「沖縄って、ユニークな食材や郷土料理を味わえる、カジュアルなお店が多いよね」。アジアのフーディーズが持っていた、そんなイメージをひっくり返すできごとが起こりました。2019年7月、ハワイの名門ホテル「ハレクラニ」の世界唯一の姉妹ホテルとして「ハレクラニ沖縄」がオープン。そのメインダイニングに「SHIROUX(シルー)」が登場したのです。
沖縄のフーチバー(琉球ヨモギ)、ゴーヤー、カーブチー(柑橘)を使ったアミューズは、
見た目もこの美しさ
メニューを手がけるのは、「Florilege(フロリレージュ)」オーナーシェフの川手寛康さん。日本を代表するスターシェフとして各国から訪問を請われ、ヨーロッパ最先端のファインダイニングから南米アマゾンのジャングルまで世界各地を飛び回り、知られざる多くの食材や食文化に触れ、世界のトップシェフたちと知識や技術を交換してきました。そんな圧倒的な経験をバックグラウンドに、沖縄の食材や料理を丁寧にひも解き、世界最先端のひと皿へと再構築しています。
2021年3月から始まった新メニューの最終試食会。世界的なシェフの技術を間近で見られる機会とあって、厨房は熱気に満ちていました。ペアリングのカクテルもすべて川手さん自身が味を確認しています
たとえば前菜のひとつ、イラブー(ウミヘビ)。沖縄では滋養強壮にいいと言われて、汁ものとして食べるのが一般的です。ヘビと聞いただけで抵抗を感じる人もいるでしょうし、わざわざファインダイニングで提供しなくてもよさそうなものですが、川手さんはこともなげに言いました。「イラブーは沖縄の食文化の大切な一部ですし、食材としてもポテンシャルが高いんです」。
スープ仕立てのイラブーに添えられたのは、黒糖のチュイルでサンドしたブーダンノワール。
何なのこの組み合わせ、天才。料理に合わせて考案されたカクテルペアリングも美味
うま味と食感を感じられる程度の大きさにほぐしたイラブーは、沖縄の葉野菜シロナー(山東菜)に包まれて現れました。中にはしいたけや豚足のほか、シロナーのぬか漬けが混ぜ込まれ、ふたつの異なるシロナーの味わいをひと口で楽しめるように構成されています。最後に薄切りの黒トリュフをトッピングして、トリュフのうま味が全体に行き渡るように上から熱々のイラブーの出汁をかけるスープ仕立てに。つまり郷土料理「イラブー汁」へのオマージュになっているわけです。
唐揚げや煮付けで食べることが多いグルクンは、
マリネして身を引き締めることで南国の魚らしいテクスチャーを格上げして、
やわらかなフルーツの酸味で白身魚の繊細さを引き出しています
もうこれは、食材の持ち味を十分に引き出すとかいったレベルをはるかに超越して、沖縄の食文化を別次元に引き上げたガストロノミー。イラブーだけではありません。チャンプルーでおなじみのゴーヤーも、沖縄の県魚グルクンも、庶民的な顔の裏に、実はこんなに研ぎ澄まされた味わいを持っていたなんて。
沖縄で活躍するシェフたちも注目している、「SHIROUX」のクリエイティブな料理の数々。「SHIROUX」の誕生をきっかけに、沖縄のガストロノミー文化はきっとどんどん発展していくはずです。
川手さんから現場を任されたチームSHIROUX。
左から、スーシェフの森本雅之さん、シェフの東慎也さん、ヘッドバーテンダーの滝井薫さん
ハレクラニ沖縄
https://www.okinawa.halekulani.com
公式サイトからオンライン予約できます。