第55回 台湾×日本のマリアージュ。台湾で熱愛される“日式”温泉リゾート「星のやグーグァン」 前編(台中郊外・谷關温泉)

 台湾第二の都市・台中から車で約1時間半。標高3000m級の台湾中央山脈に抱かれた渓谷で、1907年に発見された温泉郷が谷關(グーグァン)温泉です。こんこんと湧き出る良質なお湯を見出したのは、台湾で原住民と呼ばれる先住民族のひとつで、今もこの地で暮らす「タイヤル族」。以来100年以上にわたって地元の人たちに守られて来ました。

山間の集落らしいひっそりとした佇まい

そんな谷關温泉に、20196月に誕生したのが「星のやグーグァン」。海外ではインドネシア・バリ島に続く2軒目となる、日本発のラグジュアリーな温泉旅館です。台北や台中、高雄といった都市で働くビジネスマンが週末リフレッシュに訪れたり、家族連れがバカンスに出かけたりする鄙びたリゾート地だった谷關温泉に、台湾全土でも指折りの超モダンなホテルが登場したとあって、大きな話題を集めました。

亜熱帯の緑と水に癒される「星のやグーグァン」

新型コロナウィルス感染症が落ち着いている台湾では、国内旅行が大ブーム。日本に旅行できない状況下で「日本ロス」になった人たちが多く、予約が取れなくなっているそう。そんな台湾っ子たちが憧れる「星のやグーグァン」をご紹介します。

ヘルスコンシャスな台湾女性が注目する“美肌の湯”

客室にあるプライベートな露天風呂は開放感抜群

谷關温泉の泉質は、弱アルカリ性炭酸水素塩泉。毛穴の汚れや不要な角質を取り除き、肌をすべすべにしてくれる美肌の湯と言われています。宿では、敷地内の源泉からこのお湯を引いていて、源泉かけ流しの半露天風呂が全室に備わっています。つまり滞在中は24時間いつでも、気が向いた時に湯浴みができるというわけ。

客室は前面がガラス張り      リラクゼーションスペース      寝心地いい和ベッド

台湾女性は、もともと家族から医食同源の考え方を伝えられていることもあり、温かいお茶を飲んだり、身体にいい野菜やハーブを食べたりと、自然のパワーを借りて綺麗になりたいと考える人が多いそう。大地の恵みである上質なお湯は、台湾女性が好む美容法にぴったりなのです。

ドリンクやスナックが無料で提供されるライブラリーラウンジ

部屋付きのプライベートな半露天風呂にプラスして、緑あふれるガーデンには、檜の香る広々とした内風呂と、亜熱帯の植物に囲まれた露天風呂の、ふたつの大浴場があります。1年中暖かい台湾では、四季を通じてさまざまな植物や花を楽しめるそう。檜や森のアロマは、リラックス効果も抜群です。

台湾のフーディーズが注目!台湾×日本の創作料理

豚の角煮を乗せた丼「焢肉飯(コンローハン)」など台湾料理も

フードマイレージやフードロスといった問題もあり、いま世界的なムーブメントになっているのが、地域の食材を新しい技術で調理して、クリエイティブな料理を生み出したり、食材のこれまで知られていなかった一面を引き出したりすることです。台北では、台湾全土から集めた食材を、日本古来の繊細な技法で調理して、会席のプレゼンテーションで提供する名店「祥雲龍吟」がミシュラン二ツ星に輝くなど、高く評価されています。

台中を囲む三山に見立てた「宝楽盛(ほうらくもり)」、右は開いた状態

「星のやグーグァン」で楽しめるのも、台湾の恵みと日本の技をかけ合わせた特別な会席コース。アラカルトの台湾料理もありますが、台湾でしか味わえない日本料理を、ぜひ一度は体験してみたいものです。

日本料理の出汁のジュレを効かせた「海老とオクラ豆乳葛寄せ」

台湾産の杉の器に盛り付けた「お豆腐の三彩田楽」

台湾の5種類の茸をミックスした「旬魚と茸の壺蒸し」

台湾人が大好きな「和牛しゃぶしゃぶ 貝だし仕立て」

使われる食材やメニューは、四季によって変わります。私が訪問した春の始めには、「酒酿(ジョウニャン)」というお米を発酵させた甘酒のような発酵食品や、近隣の山で採れる山伏茸、谷關温泉郷名物のチョウザメ(キャビアじゃなくて身を食べます)といった、台湾のフーディーズも驚くディープな食材が登場しました。

 現地の食堂では、チョウザメや山伏茸はダイナミックに炒めたり、酒酿は白玉を入れてデザートにしたりするそうですが、ここで発揮されるのが、季節を描いたり、風景を写し取ったりする日本料理の美意識。たとえば、台中を取り囲む象徴的な三つの山「梨山(リサン)」「獅頭 山(シートウサン)」「八卦山(バーグァサン)」を表現した「宝楽盛(ほうらくもり)」といった、目でも楽しめるセンスが随所に感じられました。

締めは台湾産の鰻を日本風(関東風)に調理した「鰻ごはん」

今年からミシュランガイドに台中が組み込まれ、「星のやグーグァン」はホテル部門において、「4パビリオン(赤)」に選ばれました。台中でレストラン部門の星を獲得したのはわずか4店(二ツ星1店、一ツ星3店)で、日本料理店はゼロ。台湾のフーディーズたちは、数年以内に「星のやグーグァン」も星がつくと予想しているとか。

朝食は3種類からチョイス。台湾風おかゆや和食、洋食メニューも

大きな窓から差し込む朝陽が心地いいダイニング

国境が開いたら真っ先に行きたい場所として挙げる人も多い台湾。慣れ親しんだ温泉があり、「半分外国」くらいの気分でのんびりステイを満喫できる「星のやグーグァン」は、きっと疲れた心身をゆるめてくれるはずです。後編では、ぜひ連泊してリゾート内で楽しみたいアクティビティやお散歩コースをご紹介します。

周遊に便利なチャイナ エアライン・マンダリン航空

この旅は「台湾2都市ものがたり」と名付けて、台中と台北を欲張りに周遊しました。行きに乗ったのが、成田から台中まで直行便を運航していたマンダリン航空。「星のやグーグァン」に行くなら、このフライトが便利です。台中から台北へは、鉄道やバスがたくさん運行しています。台北からの出国は、日本全国15空港に就航しているチャイナ エアラインを利用して羽田に戻りました。東京在住の方なら、このルートが快適かと。台湾旅行の計画に、ぜひ参考にしてください。

星のやグーグァン

マンダリン航空(Mandarin Airlines

チャイナエラライン(China Airlines

 

取材・文/江藤詩文

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