第117回 神が降り立った地で穢れを落とし心願成就。桜島を遥かに見渡す温泉旅館「界 霧島」の開運旅(鹿児島県・霧島市)

ビューテラスより望む桜島と錦江湾

国宝指定の霧島神宮で特別祈願

天孫降臨の神話を語り継ぐ鹿児島県の霧島神宮。西日本一の大きさを誇る高さ22.4mの大鳥居をくぐり、深い緑に包まれた参道を抜けると、朱塗りの荘厳な社殿が現れます。創建が6世紀頃と伝わり、皇室の御先祖をお祀りする数少ない「神宮」を名乗る神社です。

神聖な空気がただよう霧島神宮

「天孫降臨(てんそんこうりん)」とは、八百万の神々の中で最も尊い神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)より鏡・剣・勾玉の三種の神器を賜り、国つくりの命を受けた孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天井界から降り立った神話のこと。

このような重要な意味を持つ神聖な地で、あらためて参拝の手ほどきを受け、お参りの意味を知り、特別祈願を受けられる宿泊プラン「霧島開運旅2025」が界 霧島で始まったと聞き、訪れました。

遮るもののない絶景広がる客室

大分や島根、栃木、北海道など全国23施設を展開する星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。鹿児島県の霧島市にある界 霧島は、高千穂峰の中腹に位置する温泉旅館です。何よりの魅力は、客室の大きく開いた窓から一望する桜島や錦江湾の雄大な姿。眺望が自慢のすごい客室です!
それもそのはず。宿は霧島錦江湾国立公園にあるため、まわりに他の建物がなく街灯もほぼないので、これだけの絶景を保てるのです。

客室から望む夕刻の光景。左に見えるのは桜島

大島紬やシラス壁など鹿児島の伝統工芸をあしらった、ご当地部屋「薩摩シラス大地の間」

それでは早速この絶景を望みながら「霧島開運旅」を体験していきましょう。

再確認の意味を込めて作法を学ぶ

チェックイン後、霧島神宮に詳しいスタッフから「開運いろは」の手ほどきを受けます。神宮にまつわる小話や参拝の心得など、翌日の参拝に向けて心の準備です。ふだん何気なく行っていた柄杓の使い方や意味などをしっかり学べば、正しい作法で参拝ができます。あらためて身が引き締まります。

柄杓を実際に使って解説をしてもらえる

神様とのご縁の記録でもある御朱印をいただく際に必要な御朱印帳作りもこのプランに含まれています。4種類からデザインを選べる薩摩和紙を表紙にした御朱印帳は、型に合わせて和紙を糊づけするだけなので、私のような不器用でも簡単に完成!

縁起のいい麻の葉、無病息災の瓢箪など4種のデザインから選べる

絶景のお供は焼酎?それとも霧島茶?

せっかくですので、夕食前に、客室やビューテラスで「だれやめセット」や「茶一杯(ちゃいっぺ)」でちょっとひと時を(別料金)。南九州の方言で疲れを癒すという意味の「だれやめ」のセットは、スッキリとした芋焼酎とラム酒が香るアイス最中の晩酌セット。甘味と焼酎!?という意外な組み合わせを堪能できます。


                「だれやめ」セットをビューテラスで

お酒以外でという方は、霧島茶と鹿児島の御菓子司あじ福のオリジナル上生菓子のセットで季節を味わいます。異なる湯温で淹れたお茶の飲み比べも楽しめますよ。

冬の「茶一杯」を客室で

蒸し料理でおいしさ際立つ和牛と黒豚

メインの和牛と黒豚の天地蒸し(写真:界 霧島提供)

開運の旅といいつつも、普段から煩悩まみれの私にとって楽しみなのが、やはり夕食です。半個室の食事処で今回いただいたのは、特別会席「黒酢で味わう和牛と黒豚の天地蒸し会席」。

先付や煮物椀に続き、霧島神宮の本殿や大鳥居のあざやかな朱色を彷彿させる冬の宝楽盛りが供されます。

左)先付と合わせたのは黒麹で作られた微発泡酒
右上)宝楽盛りはおかもち風の器で
右下)黒糖焼酎「開運伝説」を薩摩切子のグラスで堪能

酢味噌でいただくきびなごのお造りやフォアグラ干し柿、鶏皮ぽん酢などが、薩摩藩 島津家の家紋“丸十”をあしらった特製のおかもち風の器で運ばれます。そしてここで鹿児島の奄美大島で毎年限定千本しか製造されない黒糖焼酎「開運伝説」を味わいます。コクと丸みを帯びた甘みがあり、やわらかな甘い香りが食欲をそそります。

メインは黒酢で味わう和牛と黒豚の天地蒸し。天と地をあらわす二段のせいろで蒸すため、余分な脂が落ちさっぱりといただけます。和牛や黒豚にたっぷりと野菜をくるんでごまだれや黒酢ぽん酢でいただくと、「うーん、うまい!」と思わず声が。

季節の野菜とともに(写真は2名分)

すでにお腹がはちきれそうですが、ここで土鍋で炊いた桜島大根の切り干しご飯が登場。熱を加えた桜島大根は風味が増し、炊き立てご飯の甘みとあいまって、口の中で溶け合う美味しさ。精進や無心とはほど遠い気持ちになりますが、きっとこれが口福であり幸福なのですね。

〆の甘味は軽羹(かるかん)あんみつ

神降り立つ舞から放たれる強い気

各地の界で披露される地域の伝統芸能などを紹介する「ご当地楽」。界 霧島のご当地楽では、天孫降臨を躍動感あふれる舞「天孫降臨ENBU」が演じられます。演じるのは地元の九面太鼓保存会から指導を受けて舞を習得したスタッフ。面をつけた神に扮したスタッフが太鼓を打ち鳴らし、目まぐるしく舞い踊る姿は迫力満点です。太鼓が腹に響き渡り、いつの間にか心も震えてきます。勇壮な姿に満員の客席から拍手喝采です!

動画はぜひ音ありで!

勇壮な舞「天孫降臨ENBU」

翌日は、さつま揚げ、さつま汁など郷土料理を中心とした和食膳を朝食にいただき、いよいよ特別祈願です。

身を清め、開運祈願へ

まずは桜島や錦江湾を見渡す客室の露天風呂で、参拝に備えて「撤下神饌(てっかしんせん)の清め塩」で心身を清めます。用意される塩は、霧島神宮で日々斎行される祭典でご神前にお供えされたもの。神気がこもった清め塩を入れた縁起が良い風呂に浸かり、穢れを祓ってお参りの準備をします。

桜島を望む客室露天風呂に清め塩を入れて穢れを祓う

神様に思いを届ける用意が整ったらチェックアウトし、霧島神宮へ向かいます。

全国から多くの参拝客が集まる霧島神宮

霧島神宮は、神話に登場する瓊瓊杵尊を主祭神に、七柱(ななはしら)もの神を祀ります。社殿は、漆塗りに極彩色の浮き彫りを施した彫刻など豪華な装飾がなされており、本殿、幣殿、拝殿が国宝に指定されています。国つくりにあやかった「道開き」、瓊瓊杵尊のお后や子をも祀ることから縁結び、恋愛成就、夫婦円満、家内安全など多くのご利益があります。

素晴らしい彫刻の数々

特別祈願が行われる神楽殿で受付を行い、神事に使用される小忌衣(おみごろも)をつけ社殿へ向かうと、ほどなくして御祈願が始まります。心身の穢れを祓う「修祓(しゅばつ)」、「祝詞奏上」、神様のお恵みを戴く「金幣拝戴(きんぺいはいたい)」、「玉串拝礼」など行い、授与品を戴き下がります。
ピンと張りつめた荘厳な雰囲気の中での特別祈願は、神様にやさしく包んでいただき、気持ちが穏やかになるのを感じる時間でした。有難うございました。

この日の特別祈願は神楽殿にて

特別祈願後は受付へ声をかけ、九面を特別拝観させていただきます。霧島神宮に古くから伝わる9つの面である九面は、縁起の良い「工面(くめん)」に通じるとして独自の信仰があります。通常は一般公開されておらず、このプランのみでの拝観ですので、解説をしていただきながら九面からもぜひご利益にあずかりましょう。

特別拝観できる九面(写真:界 霧島提供)

御朱印をいただくことも忘れずに(別料金)

                                                                                                         

空が茜色に染まる夕刻と朝もやかかる幻想的な朝。海と山が織りなす息をのむほど美しい大パノラマ。界 霧島は、まさに神が降り立った地という神話が伝わるにふさわしい絶景の宿でした。

夕方になると暖炉に火が灯るビューテラス

晴れていれば降るほどの星を見ながらの開放的な露天風呂で湯浴みをし、清めた心身をもって霧島神宮での特別祈願。穢れを落とし、「これからも健康で、たくさん旅ができますように」が叶う、あらたな力を賜われた2日間の滞在となりました。

左上)スロープカーで50m下にある、すすき広がる湯浴み小屋へ
左下)湯上がり処
右)「ぬる湯」と「あつ湯」がある内風呂

界 霧島 
料金:「霧島開運旅2025」(1日1組限定)
1泊60,650円~(2名1室利用時の1名料金、サービス料・税込)
含まれるもの:特別祈願、焼酎、御朱印帳、清め塩、開運いろは、宿泊、夕食、朝食
期間:2025年1月21日~12月22日
予約:公式サイトにて7日前までに予約
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikirishima/

取材・文/塩見有紀子

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