星野リゾートの施設をご紹介するこのシリーズも6回目を迎えました。今回、旅恋メンバーの多田と山本が訪れたのは、北アルプスの麓に位置する大町温泉郷の「星野リゾート 界 アルプス」です。
どこか懐かしさを感じる信州の田舎体験を楽しんできました。
北アルプスの麓で
信州の田舎体験を贅沢に満喫する
長野県北西部に位置し、北アルプスの山々に囲まれた大町温泉郷は、立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口。日本一の高さを誇る、大迫力の黒部ダムなどの観光で利用される方も多い温泉地です。
JR信濃大町駅で宿の方に出迎えていただき、車に乗って約15分で宿に到着。かがり火が焚かれた、どっしりと重厚な黒門をくぐると、囲炉裏やかまどが設えられた土間が広がっています。これを目にした途端、田舎へ遊びに来たことを実感! 実際には体験したことがなくても、日本人なら誰しも郷愁を感じる光景です。そばには、湧き水で冷やされた新鮮な野菜が置かれ、辛み味噌や塩で自由に味わうことができます。キンキンに冷えたトマトやキュウリは、普段味わうよりも格別においしく感じるから不思議です。このおもてなし、秋から冬の間は、かまどで蒸した「温野菜」になるそうです。
ご当地の夏を楽しむ「和の清涼旅」で
和ハーブの香りに癒される
今回、私たちが体験するのは、全国にある全9施設の「界」で実施される「和の清涼旅」プラン。9施設それぞれのご当地の夏が楽しめるプランです。
清涼旅プランで利用する特別室
特別室には茶室が備わるほか、マッサージチェアなども置かれ、リラクゼーションを楽しめる
「界 アルプス」には、全28室の和室がありますが、今回の清涼旅プランで利用するのは、1室だけある特別室。15畳、12.5畳、茶室の3室を組み合わせた贅沢な空間で、2人で泊まるにはもったいないほどの広さです。目の前の庭では、ネギやショウガ、青ジソ、赤ジソなどの和ハーブをはじめ、ミントやカモミール、レモンバームなど数々のハーブが育てられています。清涼旅プランでは、これらのハーブを自由に摘んで、ハーブティーを淹れたり、お部屋のお風呂に入れたりと、香り豊かなハーブの時間を楽しむことができます。また、お部屋には、大町のナチュラルヒーリング化粧品「ラ・カスタ」のエッセンシャルオイルとアロマポットも用意されています。
(上)庭のハーブたち。(左下)お部屋でミントティを淹れられる
(右下)ラ・カスタのエッセンシャルオイルでお部屋でリラックス
清涼旅プランでは他にも、就寝の際に蚊帳を吊ってもらえたり、麻の浴衣が用意されたり、部屋にメダカの鉢が置かれたりと、涼しげな和のおもてなしがいっぱい。清涼な夏の滞在を、五感をフルに活用して楽しめるようになっています。
蚊帳の中で眠るのも田舎らしい体験
果実風呂と月見酒で
極上のリラクゼーションタイムを
ハーブティーでひと息入れたら、早速大浴場へ向かいました。
無色透明の単純温泉が湯船を満たす
ここでのお目当ては、露天風呂で楽しむ「季節の果実風呂」。今の季節はレモンがたくさん湯に浮かんでおり、爽快な香りを漂わせています(冬はリンゴ風呂だそうです)。夜には、果実に代わって檜の板が入れられ、檜の清々しい香りで癒しの時間を過ごせます。同じ湯船ながら2通りのリラクゼーションを体験できるのはうれしいですね。さらに酒好きにうれしいのは、湯船の横に置かれた地酒。露天風呂で月見酒とは洒落た計らいです。冬の雪見酒も風情がありそう。ただし、くれぐれも飲み過ぎには注意しましょう(15:00〜20:00、無料)。湯は無色透明の単純泉で、肌にやさしく、旅の疲れを癒します。
手前に置かれたシグボトルには、信州の地酒「大雪渓」と「白馬錦」、
そして、お酒の飲めない方に、かりん水も用意
湯上がり処には、アルプス白沢の水「男清水(おとこみず)」が用意され、乾いた喉を潤します。大町では東西で水系が異なり、西側はこの「男清水(おとこみず)」、東側は居谷里山の水「女清水(おんなみず)」とあるそう。流石、北アルプスのお膝元。おいしい湧水も豊富です。
アルプスの雪解けをイメージした
「雪鍋」と信州の恵みに舌鼓を打つ
夕食の会席料理は、食事処でいただきます。私たちが案内されたのは、2階にある「遥(はるか)」。テーブルが個室風に区切られているから、周りを気にせず、ゆったりと食事の時間を楽しめます。まずは、「やまもも酢」でスタートし、季節の八寸、お椀、お造り、揚げもの、蓋物、凌ぎ、台の物、食事、甘味と一品一品運ばれてきます。
(左)やまもも酢で食事が始まる
(右)とうもろこしの葛豆腐や合鴨ロースなど彩りが美しい八寸
お造りには、「信州サーモン」や「岩魚」と信州らしい素材が並びます。揚げものは、この宿特製の「トマトの揚げだし」です。揚げだしにトマトって珍しいですよね。湯むきしたトマトを丸のまま揚げ、大葉とみぞれ大根が添えられます。衣に透けて見えるトマトの赤い色が食欲をそそり、やさしい味わいのだし汁がトマトの酸味とほどよく混じって、たいへんおいしく味わえました。台の物は、アルプスの雪解けをイメージしたという名物の「雪鍋」です。名前を聞いただけでは、大根おろしを使う雪見鍋を想像されるかと思うのですが、ここで登場した鍋の上には、真っ白な球状の物体が! これ、何だと思いますか? 実は綿菓子なのです。火を付けてすぐに割り下を投入すると、あっという間に溶けてなくなります。自分で割り下を入れるので、その瞬間、思わず「わぁー」と声が出てしまいました。遊び心溢れる一品を満喫してみてくださいね。この後、牛肉と季節の野菜を入れ、すき焼きが完成します。
(左上から)お造り、トマトの揚げだし、穴子けんちん蒸し
(右)名物雪鍋。割りしたをかけるとあっという間に消えてしまう
まだまだ続く田舎体験をご紹介!
食事が終わった後も、宿での田舎体験は続きます。玄関にある土間では、20時30分から「餅つき」(無料)が始まります。杵と臼が用意され、集まったゲストと宿のスタッフで、「ヨイショッ、ヨイショッ」と掛け声をかけて餅米をついていきます。出来上がった餅は、ひと口大に丸められ、あんこ、きなこ、大根おろしの3つの味わいで楽しめます。夕食後なのに、食べられるんですよね。
「ヨイショッ!」の掛け声に合わせて、杵を振り下ろす多田
(上から時計回りで)あんこ、大根おろし、きなこと3種類の味で、つきたてのお餅を堪能
あいにく私たちが滞在した夜は、雨が降り出したので中止になってしまったのですが、21時からは「星空さんぽ」(先着順、18時までに申込み、無料)が行われています。車で5分ほど出かけ、満点の星空を観賞します。6月下旬〜8月下旬には、ホタル観賞も開催されるそうです。(青木湖ホタルクルーズ・有料)
そして、翌朝は、土間のかまどに火が入れられ、朝食用のご飯が炊かれます。私たちは6時半ごろに伺ってみたところ、若いスタッフが、薪をくべ、団扇であおいで火加減を調整し、鍋に近寄っては音を聞き、湯気が出てきたら匂いを確認しと、一時たりとも目を離さず、私たちの朝ごはんを炊いていました。かまど炊きの様子は、子どもだけでなく、大人でさえも初経験という方が多いのではないでしょうか。これぞ、田舎体験の真骨頂だと思いました。
宿のスタッフが、6時頃から土間のかまどで朝ごはんを炊く
かまど炊きのご飯が炊きあがりました! お米は長野県産コシヒカリ
この後の朝ごはんで、かまど炊きのご飯を味わいました。お米のひと粒ひと粒が立っていて、おいしくないはずがありません。
かまど炊きしたつやつやのご飯
朝ご飯には、温泉卵、珍味三種、炊き合わせ、サラダ、アジの干物などが並ぶ
北アルプスの雄大な景色と信州の田舎体験を満喫できる「界 アルプス」。小さな子どものいるファミリーにぴったりの宿だと思いました。また、忙しい日常を送っている大人にも必要な宿ではないでしょうか。都会の喧騒を少し離れ、ゆったりと流れる田舎時間に身を置いてみれば、身も心もほぐれるに違いありません。大人の癒し旅に出かけてみませんか。
(DATA)
星野リゾート 界 アルプス
長野県大町市平2884-26
050-3786-0099(界予約センター)
http://kai-alps.jp/
1泊2食付き1名様14,500円〜
清涼旅プランは1泊2食付き1名様24,000円〜
チェックイン15時
チェックアウト12時
★立ち寄りスポット★
大町唯一の和紙工房で手漉き体験を楽しむ
「界 アルプス」を後にして、私たちが立ち寄ったのは、大町で唯一手漉き和紙づくりを続けている「松崎和紙」です。創業以来100年近い歴史をもつ松崎和紙では、単なる手漉き和紙ではなく、天然の木の葉や花などを加えた「木の葉入り手漉き和紙」を作っています。
もともと大町での和紙作りは、平安時代に仁科神明宮の祭祀用に紙を奉納したのが始まりと伝えられています。その後、農家の冬期間の副業として発達し、信濃特産品として愛用されてきました。しかし、時代の変遷とともに洋紙が普及し、和紙に携わる人が少なくなり、今では松崎和紙だけが伝統の技法を守り続けているとのことです。
松崎和紙では、予約すると紙漉き体験が楽しめます。
まずは、和紙づくりの工程の説明を受けながら、工房見学からスタートです。素材となる楮(こうぞ)を見せていただきます。皮をはぐと、すでに紙のような質感が見て取れます。これを大釜で煮て、繊維質だけを取り出し、さらに細かく砕きます。「女清水」とこの地で呼ばれている湧水と、楮の繊維質を砕いた原料に、粘性の強い植物トロロアオイ(根をすり潰したもの)を加え、溶液が完成します。溶液の入った水槽で、竹のすだれを一度沈めてから器用に何度も上下させ、溶液がすだれの上を均一に行き渡るように作業を行います。これぞ匠の技! 紙漉きしたものはすだれから外し、独自に処理された木の葉を上にのせます。さらに薄い紙を漉き、木の葉が透けるように重ねます。これを乾燥させれば和紙の出来上がりです。手づくりならではの温かみが伝わってくるようです。
次はお待ちかねの紙漉き体験です。
工房脇にある水槽で、ハガキを漉きます。木枠もハガキサイズなので、初心者でも大丈夫。緑や黄色などの木の葉や色付けされた植物の繊維などが用意されているので、自分でデザインした世界で一枚だけのハガキが作れます。プレスをしてもらい、水気を切ったら、袋に入れて持ち帰ります。最終的な乾燥は自宅で行います。所要時間は1時間から1時間半とのこと。ここでの紙漉き体験は、好きなだけ何枚作ってもOK! これはうれしいサービスです。納得の一枚を作り上げましょう。
隣接の建物にはショップがあり、木の葉入りの和紙を使った便せんやコースター、電球スタンドなどのオリジナル商品が並びます。大町のお土産にぴったりです。
松崎和紙
長野県大町市社松崎6561
℡:0261-22-0579
営業時間 8:00〜17:00
休業日 不定休
紙漉き体験 1人1000円(2名様以上、要予約)
オリジナルの香りも作れる、癒しの花園へ
続いて、JR大糸線の安曇沓掛駅の近くにある、「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」を訪ねました。
日本生まれのアロマビューティブランド「ラ・カスタ」。1996年に国内でいち早くエッセンシャルオイルを取り入れて作られた、上質のナチュラルヒーリング化粧品として知られています。「界アルプス」で今回私たちが利用した客室にも、ラ・カスタのエッセンシャルオイルが用意されていました。そのブランドテーマである「植物の生命力と癒し」を具現化した空間が、ナチュラルヒーリングガーデンです。香り製品作りの体験も実施しているとのことで、楽しみに伺いました。
一歩ガーデンに足を踏み入れれば、そこはまるで別世界。生き生きと咲き誇る花々の色彩や香り、清らかな水の流れや鳥の声、風が奏でる音...。テーマごとに趣を変えるガーデンをゆっくりと散策していくと、植物の癒しの力を五感で受け取ることができ、穏やかで優しい気持ちになっていくのがわかります。ガーデンではこうして自然に向き合う感覚を大切にしてもらうために、園内が混雑しないよう予約制とし、15名以上の団体は原則としてお断りしています。ゆえに静かにのんびりと景色を楽しむことができるのです。
やがて順路の小径はガーデンの最奥にある、お城のようなヒーリングファクトリーへ。ここで地下100mから汲み上げた北アルプスの天然水を使って、化粧品作りが行われています。このファクトリーの2階にある「香りの手作り体験工房」で、自分だけの香り製品を作ることができます。スプレータイプのお部屋用のフレグランスミスト、ホホバオイルをベースにしたオイルトワレ、お風呂に入れて楽しむバスオイルの3種から選びます。いずれもまずベースの香りとして、オレンジかローズハーブを選択。そしてさらに、相性の良いラベンダーやローズマリーなど10種のエッセンシャルオイルから3、4種を選んでブレンドしていきます。どんな香りになるかな?と、つい頭で考えてしまいがちですが、コツはとにかく好きな香りだけをチョイスすること。好き+好きならば、必ず好みの香りに仕上がるそう。変にバランスを考えて、それほど好みでもないものを足したりすると、仕上がったときに納得できない香りになってしまうのだとか。ここはとことんワガママに!自分だけのオリジナルの香りを作ってみましょう。
ガーデンのほかにも、特製ハーブティーなどが楽しめるヒーリングカフェやラ・カスタをはじめとした商品などが並ぶショールームを併設。また入園しなくてもコスメショップや自社農場で栽培した花苗やお洒落なガーデニンググッズが揃うフラワーショップの利用が可能です。植物の持つ美しさと生命力で、ぜひリフレッシュしてみませんか?
ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン
長野県大町市常盤9729-2
℡:0261-23-3911
開園時間 10:00〜16:00(5〜9月は17時まで)
休園日 毎週水曜日、祝日の場合は翌日休園。11月中旬〜4月中旬は冬期休園。
入園料 大人800円(小学生以下は保護者同伴で無料)
ご予約は、ウェブの予約ページからか
http://www.alpenrose.co.jp/garden/access/reservation/index.php
電話0261−23−3911(9:00〜17:00、毎週水曜日と冬期休園期間をのぞく)でどうぞ。
●香りの手作り体験工房
営業時間 10〜16時
予約 随時受付
所要時間 約20分
料金 1,050円
ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデンは、スペシャル企画ページでもご紹介しています。
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(取材・執筆 山本 厚子/多田 みのり)