第63回 大自然に包まれて、希少な生き物や植物に触れるファミリー旅「星野リゾート 西表島ホテル」(沖縄県・西表島)

コロナ禍2度目のゴールデンウィークと夏休みがやってきます。この一年で、適切な予防策を講じながらのお出掛けの仕方も少しずつ掴めてきたのではないでしょうか。そんな中、今年こそはバケーションに出かけたいと考えているファミリーも多いはず。
今回は子供の成長を感じる、かけがえの無い家族旅の参考にと、多田が一足早く沖縄・八重山諸島にある「西表島ホテル」と「リゾナーレ小浜島」を訪ねてきました。

持ち物はジャングルを楽しむ冒険心!
ファミリーに嬉しい多様なサービスを利用して思い切り楽しもう!

最初に訪ねたのは「西表島ホテル」。
沖縄本島に次いで大きい西表島は、その90%がジャングルに覆われ、イリオモテヤマネコやカンムリワシなどの特別天然記念物が棲息する“日本最後の秘境”と呼ばれています。港は島の北にある上原港と、南東にある大原港の2ヶ所があり、石垣港からはフェリーで40〜50分ほど。「西表島ホテル」は島の北部にあるので、時間が合えば上原港便の方が便利です。

「西表島ホテル」のメインターゲットは20〜30 代のアクティブな女性なのですが、特にこうしたジャングルリゾートでは、快適性や利便性が滞在の満足度を左右します。その点、若い女性向けのきめ細やかなサービスがあるということは、実はファミリーが安心便利に楽しめる指標にもなります。
「秘境ってことはいろいろ準備していかないと」なんて思いがちですが、売店はもちろんロビーやプールサイド、アクティビティデスクに様々なサービスが用意されているので心配は無用。
「いかに準備をせずに楽チンなファミリー旅ができるか」を重要視している私ですが、「西表島ホテル」なら荷物は最小限に、冒険心を最大限に訪ねてOK!
まず初めに、その便利ポイントをご紹介しましょう。

高い天井がアジアンリゾート感を演出するロビーには、24時間使えるフリーラウンジにドリンク類が用意。
星野リゾートではペットボトルフリーへの取り組みを実施しているので、自分の水筒や客室のウォーターボトルにも、ここで水を入れることができます。さりげなく環境問題について学ぶことができるのも◎です。

コーヒーやハーブティー、さんぴん茶、パインジュースなどが用意されています

ショップは西表島の自然を楽しめるよう、有名アウトドアブランドなどのグッズも販売。また島の動植物などを描いた島Tシャツも豊富にあります。おむつや水遊びパンツなど幼児向けのグッズの販売もあるので、小さい子連れファミリーも安心。スーツケースをオムツいっぱいにしていかなくて済みます。

お土産やおやつ、西表島の作家さんの器なども販売しています

プールサイドには浮き具やライフジャケットの無料レンタルがあり、温水のジャグジーも完備。また、徒歩15秒ほどの月ヶ浜専用のチェア&パラソルのレンタルも。シュノーケル4点セットやトレッキングブーツの有料レンタルもあるので、海遊び・山遊びの道具は最低限の準備で大丈夫です。

浮き輪などの水遊びグッズは意外とかさばります。レンタルがあると嬉しいですね

レンタサイクルで自由に島を散策するのもおすすめ。ロビーの一角にあるアクティビティデスクでは無料イベントをはじめ、カヤックやトレッキング、ビーチアクティビティなどの申し込みができます。「西表島秘境のんびりクルーズ」は0歳から参加可能なので、乳幼児連れのファミリーでも西表島の自然を満喫できますよ。

海やジャングルのアクティビティが年齢に応じていろいろ用意されているので、何かしたいな、というときはまずは相談してみましょう

夕食のビュッフェ会場でも、ベビー連れに嬉しい配慮を発見。ベビーフードがいろいろ置かれていました。たまたま一緒になったファミリーは「どうしよう、ひとつじゃない、選べるよ!」と興奮していました。嬉しいですね。

月齢ごとに種類もいろいろ。ブッフェのお料理と合わせれば、赤ちゃんだって立派なディナーの完成です

旅の準備とは違いますが、夜にはロビーで西表島の代名詞ともいえるイリオモテヤマネコについて学ぶ「やまねこの学校」が毎晩無料で開催されています。ヤマネコ以外にも島に生息する固有種や天然記念物の生き物が紹介されるので、夏休みなら自由研究にも役立つので、親も一安心です。

島の気候や生息する動物、共存していくための工夫などをスライドで解説

いかがです? ざっと挙げただけでも、旅の準備を簡便にしてくれる配慮がいろいろ。“ママだって旅を満喫するべきだ!”という私のポリシーにばっちりハマる「西表島ホテル」です。

食事も島の魅力が満載!
アルコールを含むドリンクがインクルーシブで大人も大満足

では次に、客室と食事もご紹介しましょう。
今回、我が家が泊まったのは、子供のテンションが上がるスーペリアロフト。3・4名対応の客室で、階段や梯子で上がるロフトベットが備えられています。家族で寛げるリビングスペースもあり、ゆっくり団欒を楽しむことができます。ベッドの下には、スーツケースをしまえるスペースがあり荷物が出しっぱなしにならないので、部屋での家族写真の邪魔にもなりません。バストイレ別で、家庭と変わらないバススペースなので、小さいお子さんとのバスタイムも、いつも通りに入れられます。

西表の海を表したブルーの壁紙が爽やか! 家族3人がゆったり寛げるソファもあり、部屋時間も楽しめました

一方、女子旅やパートナーとの旅なら、ディベッド付きのスーペリアツインやデラックスツインをぜひ。アジアン風の落ち着いた色調でまとめられていて、ジャングルやビーチでのアクティビティの余韻と共に、ゆったりと過ごすことができます。

リゾートのひとときを過ごすディベッドが居心地良すぎて、ついついまどろんでしまいそう

食事は夕食も朝食も、ダイニングレストランのブッフェを利用します。
夕食は、青のイメージのイリオモテの日と、赤のイメージのアジアンの日が1日交代で入れ替わります。イリオモテの日のライブキッチンでは、黒糖カマイ(リュウキュウイノシシ)すき焼き、ガザミ汁、牛肉の鉄板焼き、アジアンの日はエビつくね、ローストビーフ、黒糖スペアリブの各3種が用意され、連泊でも飽きずに西表の食材を味わえます。

この日は青のイメージのイリオモテの日。我が家では濃厚な旨味のガザミ汁が好評でした

さらに、ジーマミー豆腐やもずくの天ぷら、ゴーヤの磯辺揚げ、赤マンボウのカルパッチョなど、地の味覚が並びます。
そして、これらの食材と相性の良い八重山泡盛を無料で楽しめるのが、飲兵衛の私と夫には嬉しいサプライズ。ブッフェで選んだメニューに合わせておすすめしてくれるので、あれもこれもと欲張らなくても最適のマリアージュが堪能できます。

右端の「いりおもて」は終売につきもうすぐ飲めなくなるということで挑戦。すっきりした味わいでどの料理にもあいました

一方、子供や甘党の人にはアイスクリーム9種が食べ放題のサービスも。紫芋やドラゴンフルーツ、黒糖、ブルーソルトなどこれまた南国らしさを満喫できるラインナップで、両方イケる私は天国とばかりに、アイスと泡盛をペアリング。満足でした。

朝食も同じ会場でのブッフェになりますが、特徴的だったのが、パパイヤシリシリやクーブイリチー、ゴーヤ醤油漬け、白菜ともずくのシークワサー漬けなど、ご飯のお供となる副菜に、沖縄らしさをふんだんに盛り込んでいること。お味見が楽しくて、ついつい食べ過ぎてしまいました。ライブキッチンでは、黒糖パンを卵や牛乳に一晩漬け込んだ「黒糖フレンチトースト」が大人気!

なお、レストランはランチ営業もしています。
・ラフテーパインカレー
・ホットドッグ パインマスタードソース
・あぐー豚タコライス
の3種があり各1000円。テイクアウトしてプールサイドやビーチ、客室で食べることもできます。

サラダ付きでボリュームもあるランチ3品。器もカトラリーも紙や木でできたものを使用しています

「西表島ホテル」は基本プランが1泊朝食付きなので、連泊する場合、ランチはレンタサイクルやバスなどを使って外のカフェや食堂に食べに行っても良いですし、夕飯も外の居酒屋を利用してもOK。多くの居酒屋が送迎してくれるので、1泊目はホテルで、2泊目は島の居酒屋でという方も多いそうです。

西表島を深く知るアクティビティやイベントも盛りだくさん
ぜひツアーに参加してガイドさんの話を聞いてみて!

西表島の醍醐味といえば自然と触れ合うこと。施設内を歩くだけでも本土とは違う植生や固有の生き物に出会うことができます。
パブリックスペースの「ジャングル Kichi(キチ)」は、西表島に関する図鑑や絵本が置かれたライブラリーエリアと、大きなマップにQRコードが貼り付けられ、島のディープスポットの情報が得られるMAPエリア、そしてジャングルの中を巡る散策路があります。
※コーヒーや紅茶を飲みながら一息つけるくつろぎエリアもあるのですが、コロナ対策で閉鎖していました。

プールサイドやビーチとはガラリと趣の異なるジャングルKichi。屋根があるので雨の日でも安心です


ヤシガニは見られませんでしたが、オカヤドカリを発見!デカイ!

しかしこれだけではせっかくの西表島らしさがわからないと言うことで、いくつかのアクティビティとイベントに参加してみました。

●「夕暮れマングローブカヤック」
初日の夕方に挑戦したのは「夕暮れマングローブカヤック」。八重山諸島はなんと3月中旬には海開きをします。よって、もうビーチアクティビティをはじめとした水辺遊びも、寒々しくなく楽しむことができます。
マングローブの群生と、ノコギリガザミやヤシガニなどの大型のカニを見ることを非常に楽しみにしていた息子は、この日一番のはしゃぎよう。
浜辺でパドリングの練習をしてから、カヤックに乗り込みます。夕暮れの時間に開催するので、この日はたまたま満潮に近く、カニが出現しにくい状態だったのですが、そのぶんマングローブの森の奥の方まで漕ぎ入ることができました。

水面が近いので、水鳥のような視点で森を見上げて進みます

ところでマングローブという植物があると思いがちですが、実は熱帯・亜熱帯の汽水域に自生する木の総称を指します。この辺りに生えているのはヤエヤマヒルギとオヒルギの2種があります。
水は思ったよりも透明度が高く、時々小魚も見えます。ガイドさんによると、時にはアカエイや小型のサメ(いずれも人を襲うことはないのでご安心を)が現れることもあるのだとか。

マングローブの木を間近に見る絶好のチャンス。根の張り巡らし方、種のなり方などじっくり観察できます

パドルを漕ぐ水音だけが響く中、マングローブ林の間をカヤックで進んでいきます。なんと心の落ち着くことでしょう。親子や兄弟で、息と力を合わせて漕ぐことも貴重な経験になります。

プライベートツアーなので、対岸に上陸してカニ探しも。砂浜のキャタピラのような跡はヤドカリの足跡だそう

この日は雲が多く肝心の夕暮れは見えそうになかったのですが、カヤックを降りたタイミングで奇跡的に線香花火のような夕日が現れました。島を出るフェリーの最終便が17時なため、西表島の夕景を見られるのは島に宿泊する人だけの特権。この贅沢なひと時をぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

ほんの5分ほどの夕暮れショー。夕陽の道の上に立つ息子は無言で感動を噛み締めていました

●「おめざめマングローブストレッチ」
翌朝には「おめざめマングローブストレッチ」に参加しました。マングローブは通常の植物に比べて5倍の酸素を放出するといわれており、マスクを外して新鮮な酸素をたっぷり吸い込みながらストレッチをすることができます。

新鮮な空気を吸い込み、ストレッチ。裸足でやるので、足の裏からも島のパワーを吸い込めます

本来は足首くらいまで海水に浸りながらストレッチをするのですが、今回は水深がやや深かったため、砂浜で開催。
カニやヤドカリの姿を見ながらのストレッチで、子供の集中力は続きませんでしたが、夫と私は久しぶりに五体を存分に伸ばし、体も頭もすっきり目覚めていくのを感じました。

ストレッチ中に捕まえたスナガニ。砂に同化しているので、透明に見えますが、砂色をしています

●「クーラの滝トレッキング」
朝食の後は、ジャングルの中を30分ほど歩いて滝を訪ねる「クーラの滝トレッキング」へ。虫好きの息子のリクエストに応じて、生き物に詳しいガイドさんが案内してくれました。
道路のすぐ脇までジャングルが繁る西表島では、一歩森に踏み込むだけで、もう独特の植生が出迎えてくれます。
息子は虫の中でも特にバッタ好き。西表島には「イリオモテモリバッタ」という固有亜種がいるということで、バッタ遭遇を第一目標にしてスタートです。
生憎、雨が降ったり止んだりの天気で、気温は23度ほどありましたが、これは西表島の生き物には少し寒いのだそう。ムシムシと暑くならないと活動的にならないということも学びながら進みます。たくさんの植物と生き物を見た中から、いくつかご紹介しましょう。

最初に見つけたのは「サキシマスベザトウムシ」。私はこの虫をずっとクモだと思っていましたが、息子は「ザトウムシ」だと知っていました。自然の中ではすでに息子の方が師匠でした


クワズイモの葉はトトロの傘。本当に雨を避けられそうな大きさですが、触るとかぶれるそうなのでご注意を


ジャングル感を醸す大きなシダは「コミノクロツグ」。小さな実(コミ)をつけるクロツグだそうですが、昔の人の名前みたいですよね


「ジャングル Kichi」でも見かけた「サキシマキノボリトカゲ」を捕獲。つぶらな瞳がキュートです


ヤエヤマクビワオオコウモリが好んで食べる「ギランイヌビワ」の実


葉の上で静かに休んでいた「リュウキュウヒメジャノメ」蛇の目のような模様が特徴です


グネグネと道を横切るのは「モダマ」のツル。ちょうど輪になっていたのでフレーム代わりにしてみました


みっしりと木に生えた「キクラゲ」。こんなに生き生きと密生しているのは初めてみました

幾度も立ち止まり、ガイドさんが持つ図鑑で植物や生き物の名前を調べながらの散策は、亜熱帯の濃密な植物の息吹に満ちた、ジャングルでしか体感できない特別なひととき。私は旅先でのネイチャーツアーが大好き。子供と同じ目線で自然に触れ合い、共に学ぶ貴重な経験となり、思い出話にも花が咲きます。

クーラの滝。島には100以上の川があり滝もたくさんあるので、次回はもう少し大きくなった息子と、また別の滝を訪ねる夢ができました

クーラの滝に到着! 小さな滝ですが秘境の雰囲気も味わえ、子連れには程よいアクティビティ。畔には大きなモダマのツルが垂れ下がり、フォトスポットに最適です。

手軽なツアーですが、ガイドさんと歩くと景色の解像度が増し、いろいろなものに気づく目を養えます

お目当てだったバッタは見られませんでしたが、たくさんの小さな生き物を見つけ、息子は大満足。ガイドさんに勧められた図鑑をホテルのショップで買い求め、帰宅後も毎日のように読んでいます。

●「春のパイン祭り」
最後に西表島ならではの味覚体験イベントもご紹介しましょう。今回、一足早く特別に味合わせてもらったのは、西表島特産のピーチパイン。「西表島ホテル」では4月15日〜5月31日まで「春のパイン祭り」を開催します。その主役が、ほんのり桃の香りがする「ピーチパイン」です。

久しぶりに未知の美味と出会いました。畑からすぐにテーブルへという新鮮さも魅力です

小ぶりで苺と同等の糖度があり、甘味と酸味のバランスが絶妙! 私は果物の中でもパインが格別に好物なのですが、この美味しさには驚きました。特に完熟による酸味ではなく、未熟の酸味がとても爽やかで、クリアな味わいなんです。
実はホテルスタッフのうち、ピーチパインをこよなく愛する面々で「パイン部」というチームを組んでおり、今回のイベントは「パイン部」のパイン愛が高じて実現したものだそう。コロナ禍による閑散期には、農家さんにパイン作りのお手伝いに行き、生産から関わったといいます。

スタッフ自らの取り組みが盛んなのも星野リゾートのおもしろさ。私もパイン部に入りたい!

イベント開催中は、このピーチパインをはじめとした食べごろのパインが、「ウェルカムパイン」としてロビーで振る舞われ、レストランではパインを使った料理も登場。さらに農家さんを招いてパインのお話を聞く「西表島パインの学校」も開講。

ロビーでのウェルカムパイン!美味との出会いから始まる滞在をぜひ!

西表島には農協がないので、産直でお取り寄せするしか味わえない島の味覚です。4月から5月に「西表島ホテル」を訪ねる方は、この口福のピーチパインをぜひ味わってみてくださいね。

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「西表島ホテル」の楽しさが伝わりましたでしょうか。今回は1泊して家族で水辺とジャングルのアクティビティを体験しましたが、西表島を満喫するならもう1、2泊はしたいところ。
浜辺でのんびりするだけの南国リゾートじゃ物足りない、大自然に触れるアクティビティがしたい、一期一会の動物との遭遇など稀有な体験がしたい、そんなファミリーには「西表島ホテル」をおすすめします。

「星野リゾート 西表島ホテル」
https://iriomotehotel.com/
大人1泊2食付き2名利用時の1人料金14,000円~

取材・文/多田みのり

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