人生にエンタテインメントを! by マドモアゼル安原

第7回 今年は、出版120周年のメモリアルイヤー!「ピーターラビット」シリーズに描かれた自然の原風景(イギリス・湖水地方)

イングランド湖水地方のエスウェイト湖 撮影:辻丸純一

人生は旅に似ています。エンタテインメントは、その旅路に喜びと輝きをもたらす魔法!

世界中で愛され続ける、青いジャケットのいたずら好きなウサギ、ピーターラビット™。イングランド北西部にある湖水地方には、「ピーターラビット」シリーズに描かれた挿絵の風景が今もなお広がっています。

《『ピーターラビットのおはなし』挿絵原画》
ビアトリクス・ポター 1902年 ウォーン・アーカイブ/フレデリック・ウォーン社
© Frederick Warne & Co. Ltd, 2017

1902年に刊行されたシリーズ第1作『ピーターラビットのおはなし』は、2022年の今年に出版120周年を迎え、メモリアルイヤーの展覧会「出版120周年 ピーターラビット™展」が開催されています(6月19日まで、世田谷美術館)。盛大なバースデイパーティをテーマに、日本初公開となる物語の原点となった絵手紙や貴重な彩色原画など約170点で、作品の誕生前夜から今日に至るまでの歩みを振り返ります。

作者のビアトリクス・ポター™は、ロンドンの裕福な家庭に生まれました。幼い頃から絵の才能を発揮し、子ども部屋で弟と一緒に小動物をこっそりと部屋に持ち込み、「秘密の動物園」を作って描写をしていました。

1882年に家族とバカンスで湖水地方を初めて訪れたビアトリクスは、当時16歳でした。山や野原の自然に生きる動物や植物を描くことができるのは、彼女にとって大きな喜びでした。その後、戻ったロンドンでは雄ウサギを可愛がるようになり、1892年にはピーター・パイパーという名前をつけたウサギをモデルにしてスケッチや水彩画を描くようになりました。

『ピーターラビットのおはなし』は、彼女が挿絵画家として仕事を始めた頃、1893年に元家庭教師の息子で病気の男の子ノエルを元気づけるために、お見舞いに絵手紙を送ったのが原点とされています。やんちゃで冒険好きなウサギの主人公ピーターのはらはらする物語が描かれており、ベッドに寝ているピーターに母親ウサギがカモミールの煎じ薬を飲ませる場面はノエルを気遣う親愛の情が伺えます。

《ノエル・ムーア宛ての絵手紙》ビアトリクス・ポター 1893年 ピアーソン PLC
© Victoria & Albert Museum, London, 2015

ビアトリクス・ポター 1892年 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
Courtesy of the Victoria and Albert Museum

湖水地方の原風景に創作の着想を得たビアトリクスは、生涯をかけて自然の景観を守り、自身が購入した土地をナショナル・トラストに遺しました。世界一といえるほど有名になったウサギの小さなピーターラビットと仲間たちの功績は大きく、ユネスコ遺産として登録された湖水地方は現在でも人気の観光地となっています。

出版120周年 ピーターラビット™展
会期:2022年3月26日(土)~6月19日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、5月2日[月]は開館)
会場:世田谷美術館 1階展示室
〒157-0075 東京都世田谷区砧公園1-2 TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)

詳しくは公式サイトまで【展覧会公式サイト】https://peter120.exhibit.jp

 

参考文献: 公式図録

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