トゥレプ、シケレぺ、クッチ、キトピロ…???
みなさんご存じの通り、人並みよりはまぁまぁレストランに行っていると思うんです、わたし。オユコだってクシュロだってちゃんと知ってる。それなのにナンナノダコレハ。
すると今度は専門の衛生検査機関で「これは食べられます」と保証された書類がやってきました。ん? エゾイソツツジの蒸留水? レストラン通いの人生もだいぶ長いですが、ファインダイニングのテーブルで検査表を見るなんてはじめてです。
(検査表とともにやってきたエゾイソツツジとクロエゾマツを使った
森の香りのマッシュルームのスープ)
種明かしをすると、呪文のような単語は食材の名前で、これらはすべて北海道の先住民族であるアイヌの人たちが食べていたもの。北海道は、スターシェフたちがこぞって食材を欲しがるくらい野菜も肉も魚介も恵まれた土地。けれどもそれ以外に、アイヌの人たちが受け継いできた森の味覚がある、とTAKAO(タカオ)オーナーシェフ・高尾僚将(ともゆき)さんは言います。
(TAKAOオーナーシェフ・高尾僚将さん。
高枝に木の実を、暗闇でエゾジカを見つける“森の眼”の持ち主)
「アイヌの方たちの知恵から現代の僕たちが学ぶべきことはたくさんあります。が、そういった知識は文献などにまとめられておらず、口で伝えられているため、いま教わらなければ近いうちに消えてしまうんです」
アイヌの人たちと山や森に入り、自然を食べる術を教わりましたが、そこで出合った食材は、プロの料理人でもはじめて手にするものばかり。
「そもそもこれって現代人が食べてもだいじょうぶかなって、検査機関に協力をお願いしました(笑)」
こうして無事(笑)認められた食材を使い、伝統的なアイヌ料理ではなく、モダンなガストロノミーに再構築したのが、高尾さんのすごいところ。もともとイタリアンをベースに、きちんと修業を積み経験を重ねてきただけあって、これだけ奇を衒ったようなプレゼンテーションをしながら、料理がファインダイニングのクオリティでちゃんととってもすごくおいしい。
すっかり世に溢れた再構築料理ですが、ここまで有意義に取り入れているのはめずらしいかと。
(アサ科イラクサ目のセイヨウカラハナソウやミカン科のカラチカマニのパウダーを
まとわせた鳥ひき肉)
(山ぶどうを発酵させた液体酵素で煮込んだ北斗市の和牛。自分で採取したヤマドリダケを添えて)
2020年にはアイヌ文化を伝える「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がオープンするなど、今こそ守りたいアイヌの世界。その第一歩をおいしく楽しく始められるTAKAO。ガストロノミーファンならぜひ一度訪れてみてください。
(鮮やかなレモンイエローのキハダの木。
香りのいい実はチョコレートに練り込まれミニャルディーズとして登場)
TAKAO(タカオ)
TEL 011-618-2217 予約は電話またはぐるなび経由で問い合わせを
* 料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます