長野県軽井沢。澄んだ空気に包まれ、「山あいの理想郷」をコンセプトにした「星のや 軽井沢」を訪ねました。この地には前身となった「星野温泉」があり、星野リゾートの原点ともいえる場所。水辺を囲むように離れの客室が立ち並ぶ「谷の集落」に滞在していると、四季折々の自然に触れ、日常の喧騒から解き放たれます。
この旅では、リニューアルした夕食「山の懐石」と、人気の滞在プログラム「発酵美人滞在」を中心に、塩見と山本が「星のや 軽井沢」の魅力を前編・後編と2回に分けてお伝えします。
早目に着いたら
ハルニレテラスを散策
訪ねたのは、都心でも多大なる影響があった大雪の後の2月末。長野新幹線軽井沢駅南口から無料シャトルバスに乗って約15分で到着です。15時のチェックインまで、まだ時間があったので、荷物を預けて「ハルニレテラス」へランチ&ショッピングに出かけました。このコラボ企画の第5回で紹介した「軽井沢ホテルブレストンコート」と同じ星野エリア内に立つので、気軽に出かけられます。
湯川沿いに広がる「ハルニレテラス」には、レストランやカフェ、雑貨など個性的な14のショップが立ち並びますが、今回は「セルクル」でランチをいただくことに。ここは、オードブルからメインディッシュ、デザートまであるフレンチデリと、オーナーソムリエセレクトの約300種類のワインが揃う店ですが、レストランも併設しています。私たちはパスタランチ(サラダ・ドリンク付き)をいただきました。
モッツァレラのボロネーゼのパスタランチのセットは1600円
その後も雑貨店を見て回ったり、パンやコーヒー豆を買ったりと散策&ショッピングを楽しみました。
15時になったら、近くのお店のスタッフに宿に戻りたい旨を伝えます。お店から宿に連絡してお迎えを呼んでくれます。私たちはそのまま待っていればOK。お迎えが来るって、ちょっと贅沢な気分にさせてくれますよね。
軽井沢の自然に囲まれた
「谷の集落」での滞在を満喫する
お迎えの車にのって、そのまま本日滞在の客室に案内されました。水辺にテラスがせり出した「水波の部屋」、眺めのよい山側にある「山路地の部屋」、庭のある戸建ての「庭路地の部屋」と、客室は大きく3タイプ。いずれも開放的な高い天井、独立したリビングと寝室、居心地のよいテラスなどを備えています。
開放感あふれる寝室。天井にある天然のエアコン「風楼」や
地熱を利用した床暖房など、環境にも配慮されている
私たちが滞在したのは「水波の部屋」の床座リビングのお部屋。テラス越しに川を眺められるリビングがあり、掘りごたつタイプのソファが配されています。たくさんのクッションにふかふかのソファ、のどかな水辺の風景と、何時間でもいたくなるような空間になっていました。
いつまでもゴロゴロしていたくなる快適な床座リビング
ここに「発酵美人滞在」のウェルカムスイーツとリンゴのフルーツティーが用意されていました。スイーツはイチゴやオレンジ、メロンが彩りよく盛り付けられたフルーツトライフル。見ているだけでちょっとテンションが上がります。見た目の美しさだけでなく、中には甘酒のクリームや塩麹漬けにしたリンゴの角切りなども入っていて、おいしいうえに、胃や腸にも優しそうです。
彩りも美しい「発酵美人滞在」のウェルカムスイーツ
客室でひと息ついたら「谷の集落」の散策へ出かけましょう。客室の離れが立ち並ぶ敷地内は、小さな村の中を歩いているように路地が続きます。途中には、小さな滝や棚田、大小の橋に出合うことも。川の流れる風景を楽しみながら、集落の中心にあたる「集いの館」にやって来ました。
「集いの館」には、フロントやショップ、日本料理「嘉助」、ライブラリーラウンジなどがあります。2階にあるライブラリーラウンジには、コーヒーやブレンドティーなどのフリードリンクが備わり、ここで長時間過ごすゲストもいるそう。
緩やかに時が流れるようなライブラリーラウンジ
また、「嘉助」でも、季節のお茶とお菓子を楽しめる「谷のひととき」(15時〜16時30分、無料)を体験できます。目の前には棚田を川が流れる様子が見てとれ、穏やかな時間を実感できます。
メインダイニングの日本料理「嘉助」で楽しめる「谷のひととき」。
この日はフキノトウのお茶と上高地みそを使った"みそパイ"
リゾートスタイルで味わう
「嘉助」の「山の懐石」
滞在中の食事は、ホテルブレストンコートやハルニレテラスのレストランと多彩な選択肢の中からセレクトすることができますが、今回の夕食では、「星のや 軽井沢」のメインダイニング日本料理「嘉助」で「山の懐石」をいただきました。
敷地の高低差を活かして建てられた「集いの館」内にある「嘉助」は、階段状に広がっています。御影石を配した壁を「山」に、通路と客席を「川と川床」に見立てているそう。昼間は、一面は大きなガラス窓からたっぷりと陽射しが注ぎこみ、そして夜は華やかな灯りに包まれ、舞台のように見えます。
かねてから「地味真髄」をキーワードに、野趣溢れる山の食材や清流に育まれた川の食材など、厳選された信州の食材を使った料理を用意してきた「山の懐石」。このたび地産地消に加え、五感で楽しみ、リゾート地ならではのリラックスした食の時間を提供しようと「笑味寛閑(えみかんかん)」とキーワードをリニューアルしたとのこと。食卓を囲み、笑顔がこぼれるような懐石料理とはどのようなものでしょうか。
私たちがいただいたのは「早春」の献立。もちろん、季節ごとに献立は代わります。
先付に始まり、お造りや焼八寸、御飯、甘味まで全10品。なかでも、「笑味寛閑」が強く表れていたのは、強肴と焼八寸でしょう。
強肴はふた付きの大きな器と共に登場します。献立には「蕪の炭火焼き」とあります。ふたを取ると、白い湯気とともに丸焼きにされた蕪が表れます。「ほぉー」っと、思わず小さな歓声がもれます。調理人の方がテーブルまで来て、その場で切り分けて、皿に盛り付けてくれます。蕪という素朴な素材なのに、プレゼンテーションが抜群です。
蕪も普段食べる蕪と違い、紅い円錐形の蕪。みずみずしくて甘みがあります。田楽味噌や七味、塩も添えられ、蕪の旨みを引き立ててくれました。
また、焼八寸では「のどぐろ塩焼き」をいただきました。これは、「星のや冬の肴三品」と一緒に大皿に盛り付けられて供されます。一緒に食べる人と取り分けるから、会話も弾みます。
肴三品では信州の保存食を楽しめます。この時は、塩烏賊とセロリの香味和え、のびるとちぢみ蒟蒻のヌタ和え、野沢菜と一本しめじの田舎炊きでした。どれも何だか懐かしい日本の味がしました。私、山本が特に気に入ったのは、塩烏賊とセロリ。口の中をさっぱり爽やかにしてくれるので、脂がのったのどぐろを食べた後にぴったり。再度、おいしくのどぐろがいただけました。肴三品はお代りもできます。
他にも佐久鯉とブリを使ったお造り「山と海のお造り二種」や、自然薯につけて味わう炊合せの「猪味噌すき焼き」、デザートの「林檎とこけもものシャーベット」など、信州らしい滋味溢れる料理を味わい、たいへん満足しました。
引き続き後編では、「発酵美人滞在」や「温泉美養」などの体験をご紹介します。お楽しみに!
→後編アップしました!
(取材・文 山本厚子)