世界のファインダイニング by 江藤詩文

第33回 郷愁を感じる田園の風景とゆっくり流れる穏やかな時間に癒される 「MAISON LAFITE(メゾンラフィット)」(福岡県・那珂川市)


レストランの予約が取れてから交通や宿を手配する。そんな旅のスタイルもすっかり定着してきました。各地方には“デスティネーション・レストラン”、つまり旅の目的地となるファインダイニングが増え(というより発掘され)、「岩出」とか「利賀村」とか、地名がそのままレストランを示す共通言語となることも。

(まるでデザートみたいな美しいプレゼンテーションのクエ(魚!))

ここ「メゾンラフィット」も、公共交通機関では行くことができない“不便な”ファインダイニングのひとつ。博多駅から博多南駅までひと駅だけ新幹線に乗り(約7分)、その先はタクシーを利用するしかない(約15分)。だけど。この道のりがさらに旅気分を演出してくれるのかもしれないな、なんて思います。


(春から夏にかけては緑豊かな水田が広がっています)

大きく窓をとった明るい店内から一望できるのは、故郷のないわたしでも「おばあちゃんの家に来たみたい」と思ってしまうのどかな田園風景。脊振山を水源に博多湾へと那珂川が流れるこの地域は水質がよく、お店でも地下水を汲み上げて料理に使っています。

(オーナーシェフ・工藤健さん)

清らかな水と空気。ほのぼのとした風景。それにぴったりなのが、オーナーシェフの工藤健さんを中心にキッチンとホール、地元っ子3人だけの小さなチームが醸し出す空気感です。1日2組だけのテーブルで、仲のよさそうな3人が、静かに談笑しながらサービスするシーンを眺めているだけで癒されます。


(綺麗な水でとったスープが主役のスッポンの焼きポレンタ)

以前は「フランスでの修業時代に経験した、ヨーロッパの最先端の料理を地元の人たちに伝えたい」と、革新的な分子ガストロノミーを追求していた工藤さん。それがいつしか「生まれ育った那珂川の風景に調和する、この土地だからこそつくれるほんとうにおいしい料理」へと変わっていったとか。気負いのないやわらかさは、そのまま料理にも反映されています。

(大分・耶馬溪の鹿肉のロースト 庭になった栗を添えて)

博多のにぎわいとは別世界の静けさを楽しめる那珂川への半日トリップ。景色を堪能できるランチタイムにぜひどうぞ。

MAISON LAFITE(メゾンラフィット)
http://maisonlafite.web.fc2.com

予約方法は公式サイトで案内しています
* 料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます

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