2022年2月1日、政府は「佐渡島(さど)の金山」を世界遺産に推薦することを決定しました。ただし韓国との歴史認識の問題もあり、国際社会への理解を今後求めていくなど、登録に向けてどのような道筋を進んでいくのか注目が集まります。
ところで、“金山”で思い出される世界遺産のひとつに、ブラジル初の世界遺産として1980年に登録された「古都オウロ・プレト」があります。リオデジャネイロから北へ約400km、標高約1,000mの山あいに位置し、18世紀のポルトガル植民地時代の面影を今に留めた町です。
19世紀末まではミナス・ジェライス州の州都でもあったオウロ・プレト
(Photo by Tchelo Veiga on Unsplash)
この地に金鉱脈が発見されたのは17世紀末のこと。「黒い金」を意味するオウロ・プレトと名付けられた町は、18世紀初頭に建設され、金鉱採掘の中心地として発展。町には一攫千金を夢見た人々が集まり、わずか40年の間に人口は10万人まで膨れ上がったといいます。最盛期には世界の金の60%が産出されました。しかし、19世紀に鉱脈が枯渇すると町は衰退。現在は、赤い瓦屋根の家並み、バロック様式の教会、石畳などが残る美しい古都として多くの観光客が訪れています。
ゴールドラッシュの莫大な富によって広場や橋、噴水、住宅など町は整備されましたが、注目すべきは豪華な教会群です。金鉱で儲けた人々は競って教会へ寄進し、数多くの教会が建てられました。ポルトガル移民による技術を礎に独自の建築や彫刻、装飾が発展し、ブラジル・バロック様式が確立されました。なかでもオウロ・プレト出身で、“ブラジルのミケランジェロ”と称えられる彫刻家アレイジャジーニョの最高傑作といわれるのが、「サン・フランシスコ・ジ・アシス教会」です。ファサード(建物の正面)の装飾や天使が描かれた天井画などは必見。また、教会内の装飾に400kg以上の黄金が使われている「ノッサ・セニョーラ・ド・ピラール教会」も有名です。
アレイジャジーニョの代表作・サン・フランシスコ・ジ・アシス教会は、
「ミナスの宝石」と称えられています(Photo by iStock)
壁や祭壇など金を使った彫刻で埋め尽くされている
「ノッサ・セニョーラ・ド・ピラール教会」(Photo by Raphael Fernandes on Unsplash)
翻って佐渡島の金山を見てみると、おもに西三川砂金山、鶴子銀山、相川金銀山の坑道跡、採掘施設、製錬施設などを中心とした構成資産になるようです。オウロ・プレトでの世界遺産登録は、金山がもたらした莫大な富が生み育てた建築や絵画、彫刻、そしてその一時代について評価されています。同じ金山に関連した世界遺産でも、構成資産は大きく異なってくるのが興味深いです。