第52回 森林で放牧される牛が育んだ生乳が、おいしいドリンクに~森林ノ牧場&星野リゾート リゾナーレ那須(栃木県・那須)

7月1日から、星野リゾート リゾナーレにて「牧場を救うミルクジャムフラッペ」が提供されているのをご存じでしょうか(※リゾナーレ那須:販売中、リゾナーレ熱海:9月末まで)

「フラッペはとってもおいしそうな響きがするけれど、“牧場を救う”とはどういうことだろう?」と、8月某日、星野リゾート リゾナーレ那須に宿泊取材にうかがいました。

→星野リゾート リゾナーレ那須の紹介記事はコチラ

牧場を救うミルクジャムフラッペ

こちらのフラッペをいただけるのは、アクティビティ施設「POKO POKO」。フラッペを口に含むと、まず最初に感じるのが濃厚なミルクジャムと甘みのあるプリン。そして甘みを引き立ててくれるのが上品な味わいのミルクティ。香りのよいミルクティが口いっぱいに広がり、心地よい甘さのあるドリンクが夏の暑さをやわらげてくれました。たっぷりのホイップクリームのトッピングには牛型のクッキーとローズマリー。これ一杯で牧歌的な風景が頭の中に思わず浮かんできます。

屋根の形が印象的なリゾナーレ那須のPOKO POKO

 

コロナの影響を受けた生乳

スーパーへ行けば当たり前のようにパック牛乳が並んでいるので、私自身今まで意識したことはほとんどなかったのですが、生乳の生産は4月から6月がピークなのだそう。新型コロナウイルス感染症の影響により、学校が休校になり給食で牛乳の提供がなくなったり、緊急事態宣言による外出自粛に伴って多くの人々が外食しなくなり牛乳の消費が低下する事態が起きました。

でも、牛乳の消費が大幅に落ちたからといって、乳牛がその分、お乳を出さなくなるわけではありません。生産者さんは、出荷できなくなった生乳を泣く泣く廃棄したり生産量調整のために牛を手放さざるを得ない事態が起きる可能性があったのです。

そこで星野リゾートではこの事態を回避するため、リゾナーレ那須から車で40分ほどの場所にある「森林ノ牧場」と協力し、搾乳した牛乳を保存のきく乳製品に加工して生乳のフードロスを防ぐ取り組みを行いました。それが、行き場を失う生乳のフードロス問題解決に取り組んだ「牧場を救うミルクジャム」なのです。

リゾナーレ那須の朝食でいただける森林ノ牛乳

 

森で育つ可愛いジャージー牛

リゾナーレ那須ご協力のもと、森林ノ牧場へも取材にうかがいました。牧場というと、頭の中に浮かぶのは一面に広がる真っ平な緑の平原。ですが、驚いたのは、森林ノ牧場はその名の通り、森や林を活かした高低差のあるロケーションで、今までイメージしていたのとは違う牧場でした。

高低差のある森林の小道を進んだ先に広がる草地

そして、森林ノ牧場にいるのはジャージー牛。実はジャージー牛は日本の乳牛のわずか0.8%しか飼育されていない貴重な牛なのです。それは、ジャージー牛は体が小さく、搾乳量がホルスタインの半分ほどと乳量が少ないため非効率となってしまうからなのだそう。

この中に美味しい牛乳が!

ですが、森林ノ牧場の代表・山川将弘さんによると、ジャージー牛は小柄なため放牧がしやすく管理もしやすいそう。そして何よりも「ともかく人懐っこくて可愛いんです(笑)」と山川さん。牛一頭一頭に名前がついており、山川さんが呼ぶと嬉しそうに寄ってきてくれる子もいるそうです。


人懐っこい牛は近づいてきてくれる

山川さんによると「日本の国土の約7割を森林が占めているにも関わらず、多くの森林は放置されたまま。そこで、牛に下草を食べてもらうなどして森林をもう一度資源として活かしたいと思いました。そして牛たちを牛舎で飼育するのではなく、自然の中に牛を放牧すれば、森林と牛の両方の魅力を活かせると思いました」

営業時間内であれば放牧の様子を自由に見られるのもうれしいポイント。備え付けの長靴に履き替えて消毒液に長靴を浸してから高低差のある森の小道を進んでいくと、のんびりと草を食んだりごろっと寝ていたりと、牛たちが気ままに過ごしている牧歌的な風景を見ることができます。人懐っこい子はこちらの方まで近づいてきてくれるので、驚かせたりしなければ気軽にさわることもできます。彼・彼女たちの気持ちいい場所は、角があった箇所や耳元とのこと。足で踏まれるとかなり痛いそうなのでそちらに注意してなでてみてくださいね。

森の小道には鳥の巣も設置してある

廃棄されるかもしれなかった生乳

「元々リゾナーレ那須さんには、朝食用に森林ノ牛乳を卸していました。ですが、生乳の在庫が一年で一番多い時期にちょうどあたってしまった新型コロナウイルスの影響で、廃棄を検討しつつも、自身でも何かできないかと打開策を考えていたところ、星野リゾートさんとの話し合いがありました。その中でミルクジャム製作の話が提案され、ミルクジャム用に新たに牛乳を出荷することとなりました。ありがたかったですね」と山川さん。

この取り組みのリーダーをつとめたのは、星のや東京(東京都・大手町)の料理長・浜田統之氏。フランス料理界で最も権威あるコンクール「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で日本人初の総合3位、魚料理部門では最高得点を獲得した方です。浜田シェフが試行錯誤しつつ作ったミルクジャムは、ジャージー牛から搾乳された生乳を焦がす直前まで煮詰めることでジャージー牛の自然の甘さを引き出したものとなりました。

子牛の両耳の黄色いタグがイヤリングのようで可愛らしい。左耳に名前が書いてある

 

プリンやソフトクリームも!

ちなみに、森林ノ牧場では、ソフトクリームやヨーグルトシェイクのほか、プリンやヨーグルトなどジャージー牛を使ったスイーツをイートイン/テイクアウトで楽しむことができます。

ちょっと気になって、私が購入してみたのが「いのちのミートソース」。愛情いっぱい育てた牛たちですが、いつかはお乳が出なくなってしまいます。そこで役割を終えた牛たちの“いのちの価値”を生かし最後まで役割を全うしてもらうために研究を重ね、赤身のお肉のおいしさを最大限に引き出したミートソースへと生まれ変わらせた一品とのこと。レトルトパックなのでお手軽。早速食べましたが、とってもおいしかったです!

看板犬ならぬ看板ヤギが迎えてくれる

現在ミルクジャムは、「牧場を救うミルクジャムフラッペ」のみでの提供になりますが、いずれはミルクジャム単体での販売も行われるかもしれません。それまでは、リゾナーレに宿泊して※、とってもおいしいミルクジャムフラッペを味わってくださいね。

https://risonare.com/nasu/

※リゾナーレ那須:販売中、リゾナーレ熱海:9月末まで、リゾナーレ八ヶ岳:販売終了

追加:2020年10月30日よりミルクジャム単体を販売開始。リゾナーレ那須・リゾナーレ熱海・リゾナーレ八ヶ岳・界 日光・界 鬼怒川・界 川治より順次販売開始。宿泊者のみ購入可。

取材・文/塩見有紀子

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