ミニヨンズ現る―。「もしかして、ふざけてる?」とも思わせるネーミングのアミューズと共にサーブされたのは、キラキラ輝くアンリオのミレジメ2006。インスタ映えを狙ったようなプレゼンテーションのそれは、だけどよく見るとひと口サイズの中にとんでもない数の食材が使われ、丁寧な仕事がされていて、薦められた順番通りに口に運ぶと、それぞれ異なる味わいや食感がなめらかなグラデーションを描き出し、アンリオのきめ細やかな泡と引き立て合います。
(ミニヨンズ現る)
このお店、ちょっととんでもないかも。その予感は大当たり。期待を大きく上回って裏切られると嬉しいですよね。たとえばシグネチャーメニューのひとつ「銀座」。コクのあるジャージー牛のクリームに銀箔を敷き、ラトビア産のキャビアを30g以上もた〜っぷりとのせたそれは、けして豪華さや話題性を狙ったわけではなく、キャビアをもっともおいしく食べるために、あらゆる可能性を試したシェフの上野宗士さんが、最終的に導き出した現在のベストアンサー。味に自信があるから、ブレずにこのスタイルでサーブしています。
(黒雪(凍らせた黒トリュフをかけたトリュフアイスクリーム))
同じく高級食材の黒トリュフは、マイナス20℃まで凍らせて、食べる直前にゲストの前ですりおろします。口の中で、氷の世界から体温までトリュフの温度が50℃近くも上昇することで、閉じ込められていた香りと風味が一気に花開く。これも味を最優先して考案したプレゼンテーションです。
そうかと思えばフォアグラは、姿かたちの見えないムース状にして、りんごの香りのエスプーマで覆ってしまいました。こってりとリッチなフォアグラを、ここまで軽くさわやかに食べさせる。これも料理としての完成度を追求したものです。
(完熟な未熟者(フォアグラのムース))
料理と共に楽しむペアリングのワインがこれまたエキサイティング。一般的に、ワインは料理を引き立てるために選ばれることも多いのですが、ここでは料理とワインがどちらも主役のツートップ体制。グランヴァンからマイナーな生産者のワインまで、ソムリエの有馬純平さんが「惚れ込んだ」という上野さんの料理に引けをとらないラインナップが揃っています。
(この日のワインペアリング。ため息がこぼれるラインナップです)
ここは言ってみれば、日頃からフランス料理とワインに親しんでいて、その価値をよくわかっている大人のゲストを楽しませるために、上野さん&有馬さんが遊びゴコロを発揮しているレストラン。食べ手にも知識と経験があるとより楽しめるとは、なんて銀座らしいのでしょう。
(シェフの上野宗士さん(左)とソムリエでレストランディレクターの有馬純平さん)
体質や健康面、考え方などさまざまな人がいますし、私自身は、自分はさておき飲酒を必ずしも勧めるわけではありませんが、ここはワインを飲めないとちょっともったいない。料理とワインに貪欲で好奇心旺盛な、とっておきのお相手とぜひどうぞ。
(データ)
Le Signe(ル・シーニュ)https://lesigne-ginza.jp/ja/
公式サイトから予約サイト経由で予約できます
- 料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます