第2回 「星のや 京都」

京都嵐山。2009年に開業した「星のや 京都」は、「水辺の私邸」をテーマとする宿。

四季の移ろいを目の前に楽しむ嵐峡の奥に位置します。宿ではさまざまなアクティビティを開催。

今回は、「星のやガストロノミー究極の食中酒スクール」を体験しに、関屋が訪ねました。

 

京都・渡月橋から

船で向かう非日常の世界へ

宿への基点は嵐山・渡月橋のたもと。ここから小船で大堰川を遡ります。

四季を通じて観光客が集う渡月橋界隈の喧騒が徐々に小さくなり、嵐山の自然のみが視界に広がります。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、そして冬はうっすらとした雪景色。船で宿へ向かうという非日常感と、京都の豊かな自然が心地よく心に響き、これから始まる宿での滞在に期待が膨らみます。

桟橋IMG_0434.JPG渡月橋IMG_0328.JPG

 

約15分のクルーズを楽しみ船着場へ。

階段を上れば、ダイニング、和室パブリック、ライブラリーラウンジ、離れ様式の各客室などが配置されています。底冷えする冬の京都のイメージとは裏腹に、山を背にする宿の敷地はまるでエアポケットのようで、風もなく冬の陽だまりが暖かいほどでした。

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まずはライブラリーラウンジでひと落ち着き。コーヒー、紅茶、緑茶などをいつでも自由にいただけ、書籍やCD、DVDを借り出すこともできます。

また和室パブリックはお茶のもてなしのほか、投扇興や百人一首などの和の遊びを楽しむことができます。

いずれのスペースも24時間オープン。客室に籠るのもいいですが、パブリックスペースも大いに利用したいものです。

 

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 和パブリック

伝統の技で甦る美と

現代の生活にマッチしたモダンの融合

「星のや 京都」の前身は、老舗旅館「嵐峡館」。私はその当時に取材で訪ねたことがありました。100年を超える老舗旅館がどう生まれ変わったのか。実際に目にする宿は、まさに"温故知新"でした。欄干や木扉、柱、天板などの古材を「洗い」という伝統技法で汚れや傷みを修復し、美しく甦らせ、そこにモダンな家具を配置。寝室の壁紙は、京唐紙。12種類の京唐紙が25の部屋ごとに豊かな表情を作り出しています。

和室には「畳ソファ」が置かれています。これは竹のように細く曲げた杉や松を1本ずつ組み上げ、モダンな和室に相応しい洗練されたデザインで、正座での目線を重視したもの。正座することで理解できる日本間の味わいを感じることができます。このソファに座り、窓から眺める嵐山の自然のなんと心地よいこと。

畳ソファIMG_0349.JPG 客室2A0006322-1.jpg

 

さらに滝がある水の庭、枯山水を意識した奥の庭という2つの庭、随所に配されたやわらかな明かり。どれもが緻密に計算された日本の、京都の美が結実しています。

 

五味自在の料理と日本酒

知的好奇心を満たし、その味わいに心をゆだねる

この冬に行なわれた「究極の食中酒スクール」は「星のや ガストロノミ」の一環です。ガストロノミとは、文化と料理の関係を考察することで、星のやでは、毎回テーマを設定し、食と感性を探ります。今回は日本酒と料理。

第1部は、京都伏見の造り酒屋「月の桂」の14代当主、増田徳兵衛さんによる講座と利き酒。利き酒では、3種類の純米吟醸酒をテイスティングします。

3種類はそれぞれ冷や、常温、燗。どれが同じでどれが違うお酒か。参加者全員正解なしで、じつはすべて同じお酒。いただく温度によって味わいも風合いも異なるということを実感したしだいでした。さらに器による飲み口の違い、日本酒のテロワールと話が続きます。原料の米や、水、風土の違いが、あまたある日本酒の特徴を形作っていると、楽しく飲んでお勉強をして終了。そして第2部は料理との組み合わせを堪能します。

酒IMG_0367.JPG増田さんIMG_0370.JPG

お酒は左から冷や、常温、癇             月の桂 増田徳兵衛さん

 

「星のや 京都」の料理は五味自在の日本料理。五味とは、甘味、苦味、辛味、酸味、鹹(塩)味のことで、伝統的な日本料理に海外の食材や料理法を取り入れ、斬新で新鮮な驚きのある料理に仕立てています。

料理長は京都祇園の割烹「八寸」の長男、久保田一郎さん。会席料理の基本を学び、フランスの名店で修業、その後ロンドンの日本料理「Umu」でミシュランの1つ星を獲得。「星のや 京都」の料理長としてまもなく2年を迎え、昨年10月には「ミュシュランガイド京都・大阪・神戸・奈良2013」でも1つ星を獲得しました。

まずは先付。焼餅、雲丹、タピオカという組み合わせの羽二重蒸し。旨み、甘味、食感が絶妙で、これに酸と甘味がほどよい月の桂の「稼ぎ頭」を合わせます。フルーティすぎない低アルコール純米酒がまずは食欲を促します。

八寸と向付には、近江の酒造、七本槍の「玉栄 純米吟醸 生原酒中取り」を冷やで。春の彩りを先取りしたさまざまな味が揃う八寸に合うきりっと飲みやすいお酒です。八寸では「苺フォアグラ射込み」が絶品。海外での経験を積んだ料理長ならではの発想です。

向付は瞬間スモークをした醒ヶ井鱒とジャガイモで作ったブリーニ、目にも鮮やかです。

椀物は鯛の出汁がストレートに伝わる清汁に仕立てた鯛蕪。王道の味です。

焼物は網焼きの河豚、炊き合わせは海老芋と、湯葉の名店「静家」の1週間熟成したという巻湯葉。この2品には福島の会津娘「特別純米酒 無為信」をぬる燗で合わせます。

 

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左上・八寸 右上・向付 下・炊き合わせ

 

そして強肴の牛フィレステーキには、牛肉の強さに負けない広島・竹原の藤井酒造「宝寿 生一本特別純米酒」。

タンクで1年熟成させたしっかりと、ふくよかな味。チーズにも合うとのこと。

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もう、お腹がはちきれそうにもかかわらず、ご飯は半兵衛の特製生麩と白葱ののっけ丼。さらにデザート。どれもが印象に残る料理で、バリエーションが豊か。欧米からの客も多く、夕食スタートは最終が20時30分と聞き、さらに脱帽。

久保田料理長の、まだまだ進化途中という言葉が、さらなる味わいを広げてくれそうで、今後もほんとうに楽しみです。料理によってお酒を合わせる。この贅沢さは家庭ではなかなかできないこと。知的好奇心を満たし、心から満足できる時間を過ごすことができました。

今後のガストロノミは京野菜をテーマにしたものを予定しているということで、要チェックしたくなりました。

 

静けさに目覚め

伝統文化を気軽に楽しむ

朝、目覚めると静かに雪が舞っていました。外界から隔絶された、なんという静けさ。

窓を開け、ただその瞬間に身をゆだねてみました。こういう瞬間が旅を豊かにしてくれるのではないでしょうか。

朝食は、客室でいただきます。化粧をしていなくても髪がぼさぼさでもOKというのは、女性には嬉しいですね。和食と洋食を選べ、スタッフの方が手際よく準備をしてくれます。

和食は、フレッシュな京の野菜や豆腐、湯葉を使った「星のや朝鍋朝食」です。昆布と鰹の上品な出汁、さらに鶏コラーゲンスープを継ぎ足すことで、味の変化が楽しめ、雑炊もグッド。洋食は、コンチネンタルブレックファストか、卵料理とサラダをプラスしたアメリカンブレックファストになります。

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新緑の頃は、すがすがしさにあふれる朝食

食後に私が楽しんだのは、練り香体験です。

練り香とは間接的に温めて香りを楽しむもので、それをたいて優劣を争う平安時代の宮廷遊戯、薫物合わせとしても知られています。二十四節気にあわせた香りがあり、茶席では炉などで温めて楽しみます。練り香にはレシピ本があり、それに添って香料を合わせていきます。

この日用意されたのは、「梅花」という練り香をつくるための8種類の香料。それぞれの香りを楽しみながら、順番に混ぜ合わせ、蜜を入れてさらに混ぜよく練り上げて丸めます。作った練り香は持ち帰り、アロマポットなどで楽しむことができます。

朝から優雅な気分になり、心身が健やかになります。日本の伝統文化を知る機会を得る、京都ならではの体験といえるでしょう。

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「星のや 京都」では一年を通して、寺院での朝のお勤め体験、聞香体験、お茶屋遊びや骨董入門など、さまざまなアクティビティを用意。また春は花見船や川床にオープンするバー、新緑の庭での狂言なども開催予定です。文化を発信することも旅館の義務。そんな姿勢が伝わります。

京都のリゾートの完成形を目指す「星のや 京都」。心を遊ばせ、知的好奇心を刺激する宿です。

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 清流に臨む空中茶室

 

(DATA)

星のや 京都

京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2

050-3786-0066(星のや総合予約センター) 

http://www.hoshinoyakyoto.jp/

1泊ひとり30,000円〜(2名利用時1名料金、税サ込み、食事別)

チェックイン15時 チェックアウト12時

 

京都の立ち寄りスポット????????

錦市場にあるイタリアン「錦まつむら」

京都の台所といえば錦市場です。京都の目抜き通り四条通の一本北に位置する錦小路に、390m間に126店舗が連なります。この通りから細長い通路を入ったところに「La Cucina Italiana錦まつむら」があります。前菜・パン・パスタ・ドルチェ&コーヒーのパスタランチが1500円。1800円のランチもあります。この日の前菜は生ハムのサラダ。そしてパスタはモッツァレラチーズのトマトバジルをチョイス。ワインも追加しちゃいました! パスタはトマトの酸味、チーズの旨みがしっかりと絡むストレートな味。良質なイタリアンに大満足でした。夜はアラカルトも充実し、京野菜や市場から仕入れる鮮魚などを駆使するとのこと。意外な場所の隠れ名店です。

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京都市中京区錦小路堺町東入る中魚屋町484

℡075-212-6350

営業時間/11:30〜15:00(L.O)、17:30〜21:30(L.O)

休業日/月曜

http://r.gnavi.co.jp/c812700/

 

悪縁を切り、良縁を結ぶパワースポット「安井金比羅宮」

祇園四条から徒歩約15分、崇徳天皇、さらに讃岐金刀比羅宮より勧請した大物主神と、源頼政を祀ったことから安井の金比羅さんの名で親しまれる「安井金比羅宮」。ここには高さ1.5m、幅3mの絵馬の形をした巨石があり、中央の亀裂を通して神様の力が円形の穴に注がれるという「縁切り縁結び碑」があります。まずは本殿に参拝し、次に「形代(身代わりのお札)」に切りたい縁・結びたい縁などの願い事を書き、形代を持って願い事を念じながら碑の表から裏へ穴をくぐります。これでまず悪縁を切り、次に裏から表へくぐって良縁を結びます。そして最後に形代を碑に貼ります。碑は形代だらけで原形が分からないほど。切りたい縁は人間関係だけではなく、病気やギャンブル癖などの悪習慣など、なんでもよし。悪縁って、山のようにあるのですね、皆、真剣のお参りしています。

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京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70

http://www.yasui-konpiragu.or.jp/

 

京野菜の漬け物なら「赤尾屋」

「星のや 京都」の久保田料理長のおすすめの漬物屋さんが、「赤尾屋」です。元禄12年(1699)の創業以来、京都の季節の野菜の味覚を大切にした漬物づくりを続けています。もちろん保存料、着色料は一切使用していません。ちょうど季節柄、扇舞漬(千枚漬)と、伝統のしば漬などを購入。千枚漬けは甘すぎず聖護院かぶらの旨みがにじみ出る逸品、しば漬は酸味がほどよく食べ飽きない味。老舗の技を感じました。本店と御池店があります。

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本店(三十三間堂西)

京都市東山区本町七丁目21

℡075-561-3032

営業時間/9:00〜18:00

休業日/木曜

http://www.akaoya.jp/

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