水牛車散歩や、民芸館での伝統工芸のミンサー織り体験などを用意しています。水牛車散歩は朝、まだ観光客の少ない静かな時間帯に専用の水牛車で島の集落内を巡ります。お利口な水牛と、ガイドのおじさんの三線と島唄。和むわ~。
集落入り口までは専用のバスで行くこともできます。集落内にはレンタサイクルもあるので自由に出かけるのもいいものです。白砂のビーチに出かけたり、集落のお店のおばぁと話をしたりしていると、島で暮らしているような気分になります。夜もバスが出ていますので、食堂でご飯を食べたり、島人のたまり場にお邪魔したりというのも素敵。
ということで、できれば3泊以上がおすすめです(笑)
ところで、竹富島は石垣島から海底送水管で水を送っています。水道が通ったのは昭和51年、それまでは雨水に頼る生活でした。「星のや竹富島」でも節水機能を備え、施設内で浄化処理も行っているとのことです。また、ごみについても微生物による分解を行なうなどの処理をしています。水が豊かな国に生まれた私たち日本人は、まさに湯水のように水を使っていますが、ちょっと立ち止まって考える必要があるのかもしれません。また島ではペットボトルごみがとても増えているとか。この小さな島にいると、とても身近な問題としてサスティナビリティを考えることができます。
さて私が「星のや竹富島」を最初に訪ねたのは開業1年後。そのときにはなんだかまだ、ピカピカのテーマパークのようでしたが、今は白かったグックがいい具合に錆び色になり、まだ低かった樹木が青々と大きく育ち、第4の集落に相応しい姿になって来たなと、実感。まだまだ進化し、島人とともに、素敵な場所になっていくのだろうと、嬉しい予感を信じた旅でした。
星のや竹富島
沖縄県八重山郡竹富町竹富
℡0570-073-066(星のや総合予約)
料金:1室1泊7万5000円~(税・サービス料、食事別)※通常は2泊より
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)