「テンションがあがる『街ナカ』ホテル」をコンセプトに全国に16施設がある「OMO」。先月は東京・五反田にも誕生し、ますますパワーアップしています。「OMO5金沢片町」は2022年5月にオープン(2年前の記事はこちら)
丸2年が経ち、さらにさらに金沢の街に馴染んでいます。え?どうしてわかるか? それは「OMO」が仕掛ける数々のアクティビティに磨きがかかっているからです。「OMO」をビジネスホテルのように眠るだけに利用している方がいたら、まったくもったいない!! 「OMO5金沢片町」ではスイーツ好き・酒好き・がっつり飯好きなど、OMOレンジャーの精鋭部隊が金沢という街の奥行きを見せてくれます。
左:ご近所マップがあるOMOベース 右:加賀水引も注目
館内OMOベースにある「ご近所マップ」には気になるお店やスポットの情報が掲載されているのはもちろんですが、その真価が極まるのが、16時からの無料アクティビティ「金沢片町味わいまっし散歩」です。
観光客向けの顔ではない金沢へ
「OMO5金沢片町」がある片町は駅からバスで10分ほど。徒歩圏内には金沢21世紀美術館や兼六園、長町武家屋敷跡などの観光スポットがある好立地。さらに片町といえば隣接する香林坊とともに金沢を代表するグルメタウンであり、さらにナイトタウン(良い響き)なのです。嬉しいことに、片町の裏通りには観光客向けというよりも地元民が愛する店が多く、そのあたりをうろうろ教えてくれるのが、「金沢片町味わいまっし散歩」です。
柿木畠・広坂
施設を出発し、老舗寿司屋やおでんやなどがある柿木畠(かきのきばたけ)・広坂を通り新天地・木倉町(きぐらまち)へ。夜になるとがぜん活気づくのがこのあたり。とくに新天地は個性的な飲食店が連なり、昭和テイスト。
新天地の昼と夜
個性的な飲食店や地蔵尊も
長屋風の小さな店が連なる中央味食街に至っては裏路地感がすごいのです! こんなディープなところを案内されたら、幾夜あっても足りない!! 今日は何軒はしごしようかと画策するのでした。
中央味食街の昼と夜
酒飲みモードを抑えて、長町武家屋敷跡方面へ。藩政時代に武士が暮らしていた界隈は土塀や石畳が続き、インバウンド客も江戸情緒に浸っています。「茶菓工房たろう」でちょっと休憩タイム。このアクティビティ参加者限定のお菓子とお茶をいただきます。
長町武家屋敷跡の「茶菓工房たろう」でいっぷく
そして用水沿いに飲食店が並ぶせせらぎ通りを歩き、戻ります。約1時間の散歩ですが、途中離脱もOKなので、気になるお店に立ち寄ることもできます。それにしても、もう何度も金沢に来ているのに、ぜんぜん知らない! そんな新たな顔を発見できて得した気分です。
今宵のディナーは輪島塗×創作和食
金沢は美味しいものの宝庫で、胃袋が幾つも欲しいところ。今回のディナーは石川の食材と器を駆使した創作和食の店「CRAFEAT(クラフィート)」でいただきます。
2024年元日の地震で被害に遭った輪島塗の老舗「田谷漆器店」がプロデュースする店で、店名は「CRAFT」と「EAT」を掛け合わせています。1階はアラカルトのカジュアルなバル風、2階は予約制のコース料理、器も箸も酒器も輪島塗を中心に九谷焼なども織りまぜて供されます。
「今日の器は総額200万円ほど。気に入った器は購入もできますよ」と笑うシェフの奥村仁さん。その金額に驚きつつ、美しい塗の椀に盛られた先付の河豚と筍の白和えを口に運びます。口福の時間のスタートです。
昔話が描かれた輪島塗のお重が登場。浦島太郎や一寸法師、鶴の恩返しなど、可愛い絵柄の蓋を開けると、金時草入りのポテトサラダやいしるで味付けした茄子などの前菜の数々。
椀物はガス海老の真丈と新玉ねぎのすり流し、お造りは真鯛を行者ニンニクのソースで、そして玉手箱へ。箱を開けると加賀棒茶で燻製したノドグロ。手に沿う漆器のぬくもりや口に触れたときのフィット感、華麗な工芸美を愛でながらコースが進みます。なんて贅沢なひととき。お酒はもちろん地酒で、酒蔵で蔵人経験がある奥村さんがセレクトした名酒を合わせます。
左上:椀物、右上:真鯛 左下&右下:玉手箱を開けると加賀棒茶で燻製したノドグロが
ホタルイカ、能登豚、能登牛、しめはにゅう麺。見事な料理はもちろんですが、じつは漆器は日々の食事のなかでも素晴らしい可能性のある器だと実感。この土地の力につくづく感嘆しました。素敵な店をあとにし、夜の新天地へ…そりゃそうでしょう。
左:春らしいホタルイカ 右:酒器も素敵
そして夜は続く
スイーツ、スイーツ、スイーツ!
さて、私はどうしても酒に嗜好が傾いてしまうのですが、じつは金沢は甘党天国! 古くから茶の湯が盛んだったことから、現在も菓子の需要が多いのですが、家計調査によると菓子類やケーキ、アイスクリームなどの消費金額が例年トップクラスなのです。街を歩けばスイーツに当たる?のです。「OMO5金沢片町」でも、あま~いアクティビティを用意しています。
生らくがんの型
そのひとつが「生らくがん作り体験」。一般的な落雁よりしっとり柔らかい和菓子を手づくりします。金沢の老舗和菓子店「落雁 諸江屋」の職人から指南されたスタッフが指導してくれます。白餡と寒梅粉、和三盆を混ぜてふるいにかけた粉を1/3ほど型に入れ、餡玉を入れ、また粉を入れ、型押しを強く押して固め、まっすぐ型を押し出します。コーヒーにも合う、軽やかで独特な食感です。
練って、詰めて、押して、完成
朝食会場でもあるOMOカフェ&バルは、19時~22時に、加賀水引をテーマにした~水引夜灯りカフェ~に変身。加賀水引の発祥「津田水引折型」監修・制作の空間で、スペシャルメニューの「水引OMOなか」が味わえます。
星野リゾート提供
金沢伝統工芸の水引をあしらった器には、紅もなかは茶菓工房たろうの羊羹と季節のフルーツ、白もなかは野田屋茶店の特製加賀棒茶®アイスと五郎島金時を使ったクリームを使用、どちらかひとつを選べないほど、甲乙つけがたい味わいです。
さらに、五郎島金時モンブランも提供。こちらはティータイムにも味わえますので、ぜひ。五郎島金時は加賀の伝統野菜のサツマイモで、ホクホク感があり、甘みが強いのが特徴。ドライヤーのようなモンブラン製造器で、その場で絞り出して仕上げます。うーん、映える! そして上品な味わいが口の中に広がります。
五郎島金時のモンブラン、器は九谷焼で
知っているようで知らない兼六園
OMOカフェ&バルでの朝食も金沢らしさ満開! 6種のメイン料理からひとつを選び、その他はセルフサービスで楽しむスタイルです。「棒茶と生麩」はご飯の上に湯葉を乗せ、棒茶を煮出して和風に味付けた出汁の餡がたっぷり。前日のはしご酒で疲れた胃にも優しく、さらっと食べられる一品です。「金沢カレートースト」は金沢カレーブームの火付け役と言われる「ゴーゴーカレー」監修のもと開発したカレーソースを、キューブトーストにかけて楽しみます。カレースパイス独特の香りが食欲をそそり、香ばしい焼野菜とスクランブルエッグとの相性が抜群。元気を充てんして出かけましょう。
水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並び日本三名園とされる兼六園。行ったことがあるという方も、初めてという方もぜひ参加していただきたいのが「ちゃべちゃべ兼六園講座」です。定番からニッチな情報、おすすめ写真スポットや巡り方などをスタッフがレクチャー。兼六園の名前の由来は?最初にできたときの庭園の名前は?日本最古といわれる噴水はどのような原理?などなど、テキストを見ながら理解を深めます。
そして、このテキストの最後の問題を解いて、兼六園内のあるお店に行くと、素敵なプレゼントがもらえるというおまけつき。へ~、なるほど、おお~と唸ることばかりです。
客室についても触れましょう。どの部屋もシンプルで使いやすく、機能的。トイレとバスルームが独立していて、バスルームにはバスタブと洗い場があり、バスタブは広々。遊び疲れて帰ってきて、バスタブでゆっくりリラックスが叶います。
キッチンやドラム式洗濯乾燥機が付いたOMOハウスもあり、長期滞在にも便利。「OMO5金沢片町」をベースに、山中・山代など周辺の温泉地、古刹・那谷寺、白山市の獅子吼高原などにも足を延ばしてみるのもいいものです。旅で北陸応援、ぜひ計画してみてくださいね。
石川県金沢市片町1丁目4-23
TEL:050-3134-8095(OMO予約センター)
料金:1泊1室1万6000円~(税込・食事別)
取材・文/関屋淳子 写真/yOU (河崎夕子)