「塔の日本旅館」をコンセプトに、進化した日本旅館の新しいカタチを表現する「星のや東京」。東京の魅力を再発見する「お江戸・文化の祭典」が8月8日まで、さらに8月31日まで「東京・夏夜の宴」が開催中です。
「お江戸・文化の祭典」では、江戸の文化にルーツを持つ老舗店が集結し、その店の文化や伝統を伝えています。老舗店は、鰹節の「にんべん」や、手ぬぐいの「戸田屋商店」、和紙の「小津和紙」などさまざま。日替わりでその技や味を知ることができます。
私が体験したのは「山本山」のお茶の利き当てゲーム「茶歌舞伎」。名を伏せて淹れた5種類のお茶を飲み比べして、当てる遊びです。
手元には、宇治煎茶・八女茶・狭山茶・新茶・抹茶入り玄米茶の説明書きがあり、それを頼りにひとつひとつ出されるお茶が、どれに当たるのかを吟味します。お茶の甘さ、苦み、渋み、香り、濁りや水色を見ながら思案……。「ああ、3番目のお茶が黄色味が強かった、最初のお茶のほうが爽やかだった~」と、途中で何となく間違いに気づくのですが後の祭り。答え合わせをすると、残念ながら当たりは2つだけでした。なんと全問正解の違いのわかるお客様もいたようです。産地や品種によるお茶の違いを知り、豊かなお茶文化の端くれをかじった気になれました。
答え合わせをした5種類の日本茶
館内はお祭り気分を盛り上げる設えやお囃子のBGMが流れ、「東京・夏夜の宴」が開催。コロナ禍で夏祭りが中止になるなかですが、滞在中は、ウキウキと盛り上がりましょう。星のや東京酒場では、東京の酒蔵4店の地酒とおつまみを用意。日本酒は厳選されたものばかりで、神田の豊島屋本店の十右衛門、港区の東京港醸造の江戸開城、福生市の石川酒造の多満自慢、青梅市の小澤酒造の澤乃井。すっきり系から旨口系まで個性的な味わいです。
4酒造の日本酒
好みの2種を選んで試飲
そして祭りといえば縁日! 折り畳んだ折り紙に紋切りの型紙を合わせて切っていく紋切り遊びや、屋台の定番・型抜き(子供の頃に熱中したことがある方もいるのでは?)、またお面づくり、ヨーヨーやお花を釣るお花釣りが用意され、時間を忘れ夢中になっちゃいます!
型抜きやお面づくりなど熱中しちゃいます
和紙を張り付けた狐の面と、紋切り
また、創業80年の老舗ラムネ屋を応援する「葛切りラムネ」も、ぜひ。コロナ禍で在庫を抱えてしまったラムネ店・東京飲料のラムネを使った涼やかな葛切り。温泉から上がったら、これにラムネを注いでどうぞ。
涼しげな江戸風鈴の音とともに、懐かしいラムネを
さらに通年の催しである「季節のお花箱づくり」(4500円)。こちらも金魚の装飾を組み合わせた涼やかな夏仕様の桐箱に、季節の生花を詰めていきます。素敵なお土産に仕上がりました。
生花をオアシスにさして、お花箱の完成
免疫力を高める「発酵×フレンチ」で夏を元気に
「星のや東京」でしか味わえない浜田統之シェフのNipponキュイジーヌ。2020年8月からは免疫力を高めるといわれる発酵食品を料理に組み入れ、多彩な味わいを作り出しています。暑い夏を、コロナを攻略したいものです。
この夏もさらに進化した素晴らしいコース! 五味(酸・塩・苦・辛・甘)を表現する<石>五つの意思は代表料理のひとつですが、ここにも味噌や塩麹、サザエの麹漬け、黒みりんなどをふんだんに使い、それぞれの味わいを際立たせています。
左から鯵のルーロー、ほおずきのガスパチョ、サザエのムース、たこのメルゲーズ、穴子の甘露煮
とても気に入ったのが鰻の料理。鰻とサマートリュフという組み合わせが驚くほどの風味の相乗効果をもたらしていました。鰻の魚醤などを使ったタレ、サワークリーム、ライ麦パンの組み合わせも秀逸です。
大きな蓮の葉の上に。その下にはもうひとつ異なる味わいの鰻料理も
鰹は藁焼きと血合いを使ったブータンノワール、鮎はコンフィにしてさらに揚げ焼き、牛タンは鮑や海苔の佃煮という掛け合わせ。もちろんそれぞれに創意工夫の発酵食品がキラリと光ります。また、デザートの一品は小夏のソルベと大葉のアイスクリーム、これにマーガオの香りをふわりと。酸味と甘味のバランスがとっても美味でした。
そして嬉しかったのが、ワインペアリングが楽しめたこと。宿泊客のみのレストランですので、OKなのです。食事中ずっと、美味しい!面白い!すごい!と独り言ちて堪能させていただきました。
昨夏も今夏も巣ごもり。夏らしい賑わいから遠ざかっていましたが、「星のや東京」で心を遊ばせ、お祭り気分でリフレッシュ! 今すぐ「現代を休む日」を体験し、楽しい宴を予約しちゃいましょう。
東京都千代田区大手町1-9-1
電話0570-073-066(星のや総合予約)
1泊10万2000円~(1室、税・サービス料込み、食事別)
取材・文/関屋淳子