世界のファインダイニング by 江藤詩文

第4回 日本をもっと好きになる「日本料理 傅」(東京・神宮前)–後編-

2019年5月、香港の創作広東料理店「The Chairman(ザ・チェアマン)」
(2020年版「アジアのベストレストラン」2位)のチームが来日して
傳でコラボイベントを開催しました

前編で、日本料理にあまり明るくない初心者や外国人でも全力でおもてなししてくれる“日本一やさしい”日本料理店とお伝えした「日本料理 傳」。

日本文化への道案内であると同時に、もうひとつ果たしているのが、日本人に向けての「外国の食文化の翻訳ガイド」という役割です。

ザ・チェアマンとのコラボイベントには、
香港のほか中国本土からも料理人が駆けつけました。
本場の味を限りなく尊重しながら、
日本人にも親しみやすく紹介するのが長谷川さんの真骨頂

食に関心がある人にとって、外国の食文化はとても興味深く、また、一般的に日本人は新しい味覚に寛容で、比較的受け入れやすいと言われています。一方で食べ物は生命にも直結するため、人間には、これまでまったく食べたことのない味やにおいを警戒するという本能もあるそうです。

日本の食材や包丁をはじめとする調理器具の品質の高さは世界的に有名。
日本の食材を調理したいという著名なシェフも多いのです。
ザ・チェアマンは日本の最高品質のクエを調理

日本人があまり食べ慣れていない味覚を、日本人の目線に寄り添って、日本人がもっとも親しんでいる和食の技法や味覚を加えることで、わかりやすく書き換える。傳が積極的に開催している外国人シェフとのコラボレーションイベントでは、日本を知ったうえで海外のシェフたちと交流し、世界の食文化に精通している店主・長谷川さんにしかできない創意工夫が溢れています。 

2019年1月、ペルーの「Central(セントラル)」
(2019年版「世界のベストレストラン」6位)」とコラボレーションイベントを開催。
乾燥させたリャマの心臓などめずらしい食材が登場しました

旅行会社でいうと、インバウンドとアウトバウンドそれぞれの経験が生かされて、両輪としてがっちり回っている感じ。海外だけでなく国内にもきめ細やかなネットワークを構築し、食材を供給する生産者やうつわ作家まで、日頃から大切に光を当ててきました。そんな傳をベースとして緩やかなチームが形成されているので、いざ何かが起こってもしなやかに対応できる。ひとりが牽引するのではない柔軟性のあるチームの強さを、今年は特に感じています。

地球の反対側から持ち込まれたアマゾンやアンデスの食材は、
ほとんどのゲストが初めての出合いであり、とても難易度の高いコラボに。
スーパーフードのキヌアに出汁を含ませるなど、長谷川さんの技法が光りました

日本料理っておもしろい。日本文化ってすごい。そんな日本の魅力を再発見できる傳の料理とおもてなし。残念ながら、予約はものすごーく困難ですが(わたしも困ってます)、会員制や紹介制といった一見さんお断りの店ではないので、予約さえできれば楽しい時間を過ごせることは確実です。

トライする価値はあると思うので、よろしければぜひ。

日本人も外国人も見覚えのあるファストフード店をモチーフにしたボックス。
中にはシグネチャーメニューのDENタッキーフライドチキンが入っています。
こんな遊び心も傳のスタイル

「日本料理 傅」https://www.jimbochoden.com

予約は平日12時〜17時に2ヶ月先の同日分まで電話で受け付けています。詳しくは公式ウェブサイトのRESERVATIONに記載された案内を参照してください。

 

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ