2021年に開業した星野リゾートの温泉旅館「界 別府」。館内に居ながらにして温泉街の気分を味わえるドラマティックな温泉宿です。記事はこちら
再訪したこの施設で、2023年8月31日まで体験できるのが、「つげブラシ作り」です。「界」では「手業のひととき」と題して、ご当地の文化体験が楽しめる滞在を実施しています。地域の文化を継承する職人や作家にじかに教えを乞う貴重な体験! こんなに本格的なの~と驚きつつ、その手業の素晴らしさが実感できるのです。
別府には「別府つげ細工」という細工技術が伝えられています。これは緻密で耐久性の強い薩摩柘植を使って、かんざしや花櫛、ペンダントなどに微細な彫刻や精巧な透かし彫りが施されているものです。かつては観光都市別府の土産品として人気を博したといいます。大正8年(1919)創業のつげ細工工房、「別府つげ工芸」で伝統の技術を知り、つげブラシを作ります。
その前に、チェックイン後、客室に置かれた5種類のつげブラシの使い心地を確かめます。髪の質や長さによって、ブラシの使い心地が変わります。歯の形状や持ち手の握り具合などを試した結果、私は写真右端の楕円・ブローが気に入りました。
翌日、別府つげ工芸さんへ向かいます。ショールームには美しいつげブラシが並びます。また細工が施された花櫛なども展示され、伝統の技を目にすることができます。
続いて作業場へ。なんと、薩摩柘植は丸太の状態から加工されるとのこと。切り分け、磨き、ブラシの歯の部分ができあがります。ブラシの背の部分はリコーダーに使われるカステロという材だそうで、強度と手触りに優れています。出来上がったつげブラシは、椿油につけることで、つやと汚れ防止効果が出るそうです。それにしてもすべてが手作業、職人さんの手の感覚がすべてです。大量生産できない手作りの逸品。これは大切に使わねば!
ということで、いざ実践。ブラシの穴部分にボンドを入れて歯を外側から差し込んでいきます。木は呼吸するものなので、穴に入りずらいものもあり選別しながら入れ込みます。さらに歯の高さを揃えるために機械で押し込みます。
ギシギシという音が響き、壊れてしまわないだろうかとビビりながら、何とか完成。完成したつげブラシは椿油コーティングが施され、お手入れ用品とともに後日送られてきます。メンテナンスをすれば一生使える優れもの。届いた時には小躍りしました! 私の髪もますます美しくなっていくことでしょう笑。
柄の部分に名前を入れていただき、届いた完成品(撮影:関屋)
進化するご当地鍋&ご当地湯治ジャグバンド
夕食の特別会席は、カボスを練り込んだかぼす麺と雲丹のジュレ仕立てから始まり、特産の椎茸や関アジなどが登場。そして台の物の豊後鍋も進化していました。今回は河豚やクエ、伊勢海老、ヒオウギ貝など魚介がたっぷり。カボスが全体をまとめます。
夕食後は、湯の広場で昭和レトロな型抜きや輪投げなどで遊び、さらに夜食の地獄ラーメンなどを楽しみます。そしてご当地楽の湯治ジャグバンド! 温泉と桶などを使い賑やかに音色を奏で、ゲストも一緒に手拍子で盛り上げます。この自然な一体感も進化してるなあ。
別府の湯はもちろん、館内で温泉街の賑わいを楽しみ、文化に触れる。ここだけの体験、いかがですか?
「別府つげ細工職人と行う一生モノのつげブラシ作り」
1名2万円(税込み、宿泊費別)*ブラシの種類により追加料金発生 また3月1日以降料金改定予定
公式サイト から7日前までに予約
取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)