魅惑の迷宮
オーストリア・ウィーン その1
これまで4度訪問しているウィーン。美しい街並み、人々の優しい笑顔。
訪ねるたびに新たな発見があり、また訪ねたくなります。最初に訪ねたのは1999年。旅の発端は大好きな画家・クリムトの作品をウィーンの空気の中で見たいという思いからでした。
19世紀末に活躍した画家の作品を20世紀末に、となったわけです。
最近では2008年、ちょうどサッカーのヨーロッパ選手権の決勝が行なわれたその日でした。
W杯でも優勝したスペインがドイツを破った日のウィーンの街は、人で溢れかえり身動きが取れない状態。売店で水を買い求めるだけでどれほど苦労したか。
前夜には、あの静かな街がラテンパワー炸裂の雄たけびでいつまでも騒々しかったのです。
さて、ウィーン散策の一番のおすすめはシュトラーセンバーン(市電)に乗ることです。
森本哲郎さんの著書『ウィーン』のなかに、このような一説があります。「ウィーンを訪ねる人にぜひおすすめしたい。まず、リングシュトラーセを一巡してごらんなさい、と。市電はまるで観光列車のようである」。
ウィーンは市電、バス、地下鉄が張りめぐらされ、散策にはとても便利な街で、歩くのにほどよい大きさなのです。旧市街を取り囲むリング(環状道路)を走る市電に乗ってみましょう。
リングはかつては要塞の役割を果たす城壁でした。1857年、皇帝フランツ・ヨーゼフ(在位1848〜1916)がこの城壁の取り壊しを命じ、環状道路が建設されました。
リングの両側にはさまざまな建築様式の公共建築群などが19世紀末〜20世紀初頭にかけて建てられ、まるで建築の見本市のようです。
世紀末建築のオットー・ワーグナーの郵便貯金会館、ヨハン・シュトラウス像のある市立公園、ネオ・ルネッサンス様式の国立オペラ座、モーツアルト像が立つ王宮庭園、王宮(ホーフブルク)、美術史博物館と自然史博物館、ギリシア様式の国会議事堂、ネオ・ゴシック様式の市庁舎、ネオ・ルネッサンスの優美なブルク劇場などなど。
市電に乗っているだけで、この町の美しさを堪能できます。
以前はリングを循環する市電がありましたが、今は路線系統が変わってしまいましたので、路線図を確認して乗ってくださいね。
旧市街の中心にはシュテファン寺院が聳えます。
オーストリア最大のゴシック建築で、大屋根の幾何学模様がきらきら光ります。ただ、いつもどこかしら改修工事をしています。
343段の階段を登る南塔の展望台からは、ウィーンの街が一望でき、全体像をつかむことができます。エレベーターのある北塔もありますので、ご安心を。
ヨーロッパの街は、たいていは広場や教会を中心に街が形成されています。ですので、街の中心の高いところから俯瞰することで、メインストリートや目印になる建物などがわかり、散策の目安になるでしょう。
次回は19世紀末芸術とナッシュマルクト(市場)をご紹介します。
【おまけ】サッカーヨーロッパ選手権が行なわれた街にはこんな素敵なオブジェも
<ワンポイントアドバイス>
空路でウィーン国際空港に着いたら、まず『ウィーンカード』(ヴィエナ・カルテ)を購入しましょう(現時点18.50ユーロ)。
これはウィーンの地下鉄・バス・市電72時間のフリーパスと博物館や美術館、観光施設、レストランなどの割引が受けられるものです。
空港から街の中心部へのリムジンバスも、さっそく割引でスタート。めいっぱい使うと、そうとうお得です。
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