星野リゾートのブランドのひとつであるリゾナーレとは、洗練されたデザインと、豊富なアクティビティを備える西洋型リゾートで、幅広い客層と目的に対応できる施設です。「星野リゾート リゾナーレ那須」は日本初のアグリツーリズモリゾートをコンセプトにしていて、その土地の農体験や自然体験、文化交流を楽しむことができます。
旅恋では過去に2度、この施設の紹介をしています。
2019年11月のオープン後すぐ、ファミリーで体験したアグリツーリズモリゾート
そして、2020年のコロナ禍、
ひとり旅での楽しみです。
アグリツーリズモリゾートの名にふさわしく、これまでも敷地内の農園「アグリガーデン」では収穫体験のみではなく、その日の農作業を実際に行う「ファーマーズレッスン」を開催。野菜の支柱立てや、剪定、苗ポットの植え替えなど、実際に農作業をすることで、農業を実体験できるのです。そして2021年、何やら新しい取り組みが始まったということで、訪ねてみました。
その名も「お米の学校2021」プロジェクト
このプロジェクトは敷地内の田んぼで、宿泊客と一緒に種まきから収穫、脱穀、精米までの米作りを行ない、リゾート滞在を通じてお米の魅力を知り、日本人が歩んできたお米文化を見直すことにつなげたいというものです。
具体的には、4月から10月までの全5回の体験となります。1回の4月は手作業で種まき、2回の5月は田植え、3回の8月中旬には田んぼの観察と手入れ、火起こし体験、4回の10月1日~7日は収穫と掛け干し、そして5回目の10月中旬は脱穀、精米、羽釜でご飯炊きです。全5回参加のほか、1回参加も可能なので、まだまだ間に合います。
種まき体験田植え体験お米の学校スタッフと稲本本店・井上さんご夫婦(写真3点星野リゾート提供)
学校を開催するにあたり那須で無農薬・減農栽培で米作りをしている「稲本本店(FARM1739)」の協力を得て、施設スタッフが指導いただいたことを、宿泊客に伝えます。
稲の種とは?発芽ってどうなるの?稲の花はどんな花?……。子どもはもちろん、親世代も、お米の状態は知っていてもそれまでの過程はなかなかわからないもの。さらに田んぼの役割について、プロジェクト担当の小鷹広之さんは次のように話します。
「田んぼは水を張るということで、土砂の流出を防いでいます。自然のダムの役割を担っています。水生生物の住処でもあり、何より日本の原風景といえるような美しさがあります。お客様、私たち、そして地元の農家さんと一緒に、お米の価値、お米の未来を見直せたらと思います。施設に滞在しながら気軽に参加できるということが大切だと思っています。日本人のお米の消費量は、昭和40年には年間ひとり当たり約112㎏でしたが、今や半減。少しでもお米に親しみを持っていただけたら、と思います」
田んぼと那須岳(星野リゾート提供)
今年はコシヒカリを育てているとのこと、自分が携わったお米はきっとなによりも美味しいことでしょう。
お米の学校2021
料金:1回参加 大人3300円、小学生1650円
公式サイトから前日17:00までに要予約
9月30日まで開催! アグリビアガーデン
モヒート、レッドアイ、紫蘇ジュース&おつまみも!
農園の隣に立つ「グリーンハウス」は、様々なハーブを育てるとともに、オリジナルのハーブティやバスハーブづくりなどの体験ができる場でもあります。ハウス内に入ったとたんに、ハーブの香りに包まれ癒し効果は抜群!
ここで17時~20時に開催されるのがアグリビアガーデン。ビールをトマトジュースで割ったレッドアイ、新鮮なミントたっぷりのモヒート、そして紫蘇ジュースが振舞われます。おつまみには野菜のピクルスや枝豆。
夕食前のアペリティフに、あるいは夕食後のひとときに利用できます。また天気が良い日には田んぼの畔にハンモックやベンチが設えられ、ここでもアグリビアガーデン。満天の星空の下での夕涼みは最高です。
食にまつわる体験では、石釜ピッツァづくり(1枚2000円)はいかがでしょう。ピッツァ生地とトマト、パプリカ、ズッキーニなどの野菜ボックスを受け取り、スタッフの指導のもと、生地を伸ばし野菜をトッピング。5分ほど石釜で焼けば完成。アクティビティ施設「POKO POKO」で11時~13時の間、楽しめます。サクッもちっの生地と野菜の旨みがぎっしりのピッツァです。
プレイエリア、Books&CafeがあるPOKO POKO
また、もう一品味わっていただきたいのが、フードロス問題から生まれたミルクジャムを使った「牧場を救うミルクジャムフラッペ」(990円)。プリン、ホイップクリーム、そしてミルクジャムがたっぷり。ミルクジャムの味は濃厚なミルクキャラメルです!
朝食も夕食も野菜の恵みが満載
朝食前のアクティビティ、ファーマーズレッスン。参加日はインゲンや茄子、UFOズッキーニなどの収穫と、トマトの脇芽摘み。脇芽とは主枝のわきに生えてくる枝のこと。これを小まめに取ることで主枝が大きくなり栄養分が集中して美味しいトマトができるとのこと。指でプチン、と取ります。最初は脇芽を見分けるのに戸惑いますが、慣れてくればプチ、プチと。青臭いトマトの香りがなんとも心地いい。
ご一緒に作業をしたご家族左がUFOズッキーニ、そして収穫した野菜たち
トマトの脇芽摘み
このような体験のあとでいただく朝食は、もちろん野菜のオールスター。収穫が安定する夏には、敷地の農園の野菜も盛りだくさんになります。ビュッフェレストラン「SHAKI SHAKI」で、大満足のサラダ多すぎ朝食! 新鮮で滋味深い野菜たちは、ごちそうの極みです。
野菜が元気なビュッフェ
私の朝食一皿目
夕食は同レストランでのビュッフェや、メインダイニング「OTTO SETTE NASU」でのコース料理(1万5730円)があります。
イタリア・トスカーナ地方の郷土料理が、地元食材を使って多彩にアレンジされて登場します。「農園のピンツィモーニオ」はブロッコリーやトマト、大根などの25種類の野菜が生ハムやチーズとともに登場。ピンツィモーニオはスティックサラダのことだそうで、プロセッコとともに楽しむおつまみ。「このズッキーニはアグリガーデンのUFOズッキーニです」と説明を受ければ、ああ、私が収穫したUFOちゃんと一緒ね、と親近感。まさにファーマーズレストランですね。
とても気に入ったのが「稚鮎と胡瓜のフェデリーニ」。フリットにした稚鮎を胡瓜とバジルのソース、さらに鮎のうるかのソースでいただきます。稚鮎の香味、うるかの苦み、そしてカダイフのサクサク食感も合わさる美味なる味わいでした。地元ココファームや自然派ワインなどとのペアリング(8000円)もぜひ。
ぜひワインペアリングで
取材日は梅雨のど真ん中。東京ではうんざりの雨も、那須では一葉一葉の色を鮮やかに映し出し、草の香を強烈に届けてくれる素敵な贈り物に思えました。施設内はどこもかしこも木、林、森。闇を彩る苔、ニョキっと顔を出す茸、蛙の大合唱、そして青々と水を張る田……。そう、土のにおいのするこんなリゾートがあってもいいよね。今後も進化し続けるであろうアグリツーリズモリゾートの形が楽しみになりました。
窓の外は田んぼ
電話:0570-073-055(リゾナーレ予約センター)
料金:1泊2万4000円~(2名1室利用時一人当たり、税込み、朝食付き)
取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)