飲食業界が大変な事態に追い込まれてからもう1年半。そんな逆境の中でも、ニューオープンの夢を叶えたり、新しい目標に果敢にチャレンジしたりする、頼もしい料理人たちがいます。そんなわけで今月は、私が勝手に応援したいニューフェイスが活躍する注目の2軒をピックアップ。
(玉蜀黍のピュレ 竹炭のチュイル、牛タンのクロケット、烏賊のタルタル)
最初にご紹介するのは、2021年4月に人形町にオープンしたばかりの「ars(アルス)」。時節柄もあって、大々的に宣伝したわけでもないのに、おいしいモノ好きの間で機密情報のようにやり取りされ、オープン3ヵ月でひっそりと予約困難店になりました。もうチェック済みという人は、かなり情報ツウかも。
(熱々のパテドカンパーニュをサンドしたチーズベーグル)
まずコンセプトがとてもユニーク。4席のみのカウンターのプラチナシートで味わえるのは、若きオーナーシェフ・高木和也さん(トップ写真)がこれまで積み重ねた知識と経験の集大成といえる、技術の粋を凝らしたモダンフレンチのフルコース。イノベーティブ系ファインダイニングが大好きな人(私だわ)が、わくわくするようなクリエイティブな料理が、目の前のオープンキッチンで次々と創り出されます。
(シグネチャーメニューのパイ包み焼き。この日はオマール海老とホタテ)
一方テーブル席で楽しめるのは、5500円からとお手頃価格なプリフィクスコースとアラカルト。鴨のコンフィやブフ ブルギニヨンといったクラシックなメニューから、締めにはカレーやドリアまで、という気取りのないラインナップ。これなら「フレンチは苦手」という食わず嫌い系(特にオールドジェネレーションの男性に多めですよね)も思わずそそられるはずです。
(フォアグラ パンデピスのメレンゲ 山形産さくらんぼ)
高木さんは、「今も尊敬しています」という「レストラン ラ フィネス」の杉本敬三さんに師事したほか、ビストロからファインダイニングまで幅広く経験してきました。そのキャリアを生かして「食通だけでなく、どんな人にも楽しんでもらえるお店をつくりたかった」とか。
(ワインも充実しているのでお酒を飲めるようになったらペアリングもぜひ)
折りしも23歳の女の子から、人生初のフランス料理を食べてみたいと相談を受けたばかり。いつかは木村拓哉のドラマのようなグランメゾンに行ってみたいけれど、その前にフレンチに慣れておきたいそうな。快活なおもてなしも心地いい高木さんなら、きっと彼女のデビュー戦を素敵に演出してくれるはず。
ひとりでも多くの人が、レストランの楽しさを知り、末永くファンになってくれたらいいな。そう願ってarsに彼女を送り込むつもりです。
(データ)
ars(アルス)
https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130204/13256919/ 食べログからオンライン予約できます
*料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます