「旅恋どっとこむ」に特別参加させていただきますライターの田喜知です。先日、台湾の宜蘭(イーラン)県に行ってきました。はじめて訪れた宜蘭県には、マイナスイオンたっぷりの森林地帯をはじめ、ホエールウォッチングを楽しめる海岸エリア、独特の伝統グルメなど数多くの興味深い点がありました。これから数回にわたり、この地ならではの魅力について紹介します。
●台湾屈指の自然が残る宜蘭県
「Iiha formosa(麗しき島)!」
大航海時代まっただ中の16世紀半ば、偶然、台湾島を発見したポルトガル人はそう感嘆の声をあげたそうです。大海原で、思いがけず視界に飛び込んできた島影――そこには生命力に満ちた深い緑が生い茂り、船乗りたちの心を一瞬にして奪うほど神秘的な光景だったといいます。
それから500年近くを経た現在、台湾はなおも国土の3分の2を山野で覆われ、往時と変わらぬ優美な姿を保ち続けています。とりわけ、自然に恵まれた場所にあげられるのが宜蘭県。日本人旅行者にとってはあまり耳慣れない地名かもしれませんが、実はさまざまなネイチャー体験ができることから、近年ローカルたちの間で脚光を浴びているところなのです。
<台北からわずか1時間! 勇壮な山並みや太平洋のパノラマが壮観>
台湾北東部に位置する宜蘭県は、三方を標高2000〜3500m級の山々に囲まれ、裾野には蘭陽平原が広がる自然の宝庫。唯一、太平洋に面した東部エリアは東北角・宜蘭海岸国家風景区に属し、変化に富んだ海岸線や水鳥の保護区が連なっています。そのため、農業や観光業が盛ん。また、山々の伏流水が集まる水どころとして有名なほか、県名の由来にもなった噶瑪蘭(クバラン)族という原住民の居住地だったことでも知られています。
このようにのどかな環境にありながら、首都・台北からは北宜高速道路を通り、バスで約1時間の至便さ。同高速道路上にある全長12.9km、台湾最長を誇る道路トンネル「雪山隧道」を抜けると、そこはもう宜蘭県の北側の玄関口・頭城(トウチェン)です。
北宜高速道路から眺める蘭陽平原。奥に亀山島を望む
●宜蘭観光のスタートは、「頭城レジャーファーム」から
蘭陽平原の中で最初に開墾された頭城は、北西に連なる雪山山脈を背景に、東に太平洋を望む美観に富んだ場所。この景観と澄んだ空気を満喫するなら、まずは「頭城休閒農場(頭城レジャーファーム)」を訪れるのがいいでしょう。
この農場の広さは、およそ110ヘクタール、東京ドーム約24個分にも及びます。山間に広がる地形を生かし、必要以上に人の手を入れないようにしているため、敷地の大半を占めるのが原生林。本来の生態系が維持されていることにより、ホタルやチョウといった昆虫の生態観察やバードウォッチングを楽しめるほか、さまざまな野生の動植物に出合うことができます。
台湾の国鳥「台湾青鵲(ヤマムスメ)」や黄金色のサナギが特徴的なオオゴマダラの姿も
(画像提供:頭城レジャーファーム)
なかでも印象的なのは、「大白斑蝶(オオゴマダラ)」というチョウのサナギです。「世界一美しいサナギ」と称され、その姿は煌びやかに輝く黄金色。サナギとは思えぬ色彩は目を見張るほど艶やかで、神々しさすら感じさせます。このチョウは園内の飼育棚で一年を通して繁殖を繰り返しているため、運がよければお目にかかれる可能性も。ぜひ、一度覗いてみてください。
一方、園内には、農業体験や森林浴を楽しみながらの渓流トレッキング(要予約)、竹細工作りなど四季折々の植物を使ったDIY(手作り体験)企画ほか、参加型のプログラムも盛りだくさん。おすすめのプログラムを滞在日数に応じて組み合わせたパッケージプランも用意されています(大人・日帰り1200元〜)。さらに、清水を利用したワイナリーやレストラン、約500名を収容可能な宿泊施設も備えており、のんびりと休暇を過ごすのに最適です。
Tシャツを木の葉で染めるDIY企画が人気(画像提供:頭城レジャーファーム)
酒蔵では見学や試飲が可能。オリジナル酒の購入は、レストラン1階の売店で
<原風景に抱かれ、ロハス生活を満喫>
農場のオープンは36年前に遡りますが、実はここ、元々はオーナーの卓陳明(ヂュオチェンミン)さんこと「卓ママ」の別荘があった場所。長年、田舎暮らしを夢見ていた彼女は、雄大な山々に囲まれ、自分で育てたお米や野菜のおいしさを噛みしめたり、周囲の植物を使ってさまざまな遊び道具を作ったり、そんな自然と寄り添う生活に憧れていたといいます。ここで願いを叶え、喜びでいっぱいの生活を送るようになった卓ママ。やがて、その幸せな気持ちをたくさんの人と分かち合いたいと思うようになり、観光農場を始めたそう。
田畑のほか、50年前の農家も再現。「キュウリがこんなに立派に育ったわ」と卓ママ
(左の写真 画像提供:頭城レジャーファーム)
それゆえ、ここには卓ママが趣向を凝らした自然体験プロムラムが充実。主となる農村体験エリアでは、肥料作りから収穫までを一貫して行う循環型農業を実践しており、来園者は田植えや稲刈り、昔ながらの農機を使っての脱穀作業を体験できるほか、家畜と触れあったり、堆肥作りのノウハウを学んだりと、多彩な農業アクティビティに挑戦できます。さらに、収穫した米から手作業でライスミルクを作る実習もできるなど、農村のレトロな暮らしぶりを知りながら自給自足の生活を楽しめます。
農作業用の服の貸し出しもあり。牛の顔を間近に餌をやる子どもたちの姿も
(中央の写真2枚 画像提供:頭城レジャーファーム)
<摘みたての新鮮野菜が美味!>
数あるプランのなかでも特におすすめなのが、菜園や果樹園での収穫体験です。栽培しているのは、宜蘭名産の空芯菜や南国フルーツのレンブーといった当地ならではものから、オクラやカボチャなど日本でもおなじみの野菜まで30〜40種類。なかには、抗炎症作用があるとされる「白鳳菜(タカサゴサンシチソウ)」や腫物の症状緩和などに効く「烏面馬(セイロンマツリ)ほかの台湾ハーブもあります。収穫後は希望すれば、園内のレストランで調理してもらうこともできますが、摘みたての旬の食材はどれも滋味に溢れ、風味豊か。サッと炒めてもらうだけでも、味わい深いごちそうです。
収穫したての無農薬野菜は瑞々しい! パパイヤの実もたわわ
(左の写真 画像提供:頭城レジャーファーム)
また、このレストランでは、普段は創作フレンチを提供しています。園内産の野菜や地鶏、近隣の漁港で水揚げされた魚介など、地元の食材をふんだんに使った品々を味わえるため、食事のみを目当てに訪れる人も多いそう。ワインやキンカン酒、梅酒に米酒ほか、併設のワイナリー産の美酒も揃うので、ぜひあわせて楽しみたいところです。加えて、窓外には見渡す限り広がる木々や野鳥の鳴き声によるBGM......緩やかな時間の流れに身も心も洗われ、大自然ならではの醍醐味を満喫できることでしょう。
レストランはマイナスイオンたっぷりのテラス席がおすすめ
対して、セルフ調理派向けにはバーベキュー施設があり、掘りたてのサツマイモを焼きイモにしたり、窯焼きピザやジャムを作ったりできるプログラムもあります。米を挽くところから始める団子作りやキンカンの漬け方教室(宿泊者対象)は、台湾伝統の"おふくろの味"を学べる絶好の機会といえるでしょう。
(画像提供:頭城レジャーファーム)
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<最後に......>
美食の国として、名高い台湾。旅行の際は、小籠包や牛肉麺、マンゴーかき氷と、街中でグルメ探索をする人も多いのではないでしょうか? それも台湾の楽しみ方のひとつですが、地元産の新鮮な食材やピュアな空気を味わってみるのも一考です。今回、訪れた頭城は、台湾人がいつか住んでみたいと憧れる理想郷。旅行者でもこの農場を訪れれば、自然の息づかいを感じながらノスタルジックな体験をすることができます。スローライフを堪能し、心癒す穏やかな時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
次回は、同じく頭城のシーサイドエリアへ。森林エリアとは、またひと味違った魅力を紹介します。
●Information
<台北から頭城へのアクセス>
・バス
MRT(淡水信義線)圓山駅から國光客運バスの1877番・烏石港(頭城)行きで約1時間10分、頭城下車。
110元、1時間に1〜2本(バス停「頭城」から台鉄頭城駅へは徒歩約5分)
・電車
台鉄台北駅から自強号の花蓮または台東行きなどで約1時間〜1時間30分、頭城駅下車。
184元、30分〜2時間30分に1本
<頭城レジャーファーム>
http://www.tcfarm.com.tw/jp
<宜蘭県政府「宜蘭軽旅行」>
http://event.suntravel.com.tw/201505_yilan
<宜蘭県施設ご優待キャンペーン>
チャイナ エアラインでは、宜蘭県政府と共同で「green Yilan truly Taiwan」プロモーションを実施中。チャイナエアラインの搭乗券を提示すると、宜蘭県内にある80以上の対象施設で優待特典を受けられます。11月30日まで。
http://www.china-airlines.co.jp/campaign/yilan/index.html
(取材・執筆/田喜知 久美、写真協力/頭城レジャーファーム)