それはひとつの卵から始まりました。転勤でバンコクにやってきたインド人シェフのDeepanker Khosla(ディーパンカー・コースラ=通称DK)さんは卵が大量生産される現場を訪れて衝撃を受けました。
▲明るくてポジティブなオーラに溢れている
「Haoma(ハオマ)」オーナーシェフ
Deepanker Khosla(ディーパンカー・コースラ)さん
経済的に豊かではない人々の暮らしを支えるために安価な大量生産品が必要なことはわかっている。けれども健康的につくられていない食べ物を食べる人は健康で幸せになれるのだろうか。それなら健康的なものをみんながシェアできるように、人々の意識が変わればよいのではないだろうか。
▲ファームでは鶏や山羊を育て、季節の植物を摘み、
器まですべて自然に還せる。喉を潤すココナッツウォーター
そこでDKさんは、当時勤務していたラグジュアリーホテルにさっそく鶏の飼育と自家菜園づくりを提案します。大企業の資本があり、多くの人が訪れるホテルなら情報の拡散も早いと考えたからです。もちろん上司の答えはノー。ここからのDKさんの行動がまたおもしろい。さっさとホテルに辞表を叩きつけ、自分が理想とするサステナビリティを実現する小さなフードトラックをつくり、そこで寝泊まりしながら東南アジアの生産者を訪れる旅をして、自身のレストランとファームを開業する資金を集めたのです。
▲ディナーで一番印象的だった涙豆とレンズ豆のケーキ仕立て。
スパイスをしっかり効かせて
DKさんの情熱をすべて注ぎ込んでつくりあげたレストラン「Haoma(ハオマ)」は、バンコク初のサステナブルなファインダイニングとして、瞬く間に世界の関心を集めました。2024年版「アジアの50ベストレストラン」(*関連記事はこちら https://www.tabikoi.com/eto61/)では90位にランクインして「サステナブルレストラン賞」を受賞。先駆けて2021年の「世界の50ベストレストラン」では「Champions of Change賞」を受賞。2024年の「ミシュランガイド」でも一つ星とグリーンスターに選ばれています。
▲エントランスからハーブガーデンをぐるりと回って
ダイニングに入るゆったりと贅沢な空間
スクンビットの中心にあるそのダイニングはハーブガーデンに囲まれ、Haomaが取り組む環境活動を紹介するコーナーや雨水を貯めてろ過する貯水槽(ティラピアなど菜園の近くの川魚を休ませています)も。ちょっとアジア版「Azurmendi」(*関連記事はこちら https://www.tabikoi.com/eto60/)みたい。
「そう!Azurmendiは僕の理想を実現している永遠の目標です。え、Mirazur(*関連記事はこちら https://www.tabikoi.com/eto50/)も好きなの? ファームはMirazurをお手本にパーマカルチャーにしています。やっぱりなぁ、日本人なら僕のやりたいことをわかってくれると思ったんだ!」と大興奮するDKさん。日本にもあるよ、そういうレストラン。こことかね。
▲「少しでも人々の注目を集めて僕たちの取り組みに関心を
持ってもらうためには何でもやりたい」とDKさん。
日本では見ないエンターテインメントな演出も楽しい。
コラボにも積極的に取り組んでいる
…とここから先は、ぜひバンコクを旅して本人からお話を聞いてください。バンコク市内から車で1時間弱のオーガニックファームを訪れるツアーは、日程さえ合えば誰でも参加できます(要予約)。ときにはDKさんの小さな子どもたちも同行することも。ぜひファームとダイニングのセットで「Haoma」の世界を堪能してください。
旅が大好きというDKさんは、「旅恋=旅に恋するっていい名前だね!」とお気に入りに。旅好きなみなさんなら、きっと楽しい時間を過ごせるはずです。
Haoma https://www.haoma.dk
*公式サイトから予約できます(英語)。
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます。