世界のファインダイニング by 江藤詩文

第49回 え、これってシンガポール版「傳」? シンガポール人シェフが手がける”みんなが楽しい”新感覚シンガポール料理「Labyrinth(ラビリンス)」(シンガポール)

サテにチリクラブ、バクテー、ハイナンチキン、アイスカチャンにコピティウムのカヤ…。シンガポールに行ったことのある人ならニヤリとしちゃうこの羅列。“定番のストリートフードリスト”ではありません。これシンガポールが誇るミシュラン一つ星・2023年「アジアのベストレストラン50」11位(おまけにハイエストクライマー賞も)のファインダイニング「Labyrinth(ラビリンス)」のメニューなんです。

       今っぽくクロスのない店内。ペアリングのセンスもいい。© Labyrinth

ラビリンスを率いるのは中国・海南島をルーツに持つシンガポール人シェフ、Han Li Guang(愛称はLG)さん。シンガポールはアジアのハブ的存在で国外のツーリストも多く訪れ、多国籍国家でさまざまなカルチャーをミックスした独自の食文化が育まれ、世界的に名を知られるたくさんのレストランがあります。それなのに「シンガポール料理って何?」という国外のお客様に「これがシンガポール料理です」とお伝えするショーケースがないことをとても残念に思っていたそう。

ウソでしょ、これがLGさん流”美しすぎる”チリクラブ。奥には小指の先くらいのマントウまで。

こちらはエビのスープヌードルの再構築。ストリート感ギリギリを狙ってます。© Labyrinth

「だったら自分ががんばってみよう。地元のお客様には”シンガポール料理ってすばらしい”と自国の食を誇りに思ってもらえるような、国外のお客様には”シンガポールにはこんな食文化があり、おいしくて楽しいんだ”と思ってもらえるようなメニューを真摯に考案しました。おもてなしも含めて”おいしくて楽しい”を最優先にしようとチームの意識を共有しています」とLGさん。
これって傳が開店当初から15年間守り続けてきた信念とも共通するような…。この15年における日本料理の世界的な地位向上と傳の成功はご存じの通りです。がんばれ、LGさん。

自分が何者かを語る料理が組み込まれているのも今っぽい。
ポテトを包むアルミホイルも炎がゆらめくキャンドルもすべて食べられます

     みなさまも大好きな「フロリレージュ」川手寛康さんと東京で撮影

「アジアのベストレストラン50」アワード開催では「川手さんの力をお借りしてコラボレーションできたことがすごく嬉しかった」と感無量な様子で感動いっぱいに語ってくれたLGさんは大の親日家。フレンドリーなおもてなしが温かい。

シンガポール料理をまったく知らなくてもくつろいで楽しめるので、シンガポールに旅をしたらぜひ足を運んでみてください。「シンガポール料理ってこんなに洗練されたガストロノミーになり得るのか」ときっと驚くはずですから!

Labyrinth(ラビリンス)https://www.restaurantlabyrinth.com

*公式サイトから予約できます
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます

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