2015年に開業した「星のや富士」。河口湖畔の丘陵に佇む、日本初の本格的グランピングリゾートです。「グランピングって何?」「冬にキャンプって楽しめるの?」「手ぶらでキャンプできるってホント?」など、さまざま疑問を解決すべく、12月上旬、塩見と山本のふたりが宿泊体験してまいりました。
新しいアウトドアのスタイル、グランピングとは?
まずここ数年、日本でもよく聞かれるようになった「グランピング」という言葉。「glamorous(グラマラス)」と「camping(キャンピング)」を掛け合わせた造語で、優雅に、贅沢にアウトドアを楽しむことです。
アウトドアは楽しみたいけど、準備や後片付けが大変と敬遠されている方や、テントやトイレなどの快適でない設備に閉口するという方も多いと思います。そんな方々にぜひ体験してほしいのが、自然の中で高級リゾートのような滞在を楽しめるグランピングなのです。ホテルや旅館に泊まるような気持ちで出かけることができます。
では、具体的にどんな体験ができるのか、星のや富士をご紹介します!
河口湖畔でグランピング体験
星のや富士へは、富士急行線河口湖駅からタクシーで約18分。紅葉も終わった12月だというのに、世界遺産に登録された富士山の影響か、多くの外国人観光客で河口湖駅はにぎわっていました。途中、車窓からは穏やかに揺れる河口湖の湖面を眺めます。この日は天候に恵まれたこともあり、冠雪した美しい富士山の姿も楽しめました。
そうこうしているうちに、タクシーが止まりました。お出迎えのスタッフに促されるままに降りたところは、星のや富士の「レセプション」でした。一見、箱のようなシンプルで黒い建物。館内は天井が高く、壁一面に色とりどりのリュックが掛けられています。ひと息つきながら、ここでゲストは滞在中に使うリュックを選ぶのです。リュックの中にはエリアマップや双眼鏡、ヘッドライトなど七つ道具と呼ばれるグランピングアイテムが入っています。リュックを受け取ると、星のや富士での滞在がいよいよスタートします!
(左下)リュックの中の七つ道具。中身は季節に応じて若干変わります。
(右下)レセプションからフロントへはジープで移動。ジープは黒・白・赤の三色!
レセプションからは星のや富士のジープに乗り、フロントへと移動します。レセプションのある場所と最も標高の高い場所とでは約100mも高低差があり、気温も少し下がります。夏は涼しくて快適そうですね。丘陵の斜面に客室棟、フロントとダイニングのあるメイン棟、アクティビティを楽しむクラウドテラスなどの施設が広がり、その敷地は東京ドームの約1.2倍もあるそうです。
焚き火を囲んで過ごすクラウドテラス
星のや富士に来たら、客室に籠っていてはグランピングの魅力を十分に満喫することができません。ウッドデッキが階層状に広がる、森に囲まれたクラウドテラスへ足を運びましょう。グランピングマスターと呼ばれるスタッフがアウトドア体験を楽しめるようにさまざまな提案や手助けをしてくれます。
ひときわ大きなウッドデッキ「木漏れ日デッキ」には、この季節にはこたつが置かれていました。"アウトドアでこたつ"とは、贅沢な気分です。クラウドテラスのあるエリアには、チェアやハンモック、空中ベンチなどがたくさん配され、森の木々や青い空を眺めて過ごせます。自然の中に身を置くと、知らず知らずのうちに心が緩んでいくようで、本当にリラックスできます。
お好きな場所でのんびりできます。
静かに森を眺めるもよし!おしゃべりするもよし!
そしてクラウドテラスの最上部には焚き火ラウンジがあります。早朝から夜まで火が焚かれ、多くのゲストが集まってくる場所です。マシュマロも用意されているので、焼きマシュマロを楽しむことも。いい焼き色がついて、すこしふんわりと溶けたら、クラッカーに挟んでいただきます。特に私たちが訪れたこの時季は、焚き火に人が集まりやすい季節。初めて会うゲスト同士でも一緒に火を囲んでいると、不思議と会話が弾みます。
少し遠火にして、じっくり焼き色をつけるのがコツ
焚き火ラウンジの隣には、ライブラリーカフェがあり、暖炉の前で読書をしたり、用意された飲み物やお菓子をいただいたり、森の中の静かな時間を過ごせます。
さらにクラウドテラスでは、時間帯によってさまざまな催しが行われています(季節によって内容は変わります)。「森のひととき」(15:00〜16:30)では、ホットチョコレートをご用意。レーズンやラズベリー、オレンジピール、トウガラシ、シナモンなどさまざまなトッピングを加えて楽しむことができます。どんな組み合わせがおいしいか試している間に、身も心も暖まってきます。また、「冬色アペロ」(17:30〜18:30)では、夕食前のアペリティフを楽しみます。この時は風味の異なる2種類の梅酒をホットにして。
(左下・右中下)「冬色アペロ」ではホット梅酒を!チーズやナッツのおつまみも
森らしいアクティブな体験なら「薪割り」(9:00〜9:30、15:30〜16:00)がおすすめです。グランピングマスターから手ほどきを受けて、早速チャレンジ! 足を肩幅より少し広げて立ち、頭の高さの位置から斧の重さを利用して一気に薪に振り下ろします。何回か同じ動作をしているとだんだん要領を得て、薪に当たる手応えが!! うまくパキンっと割れたらとても気持ちいいのです。ぜひお試しください。
うまく割れたら、焚き火に"My薪"をくべてみましょう!
夕食の後にも焚き火BAR(19:30〜22:00/有料)や森の演奏会(21:00〜21:30)、翌朝には「朝霧の森 深呼吸」(8:30〜9:00)など、ゲストを飽きさせないイベントやアクティビティがいっぱいです。
河口湖畔の景色を楽しめるキャビン
アウトドアを楽しむために造られたリゾートなので、客室はとてもコンパクトでミニマムです。キャビンと呼ばれる客室は4タイプ計40室。23室あるスタンダードなツインタイプのほか、キングサイズのダブルベッドのタイプ(9室)、ご家族やグループに適したトリプルタイプ(6室)、テラスに薪ストーブを配したタイプ(2室)があります。
どの客室も河口湖を望む配置で、室内は白を基調としたシンプルで直線的なデザインの空間。キャビンに一歩入ると天井まである大きな窓ガラス越しに河口湖の風景に自然と視線が行く造りになっています。空調設備やバスルームも完備されていて、キャンプに来たとは思えない空間です。
夜にはテラスのファイアプレイスに火が焚かれ、アウトドアの雰囲気を盛り上げるだけでなく、ゆらめく炎を見ているだけでなんだか癒されます。ぜひ、こたつに入って雄大な河口湖の景色を眺めながら、カフェやお酒を楽しむ時間を過ごしてみてください。またプランによっては、ここで朝夕の食事を楽しむこともできます。
ファイアプレイスの炎が本当にロマンティックです
私たちが今回宿泊させていただいたのは、スタンダードツインのキャビン。レセプションで受け取った色とりどりのリュックを掛けるフックもあり、リュックが白い壁のアクセントになる心憎い演出です。
決して広くはないけれども、必要なものはすべて揃っています。富士のミネラルウォーターや河口湖畔のラベンダーを使った石けん、富士北麓の野草を使ったバスハーブなど、この土地らしいアメニティやドリンクが置かれているほか、アウトドアで過ごすための分厚いコートや長靴などもお部屋に用意されていて、安心です。
前編では、星のや富士のパブリックスペースやキャビンをご案内しました。続く後編では、お食事やアクティビティについてご紹介します。お楽しみに〜♪
(取材・文 山本厚子)