「一たび濯げば(すすげば)形容端正しく、再び沐すれば万病悉く(まんびょうことごとく)除ゆ」。“一度入ると姿かたち美しくなり、再び入ると万病が治る”。天平5年(733年)に編纂され、聖武天皇に献上された『出雲国風土記』にこう記されている玉造温泉。「星野リゾート 界 玉造」は、奈良時代より美肌の湯として親しまれている玉造温泉に佇みます。神話の国・島根にある温泉旅館の魅力をご紹介します。
幻想的な夜の外観(星野リゾート提供)
神話の世界をそこかしこに感じる温泉旅館
星野リゾート 界 玉造は、出雲空港・米子空港(鳥取県)のいずれからも車で約1時間、玉造温泉の風情ある温泉街のちょうど真ん中に立ちます。神々の国と呼ばれる出雲らしく、石畳のアプローチからモダンなロビーに入ったところから特別な滞在が始まります。ロビーでは、しめ縄のかかる大きな岩、上を向けば『因幡の白兎』の影絵が迎えてくれます。そしてロビーと客室を繋ぐ朱色の太鼓橋はまるで現世と神話の世界を行き交う橋のようです。
日本庭園を望む茶室でお点前
島根県の松江は、実は京都・金沢と並ぶ日本三大和菓子・茶処。江戸時代後期、松江藩松平家 7 代藩主・松平治郷 (不昧/ふまい) が 松江に茶文化を広めたそう。界 出雲の離れの茶室「蛙瞑庵(あめいあん)」では、15時半~18時半、三斎流や裏千家の亭主が、ウェルカムドリンクならぬウェルカムお点前を披露してくれます(無料)。星野リゾートでは最高基準のコロナ対策宣言をしており、現在こちらのお点前は1回20分1組ごとに提供中です。出雲やお茶の歴史を亭主にうかがいながら、お菓子とともに抹茶で一服してみてくださいね。椅子に座る立礼式(りゅうれいしき)で気軽に茶文化を楽しめます。
地域の工芸品で彩られた客室
この日の宿泊は、館内唯一のご当地部屋「出雲匠の間」。ご当地部屋とは、地域の特徴的な工芸品をちりばめた客室で、界 出雲では島根出身の若手工芸職人グループ「シマネRプロダクト」が手掛けています。石州和紙の襖、組子細工の天井照明や行灯、出雲鍛造の行灯やロウソク立てなど、モダンさと伝統の技を感じられます。そしてなんと次の間にはこの時期にありがたい掘り炬燵が!ちょっとした合間時間は必ずここで過ごしていました。そうそう、出雲鍛造の行灯は館内のロビーのそこかしこにも置かれています。面によって模様が異なるのでチェックしてみてくださいね。
客室と大浴場で美肌の湯につかる
そして、うれしいのが全室露天風呂付きなところ。肌によい玉造温泉にいつでも好きなときに入れるなんて、なんとも贅沢です。藍染めに描かれたクシナダヒメとヤマタノオロチに見守られながら入浴できますよ。
なみなみと温泉が注がれた客室の露天風呂
界 出雲は全室温泉露天風呂付きですが、大浴場も訪れたいところ。そしてせっかくなら温泉効果をより高める正しい入浴法や泉質を知っておきたいですよね。16時から湯上がり処では、界の湯守りが「温泉いろは」と称して紙芝居を使って入浴法などをレクチャーしてくれます。
また、とても面白いのが大浴場入口に設けられている「美酒処」です(15時~22時/未成年不可/無料)。なんと、松江市内の酒蔵で作られた日本酒とローションマスクが用意され、大浴場の中で日本酒フェイスマスクを楽しめるのです! 私も試してみましたが、日本酒にしっかりとひたしたフェイスマスクと、温泉のあたたかさで、お酒を飲んでいないのにもかかわらず香りだけで酔ってしまいそうでした(笑)。お酒に弱い方は、大浴場内の源泉と日本酒を混ぜてもいいかもしれませんね。
升に日本酒を注ぎ、ローションマスクをひたしてパック
玉造温泉は湯あたりやさしく、さらりとなめらかで保湿力もたっぷり。湯上がりはぷるんと顔も体も潤いますよ。乾燥が気になるこの季節に朝に夜にゆったりとつかりましょう。
大浴場(星野リゾート提供)
リモートで和菓子作り体験
夕食前の腹ごなしには、歩くのにほど良い距離の玉造温泉の散策もおすすめですが、ぜひトライして欲しいのが、客室でできる「界のご当地おこもりグッズ」体験。日本三大和菓子処だけあり、界 出雲では和菓子作りができるセットが用意されています(1組1,000円)。QRコードを読み込むと、地元の和菓子屋の職人さんによる作り方の説明を動画で見ることができます。
この日体験したのは季節に合わせた梅模様の和菓子。自分のあまりの不器用さに、見本とは似ても似つかない梅が完成してしまいましたが、自分で抹茶をたて、自分で形作った和菓子を食べるという楽しい体験となりました。
作る前に動画をチェック。作り方を繰り返し確認できるのが便利
後編では、お楽しみの夕食や日本酒飲み比べなどをご紹介します。
<星野リゾート 界 玉造> https://kai-ryokan.jp/izumo/
取材・文/塩見有紀子