世界のファインダイニング by 江藤詩文

第51回 たどり着いたのは地中海の港町、料理が語る世界のカルチャー「AM par Alexandre Mazzia アーエム パー アレクサンドル マッツィア」(フランス)

地中海に面した港町マルセイユ。ここに今世界のフーディーズの注目を集めている「AM par Alexandre Mazzia アーエム パー アレクサンドル マッツィア」(以下AM)があります。2021年に「ミシュランガイド」三つ星に昇格。2022年「世界のベストレストラン50」では80位にランクインすると共に「ワン to ウォッチ」賞を受賞するなど、今世界でもっとも勢いのあるレストランのひとつです。

     ▲美しく手の込んだ完成度の高い料理が小さなポーションで続きます

なぜオーナーシェフのアレクサンドルさんの料理を目指して人々が集まるのか。フランス人のアレクサンドルさんはアフリカのコンゴで生まれ、ティーンエイジャーになるまで海沿いの街で育ちました。少年時代の味覚のベースをつくったのは、フレーバーが多彩に重なるアフリカ料理と彼のルーツであるフランス料理、とりわけ地中海料理とか。そこに経験を積んだスペインやインスピレーションを得たアジア、日本といった個人的な経験を織り込むことで、まるでアレクサンドルさんの半生を味わうような料理がつくりだされます。

▲オーナーシェフのアレクサンドルさん。突然入ったのにキッチンも美しい

▲地中海らしくエディブルフラワーやハーブがふんだんに

いま世界のフードシーンは何料理より誰料理、つまり料理をジャンルで分類するより誰がつくるかが重視されています。また、アジアや南米といった地域の食文化が見い出され、さらに中東やアフリカへと視点は広がっています。つまりアフリカのテイストを体得していて豊かな文化的背景を持ち、ジャンルを超えた”アレクサンドル料理”をつくるアレクサンドルさんは、まさに時代にぴったりというわけ。

大陸を超えて海のように広がり、それが収束したかのような料理は旅好きにはたまらない味。まだ見ぬコンゴへと思いが募ります。

    ▲料理だけでなく器も日本の影響を受けたものがたくさん。斬新な解釈が楽しい

▲カウンター席とテーブル席がありますがライブ感あるカウンター席が断然おすすめ

ちなみに、地中海沿いの街はローカル線やバスで結ばれていて、個人旅行でも公共交通機関を使って移動できます。AM(マルセイユ)を出発してLe Louis XV ルイ・キャーンズ(モナコ)、そしてMirazur ミラズール(マントン)へとミシュラン三つ星3店をめぐる夢のようなツアーが実現できるのです。

私的には逆回り(ミラズール発)にせず、超イノベーティブなAMでアガり、グランメゾンのルイ・キャーンズで落ち着き、ミラズールで癒される流れを推したい。

この夏はひさしぶりに海外旅行へ出かけるという方も多いですよね。ひとくちに「三つ星」とはいえまったく個性が異なるこの3店。フランス料理の多様性と底力を体感できます。めちゃくちゃ贅沢ではありますが”きよみず”でトライしてはいかがですか。絶対に満足しますから。

AM par Alexandre Mazzia アーエム パー アレクサンドル マッツィア

https://www.alexandre-mazzia.com

*公式サイトから予約できます
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ