トコトコ東北 by 川崎久子

第17回 小さな城下町・黒石の元銭湯は、まるで宝箱のような場所でした!                      (青森県・黒石市)

青森県のほぼ中央にある黒石市。その基礎となる黒石藩の起こりは、江戸時代初期のこと。幼くして弘前藩4代目藩主となった津軽信政の後見人に、3代目藩主の弟である津軽信英が任じられ、明暦2(1656)年に五千石を分け与えられました。藩祖となった信英が陣屋を置いたのが、今の黒石の市街地なのだそう。

メインストリートである「中町こみせ通り」は、雪国おなじみのアーケード状の通路「こみせ」が続きます。城下町の名残が感じられて、実にいい雰囲気です。

「日本の道百選」にも選ばれているこの通りの中心にあるのが、「松の湯交流館」です。松の湯は平成5年まで地域の銭湯として営業していました。前身は江戸時代の旅籠だといわれており、明治40年代にはここで銭湯が営まれていたという記録が残っていることから、風格ある建物はそれ以前に建てられたものでは、と推測されています。銭湯の名前の由来になったとされる黒松の樹齢はおよそ350年。枝ぶりも見事な松の幹を守るように建物が建てられており、この古木への愛を感じます。

松の湯交流館の正面。

黒松の樹高はおよそ12mもあり、存在感があります。

銭湯としての役割を終えた松の湯は、再生を願う市民の熱い声もあって平成27年に交流館として生まれ変わりました。館内は、湯船やタイルがそのまま生かされ、洗い場があったと思われる場所は、物産品などの展示スペースになっています。黒石といえば、真っ先に思い浮かぶ津軽系伝統こけし(民芸偏愛ですみません!)。こちらには、そのこけしをチェスのコマに見立てた「こけス」が展示されていました。青森県立黒石商業高校の生徒が授業で考案したもので、世界的なゲームであるチェスとこけしを組み合わせることで、この黒石の伝統工芸品を海外にもPRできると考えたのだとか。高校生の柔軟な発想に脱帽です。

湯船、タイル、番台、ロッカーなど、往時の雰囲気を残して改装されています。

ライオン型の湯口とか、なかなかゴージャスです。

これが「こけス」!もちろんコマはひとつひとつ手作り。

松の湯交流館の模型。ほかに商家など黒石を代表する建物の模型が展示されていました。

ほかにも、クラフト感あふれる地元の建物の模型や、こけしをかたどったお土産品などもあり、ここには“黒石のかわいい”が詰まっています。

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