アミューズ「テラリウム」
素敵なダイニングと出合うのに、固定観念は邪魔なだけ。それはわかっていました。だけどここは京都。前回も書いたように京都といえばまず日本料理ですし、街には歴史ある老舗から話題の新店まで、数多くの名店がひしめきあっています。だからつい「ホテル内で食べるなんてもったいない」と、チェックを後回しにしちゃっていたのです。まさかこれほど腕の立つシェフがいるとも知らずに。
シェフの古賀隆稚さんとパティシエールの横田怜子さん。古賀さんは「RED-35」で3度の受賞、「サンペレグリノ ヤングシェフ」でフランス国内のファイナリストに選考されました
フォーシーズンズホテル京都のオールデイダイニング「ブラッスリー」で料理長を務めるのは、フランスで10年の経験を持つ古賀隆稚(りゅうじ)さん。2019年11月に着任したばかりで、まだ35歳という若さながら、前職はフォーシーズンズホテル ジョルジュサンク パリの三ツ星店「ル サンク」で日本人初の副料理長とメニュー開発総責任者を任されていたという実力の持ち主です。
ハウスシャンパーニュはペリエ・ジュエ。「贅沢な空間、経験を積んだサービススタッフ、品質の高い食材やワインの品揃えなど、ラグジュアリーホテルのダイニングだからできる料理をつくりたい」と古賀さん
パリで三ツ星を獲得する熾烈ぶりとその代償に得られる価値の大きさといったら、日本とはちょっと訳が違う。そんな三ツ星店で磨き抜かれたフランスの審美眼を通して発見した日本の美を、料理で表現しています。たとえばトップ画像のアミューズ「テラリウム」。桜ますの燻製や色鮮やかなビーツのジュレ、ふきのとうのスポンジなどを用いて、まるで高さ9メートルの窓から臨む同ホテルの日本庭園「積翠園」の風景をグラスの中に写し取ったかのような世界観を創り上げました。
わたしがもっとも驚いたのは、パン生地で蒸し焼きにしたカリフラワーです。だってカリフラワーですよ。サイドに添えるならともかく、通常であれば主役にすることは考えられないカリフラワーの持ち味を最大限に高めて、香りや旨みを重ねてドレスアップすることで、肉や魚に負けない存在感を放っていました。
完璧に火入れされたカリフラワーは、ニシンのたまごのキャビア、バターミルク、ディルオイルで美しくドレッセされて提供されました
野菜の火入れの巧みさが古賀さんの料理の特徴。アラカルトメニューもありますが、古賀さんワールドをあますところなく味わいたいなら、要事前予約のコース料理をぜひ
そうそう、わたしがフォーシーズンズホテル京都の食ってちょっと侮れないかもと思ったきっかけは、差し入れにいただいた焼き菓子でした。大人気のアフタヌーンティーからテイクアウトできるペストリー、ダイニングのデザートまで手がけているのは、パティシエールの横田怜子さん。シェフとパティシエールが志をひとつにすることで、コースの完成度をさらに高めています。
コース料理の最後を締めくくるデザートとして、余韻を残す軽やかな食べ心地を心がけているという横田さん。五感を大切にする古賀シェフの料理に寄り添う、五感に響くデザートを楽しめます
ステイホームが続くいま、テイクアウトメニューとして、焼き菓子などの販売を始めるレストランも増えてきました。実はつい先日も、いただいた焼き菓子から、とっておきのダイニングを発見したばかり。こんなレストランとの出合いもあるのですね。こちらはまた次の機会でご報告します。
ブラッスリー(フォーシーズンズホテル京都)
https://www.fourseasons.com/jp/kyoto/dining/restaurants/brasserie/
公式サイトから予約サイト経由でオンライン予約できます。