この秋はアジアからのお客様が爆発的にやって来て、海外に行く人も増えましたね。
私はスペインに行ってきました。
アートとガストロノミーの都バルセロナのフードシーンは改めてご報告するとして。私の愛する東京だって負けていません。今回は、2022年にオープンしたもっとも注目したいダイニングをご紹介します。
(ナイン バイ ラ シームのテーマのひとつは“香り”)
「La Cimeがお江戸にやって来たら?」
読者のみなさまなら「ふふっ」てなりそうなコンセプトを携えて7月にオープンした「NINE by La Cime ナイン バイ ラ シーム」。「丸の内テラス」9・10階の2層で構成された「THE UPPER ジ アッパー」9階の”静寂”をテーマにしたレストランフロア。
店名から明らかなように、パートナーシェフは、みなさまおなじみ「La Cime ラ シーム」の高田裕介さんです。
(ルバーブに鯉、ドロメまでもが美しいプレゼンテーションに)
「わぁ、ラ シームのブータンドッグだぁ」と歓声を上げかけたら「そんなわけないでしょ」と高田さん。見た目はそっくり。だけど中身はいつものアレではなく、ナイン バイ ラ シームでシェフを務める徳島亨さんの出身地・福島の郷土の味、鯉をやわらかく煮込んで鳥の軟骨と合わせたもの。つまり食べると別もの。なぜシグネチャーディッシュを共有せず、わざわざ時間と手間をかけて東京オリジナルの味をつくるのかと言えば「その方がおもしろいから」。もうのっけから高田さんらしさ全開です。
(左から、高田さん、徳島さん、料理を食べに来た「オマージュ」荒井昇さん)
メニューを眺めれば、ドロメ(生シラス)にドジョウ、サザエにモズクと、これはフレンチなの?な食材をサラッと羅列しているのも高田さんっぽい。ちなみにドロメは昆布締めにしてパプリカのムースと合わせ、ナスタチウムの花を飾ったプレゼンテーションで、ドジョウはまんまの形を残しながらカカオの香りをまとって登場しました。
(プレゼンテーションも変幻自在。だけど芯はしっかりフレンチです)
高田さんの世界は、細部まで手数をかけてつくり込んだフェミニンなニュアンスの繊細な料理と、素材そのままを大胆に提示するプリミティブな味が、交互といえるほどの規則性もなく、高田さんの脳内でしか組み立てられない奇想天外なリズムで展開していきます。これを東京で体験できるなんて。
(photo / NINE by La Cime)
東京・丸の内とアクセスは抜群。13テーブルに個室1室とスペースが大きい分、満席続きのラ シームと比べると予約も取りやすい。もしこのクオリティの料理を、この規模で徳島さんが出し続けることができるなら、ひょっとしたらひょっとするかも。調査員さん、どうぞお見逃しなく。
そんな期待を込めてこの先の進化に注目しています。
NINE by La Cime ナイン バイ ラ シーム
https://the-upper.jp/nine_by_lacime/
※公式サイトから予約サイト経由で予約できます
※記事内はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます