全国に14か所展開する星野リゾートの温泉旅館ブランド「星野リゾート 界」。今回は塩見と多田が、早春の彩りを訪ねて「星野リゾート 界 伊東」にお邪魔しました。
日差しが降り注ぐ日本庭園で
季節の花々に触れるひととき
静岡県伊東温泉は、熱海から一歩伊豆半島へと入ったところにあります。踊り子号に乗り込めば、東京駅から1時間45分というアクセスの良さもあり、金曜日だというのに列車は満席でした。寒い季節はことさら温泉が人気のようですね。
伊東駅から「界 伊東」までは徒歩10分ほど。門構えの玄関には打ち水がうたれ、落ち着いた和の風情で出迎えてくれます。
玄関を抜けた先には一面ガラスばりのロビーがあり、ここでチェックインを行います。実はロビー階は2階にあたり、眼下には日本庭園が広がります。
「界 伊東」の大きな魅力といえるのがこの日本庭園。客室や食事処から望めるのはもちろん、ふらりと庭に出やすい動線が描かれており、多くのお客様が庭でくつろいでいる姿を目にします。お風呂の行き帰りに、食事の後に、足湯のついでに...。ちょっと歩いてみようかな、と思わせる引力を持ったお庭なのです。
お庭には、ひときわ目立つピンクの花が。名前を尋ねると「熱海桜」とのこと。寒桜の一種で1月中旬には満開を迎えるそう。「河津桜」は有名ですが、「熱海桜」は初耳! とても愛らしい色合いで、すっかりファンになりました。
コイには餌やりもできます。また、甘夏の木にはリスが出没するそうですよ。
プールには源泉が注がれており、1年じゅう30℃前後に保たれています。そのため冬でも暖かい日には
水着のお客さんが歓声をあげています。ヤシの木やスウィングチェアがリゾート気分を演出してくれます
純和風のしつらえが落ち着く客室
椿に包まれて過ごすご当地部屋は2室限定
全30室の客室は露天風呂付きやベッドタイプなど6種類。いずれも奇をてらうことのない純和風の造りで、ほとんどのお部屋が次の間付きで十分な広さを確保してあります。
私たちが泊まったのは、ご当地部屋「つるし飾り 椿の間」。「赤椿の間」と「白椿の間」の2室あるうちの、「白椿の間」を利用させていただきました。ふすまを開けると思わず「きれい...」と感嘆の声。淡い色調のつるし飾りは、普通はまず目にしないだけに、儚げでありながら高貴な雰囲気。
聞けば、この部屋を作るにあたり伊豆稲取の作家さんに頼んだところ、白などの淡い色は敬遠され、伝統的なつるし飾りではまず使わない色ということで製作を断られたのだとか。そこで韮山の方の別の作家さんに作ってもらい、できたものを稲取に持ち込んでつるし飾りに仕立ててもらったという「作家泣かせ」の逸品だといいます。
伝統に守られた美しさが「赤椿の間」なら、革新の美しさが「白椿の間」。いずれも是非泊まって目にしていただきたい、伊東ならではのご当地部屋です。
近くで見ると細かな針目や細工がわかり、美しさにため息が出ます。
夜にはこんな風に切り絵が浮かび上がります。朝の陽光だとまた違った風情に。
肌も髪もうるおいたっぷり
椿油づくり体験
椿のお部屋で一休みしたら、ご当地楽の「椿油づくり体験」へと向かいます。
椿はこの東伊豆ではとても身近な木。潮風に強く西日を嫌うことから、防風林として人々の暮らしとともに大切にされてきました。また、その実から採れる椿油は、オリーブオイル、ホホバオイルと並び、世界3大オイルのひとつ。椿油は人間の皮脂に近いというオレイン酸が多く含まれているので、肌への浸透力が高く、保湿力がたっぷりある、とっても優秀なオイルなんだそうです。フェイスケアにはもちろん、ボディケア、ヘアケアにもいいとのこと。特に潤いが必要な女性にはぴったりなオイルですね。
早速チャレンジ!
「界 伊東」の椿油づくり体験は熱を加えずに濾過精製する"非加熱製法"で体験できます。途中の行程で熱や圧力を加えないので、加熱精製に比べるとより一層保湿力にすぐれているそうです。
スタッフの方が紙芝居方式で、伊豆と椿の関係、椿油の効用などを説明してくれます。
殻を割るのも、絞るのも、なかなかに力が入ります。昔の人は大変だったでしょうね。
美パワーを秘めた貴重なオイルは、琥珀のような綺麗な黄色をしています。
もったいなくて、どこにつけようか迷ってしまいます。
まずは椿の種6粒をペンチのようなもので殻を割り、実を取り出します。実を割らずに取り出すのはなかなか難しいですが、万が一実が割れても大丈夫。そして、実を油搾り器の中へ入れ、ハンドルをぐるぐる回すと、搾り器の穴からじわっ〜と油が染みだしてきます。まさに"搾りたて"の生の椿油です。手につけてみると、肌にスーッとなじんでさらりとしているのに肌はとってもしっとりするのです。さらにうれしいのは、このとっても貴重な椿油は1mlの小瓶に入れて持ち帰れるのです。湯上がりのフェイスケア、ヘアケア、そしてネイルケアに使ってみてくださいね。また、ガラスアーティストが手がけたオリジナルの美しい椿ボトル(別料金)に入れてもいいですね。贈り物にもぴったりです。
椿油づくり体験は、2月末まで15:30〜毎日開催していますので、チェックイン時に予約を。所要30分ほどで参加費は無料です。また、春には「椿の花びら染め」や夏には「椿油の生せっけん作り」のご当地楽も体験できますよ。
大浴場を中心にした憩いの場
時間を忘れてのんびりと
ロビー階から一つ下がった1階には、「椿油づくり体験」をしたご当地楽ルームのほかに、食事処と大浴場、湯上り処、そして庭園への出入り口があります。
夕食までのひとときは湯浴み&リラックスタイムと決め込んで、大浴場へ。
古代檜を使った大浴場は、木のぬくもりと爽やかな香りにあふれています。泉質は「カルシウム・ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉」で、とても滑らか。海沿いの温泉地ですが塩分が強すぎず、優しい湯ざわりです。露天風呂にはちょうど赤い椿が咲き、目を楽しませてくれました。タイミングが良ければ、紅白の椿を見ることができるそうです。
そして冬ならではの湯上りの楽しみが、脱衣所に置かれた「生の椿油」と「ネイルケア」のサービス。髪の毛からボディまで椿油で保湿すれば、翌朝は見違えるような艶やか肌とうるるん髪に。ローズ精油と椿油をブレンドしたネイルケアで指先まで椿の力でカバーすれば、心まで潤うよう。自分に栄養を与えてあげているなぁと実感できるリッチなひとときをぜひどうぞ。
地酒は3種類あり飲み比べOK。飲み過ぎにご注意くださいね。
大浴場の向かいにあるのが湯上り処。待ち合わせにも最適の場所で、すぐ外には足湯もあります。静岡特産のぐり茶やホットドリンクの他に、15〜19時には水菓子と伊豆の地酒も用意されます。
一方、少し落ち着いた雰囲気の中でくつろぎたいなという方には、別館2階にあるトラベルライブラリーへ。エッセイや写真集などが置かれ、コーヒーやハーブティーを片手に、自由に過ごすことができます(2017年6月に本館ロビーに移動予定)。
また、「温泉と言えば卓球!」というアクティブ派には、ピンポンルームがオススメ。3台の卓球台が用意されています。年末には年忘れ卓球大会も行われているとか。
オーソドックスな温泉旅館のように見えて、様々な楽しみが用意されているのが「界 伊東」の魅力といえるでしょう。
伊豆の味覚をたっぷりと
手のかけられた季節の和会席を味わう
伊豆という土地柄から魚介への期待が高まる夕食は、ライトアップされてぐっとロマンチックになった庭園を望む食事処でいただきます。
ふんだんに伊豆の魚を用いたメニューの中で、私が気に入ったのはお造りと台のもの、そしてデザートです。
この日のお造りはアジ、カツオ、ヒラマサ、イセエビ、アオ リイカ、キンメダイ、タイ、サザエの8種で、いずれも味付けが施されていて、そのまま味わえます。例えばイセエビは塩レモンで調味してあり、醤油だと負けてしまいがちなイセエビの甘みが引き立ちとても美味でした。
少しずつたくさんの種類を、いつもとは違った味付けでいただくことができます。
今夜もお酒がすすんでしまいます(笑)
台のものは「金目鯛のぐり茶蒸し」。切り身にぐり茶を回しかけ、3分ほど蒸し焼きにして仕上げます。金目鯛の余分な脂が落ちて深い旨みが感じられ、新たな味わいに出会えました。
左)金目鯛のぐり茶蒸し。金目鯛はもちろん蒸し野菜も甘みが増して美味。つけダレのオリーブオイルに
醤油を垂らしたもの(一番右)がまた絶妙! 自宅でもやってみようと思います
右)鶏と根菜とフォアグラの東寺揚げは、濃厚な味わいがコースの中のアクセントに。
明日葉の天ぷらに伊豆らしさも感じられます
翌朝、降り注ぐ朝日の中で朝風呂を楽しみ、想像以上に潤っている肌と髪の毛にテンションを上げながらの朝食です。
「鯵めし御膳」と名付けられたお膳は、鯵のなめろうがメイン。①そのまま食べる ②ご飯にのせて食べる ③お出汁をかけて、まご茶漬けにして食べる の3パターンで楽しむことができます。そのままだとお酒のあてにもなりそうな味わいにご飯が進みます。真鶴発祥の漁師料理と言われるまご茶漬けはさらさらといただけ、内側から体も温まりました。
ご当地部屋で椿に包まれ、温泉にゆったりつかって、おいしい食事をいただき、そして椿オイルで美肌に。1泊2日の"きれいになれる旅"へお出かけくださいね。
(取材・文/多田みのり&塩見有紀子)
<星野リゾート 界 伊東>
静岡県伊東市岡広町2-21
界予約センター:0570-073-011(9:00〜20:00)
1泊2食付き1名様 25,000円〜
チェックイン15時、チェックアウト12時
http://kai-ryokan.jp/ito/