ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第18回 住友コレクションを中心に収蔵・展示する泉屋博古館東京が3月にリニューアルオープン。HARIOのカフェも!(東京都・六本木)

5つ星ホテル「The Okura Tokyo」やスペイン大使館、スウェーデン大使館などがある六本木一丁目の閑静なエリアに美術館があるのをご存じでしょうか? 京都にある「泉屋博古館」(せんおくはくこかん)の分館として、住友家が蒐集した美術品を収蔵する泉屋博古館分館です。2002年の開館から約20年経つのを機に、2019年末に改修工事のために長期休館に入り、今年3月に「泉屋博古館東京」として新しい美術館へと生まれ変わります。

生まれ変わった展示室

リニューアルオープン前、建物内部が内覧会にて公開されたのでその様子をご紹介します。(作品写真は、3月開催のリニューアルオープン記念展の展示内容とは異なります)

私自身、泉屋博古館分館時代に何度かプライベートで訪れていますが、印象ががらっと変わりました! まずは名称。学芸員さんのお話によると、泉屋博古館分館から泉屋博古館東京に変わったのは大きなことだったそう。「分館」ですとやはりサブ的なイメージを持たれてしまったり、京都の泉屋博古館を訪れた方が分館も京都にあると思い込んでいる方も多くいたそうです。「東京」と付いたことで、東京と京都の2本柱の美術館ということを広く知らしめることができます。

そして美術館の外観。エントランスの幅が広くなり庇(ひさし)が短くなり、外観にガラスが用いられたので、とっても明るくなった印象です。以前は日陰が多くふらっと気軽に入れるような雰囲気ではなかったので、ここは大きく変わりました。また、ガラスに周囲の緑が映りこむので、周囲との一体感も増しました。

ガラスが多用されたエントランス(画像提供:泉屋博古館東京 ※画像の転載・コピー禁止)

展示室をつなぐエントランスのホールも大きく変化しました。壁面は、これまでの過去や歴史、これからの未来の積み重ねをイメージしたという左官塗りの版築仕上げ。開放感あるこの場所は、美術鑑賞への第一歩として気持ちを転換させるスペースとなっています。

大きく変わったのは展示室です。2つの展示室は改修され、4つに増えました。展示室が増えたことで展示作品は増えますし、展示構成の幅も広げられます。お話によると、新設された第4展示室は事務所があった場所だとか。新しい事務所は半地下へ移動となったそうですが、素晴らしい展覧会が開催されるのも学芸員さんやスタッフさんあってこそ。快適にお仕事ができる環境となっていることを祈ります(笑)。

落ち着いた色の照明と映り込みの少ない展示ケース。エントランスもゆったり(左下)

さらに、天井や壁の色、カーペット、空調設備や照明、ケースなども最新のものに変更・更新されました。以前の展示室は暗かった印象でしたが、リニューアル後は壁色やカーペットなどをより作品に集中できるようにとダークでシックな色へ変更。特に壁の色は、コレクションの大半を占める近代絵画や茶道具、陶磁器などさまざまな作品を展示する際の汎用性が高くなるようにと落ち着きある濃いグレーを採用。展示ケースも映り込みが最小限に抑えられています。また、照明は2700ケルビンから5000ケルビンに色温度が調整可能なものにアップデート。冷たい青や、あたたかい赤など、作品をよりきれいに映すことが可能となるそうです。

また、新設された第4展示室は、美術館がかつて住友家の別邸(通称「麻布別邸」)の跡地にあることから、当時の記憶を継承するような展示室となっています。濃い青のカーペットや壁紙の意匠など、開館した暁にはチェックしてみてください。

第4展示室の壁紙とカーペットにも注目

加えて、新設された講堂では、美術の裾野を広げるアートに関する新たな連続講座やワークショップなどを考案中とか。また、所蔵作品をモチーフとしたオリジナルグッズなどを購入できるミュージアムショップも新設されました。

オリジナルのミュージアムグッズを購入できるショップ
(画像提供:泉屋博古館東京 ※画像の転載・コピー禁止)

さらにうれしいのが、ミュージアムカフェがオープンしたこと。ガラス製品メーカーのHARIO直営の「HARIO CAFE」が既に昨年10月1日から営業中です。店内に一歩入った途端に香ってくる淹れたてコーヒーの豊潤な香り。アート鑑賞後の余韻にしっとりとひたれます。こちらでは珈琲豆はもちろん、コーヒー器具やガラスのアクセサリーも購入でき、カフェのみの利用も可能です。

また、プレオープン展示「木島櫻谷と近代の花鳥画」展や展示室など、360度の臨場感ある画像が無料アプリ「日経VR」で限定公開されていますので、スマホで要チェックです!https://adweb.nikkei.co.jp/vr/lp/ 

泉屋博古館東京近くには、実業家・大倉喜八郎が設立した「大倉集古館」や、陶芸コレクションの「菊池寛実記念 智美術館(ともびじゅつかん)」などアートスポットが集中しています。そして周辺一帯は桜の名所でもあるので、閑静なエリアを散策しながら、リニューアルオープンする美術館とお花見を楽しんでみてはいかがでしょう。

泉屋博古館東京(2022年3月19日オープン予定) https://sen-oku.or.jp/tokyo/

☆リニューアルオープン記念展Ⅰ 2022年3月19日(土)~5月8日(日)
「日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京」

リニューアルオープン記念展Ⅱ 2022年5月21日(土)〜7月31日(日)
「光陰礼賛─モネからはじまる住友洋画コレクション」

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