第115回 琉球ガストロノミア~Bellezza~とトスカーナワインのマリアージュ「星のや沖縄」 (沖縄県・読谷村)

沖縄ラグジュアリーの最高峰「星のや沖縄」。全室オーシャンフロントの客室を有する施設は1㎞にわたる海岸線沿いに立ち、優雅な非日常の空間が広がります。

 

開放的な空間のダイニングでは、202411月から【琉球ガストロノミア~Bellezza~】の冬メニューが始まりました(~2025228日)。Bellezzaとはイタリア語で美の意味。亜熱帯の気候が育てる沖縄特有の食材の力に着目し、健やかな美へと導くコース料理。そして料理に合わせるのは、イタリア・トスカーナで育まれる健康的なワイン。奇跡ともいえる素晴らしいマリアージュの全貌をお伝えします。

 今回は、スペシャルイベントとして、ダイニングで提供するワインの生産者であるイタリア・トスカーナの「BALENAIA(バレナイア)」のクラウディア&イヴァン・キリコさんが来日し、直接、ワインの説明をしてくださいました。

クラウディア&イヴァン・キリコさん

イヴァンさんは元グラフィックデザイナーで、都会での生活に疲れ、新たな生き方を模索しにトスカーナに移住。そこで出会ったのが、自然農法を提唱する福岡正信さんの一冊の本でした。そして奥様のクラウディアさんとともに自然農業を始めることを決意し、標高500mの山の斜面の土地を取得し、ブドウ栽培を開始。ここはかつてブドウ栽培に適した土地でしたが、放置されたままの状態。イヴァンさんはビオディナミ(畑全体の生態系を豊かにし、月と惑星の運行に基づいた作業スケジュールを行う農法)も習得し、素晴らしい条件ながら厳しい環境のなか、二人で力を合わせて畑を復活させたのです。

お二人が丹精込めたワイン、楽しみです!

 

夕日に感動し、ダイニングへ

 まずはディナーの前に、夕日が沈む海岸でアペロです。一口サイズのおつまみとともに楽しむのは「バレナイア センツァ・テーラ ビアンコ フリッツァンテ」。黄金色に輝く瓶内二次発酵の泡です。

ミネラル豊富で軽やかな泡を片手に、沈む夕日を眺めながらのアペロは何と贅沢なことでしょう! 水平線が黄金色に染まるひとときを堪能しました。

 

いよいよお楽しみのディナーの始まりです。

琉球ガストロノミア~Bellezza~は、沖縄唯一の本草書「御膳本草」の考えをコンセプトにしています。それは、バランスの取れた食事は薬になるという医食同源の教えです。沖縄特有の食材や料理文化にイタリア料理の技法を組み合わせ、美へと導くというものです。

 

 

冷前菜は、「鮪のタルターラとローゼル」。良質な赤身の鮪を魚醤でマリネし、ハーブとともにタルタル、ハイビスカスの一種であるローゼルの赤いコンソメジュレの酸味が鮪の旨みを引き立てます。燻製香をまとわせ、目にも華やか一品です。

ワインは鮪に合わせたミネラル豊かなバレナイアのロゼ。品種は珍しい(というか、初めて聞いた!)ヴェルメンティーノ・ネーロで、通常は赤ワインを醸造するそう。旨みが深く複雑な味わいです。

 

次に登場するのは「豚肉のカモミール蒸し」。豚肉とビタミン豊富な冬瓜の組み合わせに、沖縄の柑橘・タンカンを合わせたマスタードのソースでいただきます。

合わせるワインはカモミールのような香りのするバレナイアのオレンジワイン。口に残るワインの複雑な苦味がマスタードソースとぴったりで、驚くばかりでした。

 

パスタは「マンゴーとトマトの冷製カッペリーニ」。爽やかな味わいには、南イタリア、クーリアのマスカット種の白を合わせています。

 

温パスタは「軟骨ソーキのラグーとパッパルデッレ」。アグー豚と軟骨ソーキのラグーソースにはサフランとブラックペッパーを含むチーズが濃厚さをプラスしています。

 

この料理にぴったり合うのが、バレナイアのセンツァ・テーラ赤。果実味のある味わいとスパイシーさが良く馴染みます。

 魚料理は「サクナとフーチバのズッパ アカマチの月桃蒸し」です。アカマチは高級魚のハマダイのことで、皮はパリパリ、身はむっちりと蒸しあげ、沖縄野菜の長命草・サクナ、ヨモギに似ている万能薬草・フーチバでスープ仕立てにしています。中部イタリアの白ワインと楽しみます。

 

メインのお肉料理は「牛フィレ肉と山羊肉のインボルティーニ」。牛肉を山羊肉のミンチで包み、さらにからし菜・シマナーで巻いています。上に飾ってあるのは不老長寿の薬といわれるハンダマ。加賀野菜の金時草と同じ植物です。ソースは田芋のピュレと久留米島味噌を使ったブロードソースで、しっとりとした肉の滋味が広がります。

ワインはバレナイアを代表する赤。サンジョヴェーゼ種の持つ果実味に、やわらかなタンニンが心地いいワインです。トスカーナを代表する品種を素晴らしくエレガントに仕上げています。

 

デザートももちろん、沖縄の味覚がたっぷり。「人参のズッパイングレーゼ」と「タンカンのクロスタータ」。どちらも見眼麗しく美味でございました。

 

そして、本日いただいたワインがこちらです。

手元にあるメニューには、EPAやリコピン、プロテイン、ベータカロチンなどの副題があり、どの料理でどのような栄養素がとれるかもわかるようになっています。明日の朝は体が研ぎ澄まされ、お肌がプルプルになっていることでしょう。至福のひととき!ごちそうさまでした。

 

庭めぐりと琉球スパイスワークショップ

 「星のや沖縄」では様々なアクティビティを用意していますが、今回は「ゆんたく庭めぐり」と「気巡りスパイス滞在」のワークショップを体験。その前に朝食で腹ごしらえです。

朝は琉球朝食とシチリア朝食が用意されています。琉球朝食はマース煮やゆし豆腐、ラフテー、そして炊き込みご飯のジューシーなどの伝統的な料理のオンパレード。沖縄感が上がります。

 

「星のや沖縄」の敷地には南国らしい様々な植物が植栽されています。開業当時はまだ若かった植物たちが、ぐんぐん主張するようになりました。沖縄特有の植物を案内してもらう「ゆんたく庭めぐり」を楽しみます。夏は日陰を作ってくれるモモタマナ。葉は紅葉し、実はアーモンドのような味がし、フルーツバットの好物だとか。空高く伸びるのはモーリシャスヘンプ。ちょうど先端に白い花が咲いていました。ハイビスカスも沖縄ではアカバナと呼ばれ、花びらの中央にある花柱が短いものだそう。花柱が長いものもあり、両方の比較は、へー!でした。

 左上:モモタマナ、右上:モーリシャスヘンプ、下:ハイビスカス

 

ほかにも水中メガネの木枠に使われたモンパの木や、花が下向きに咲くウナヅキヒメフヨウなど、教えてもらわなければ分からない植物たちと親しくなれます。

 2025228日まで提供される滞在プランに「気巡りスパイス滞在」があります。これは琉球のスパイスを学び、スパイスを取り入れた食事やトリートメントで心身を整えるものです。そのなかの「スパイスワークショップ」を特別に体験。

唐辛子や島こしょう・ピパーチなどが育つハーブガーデンがある「ゆがふキッチン」で、まずはお茶に仕立てたスパイスを飲み比べ、自分の好みの味わいや香りを見つけます。乾燥シークワーサーに生姜・クローブ・シナモンが香るもの、緑茶ベースで琉球山椒が効いたもの、アールグレイにクローブや柑橘が香るもの、アッサムにカルダモンの清々しさが加わるもの。4種類を試します。

次に、生姜やシークワーサー、島唐辛子、シナモンなど好みの材料で、スパイスシロップを作ります。できたシロップはお湯割りやソーダ割りで。朝一番で摂ると体が元気になりそうです。

 

最後に、離れの特別室「ティーダ」を見学させてもらいました。海につながるヴィラタイプの最上級スイートルームで、プライベートプールがあります。寝室は2つ、長ーい廊下で結ばれています。そしてテラスからはプライベートビーチへ。

4室、リピーターの予約率が高く、インバウンド客も多いとか。長期滞在も素敵ですね。

 

今回は華麗なディナーを中心にご紹介した「星のや沖縄」。沖縄だからとあちこち動き回らずに、草花や温かな空気に包まれゆっくり滞在する。そんな冬の過ごし方をぜひ。

 

星のや沖縄

 

取材・文/関屋淳子

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