リスボンに次ぐポルトガル第2の都市ポルトは、大西洋に注ぐドウロ川河口に位置する港町。ローマ時代にポルトゥス(港)と名付けられ、2,000年の歴史を有する都市景観が広がります。1996年には「ポルト歴史地区」として世界遺産に登録されました。
セーラ・ド・ピラール修道院から眺めたドン・ルイス1世橋とポルトの夕景
古くから海洋交易で栄え、商工業の中心地として発展してきたポルト。14世紀、町の防衛のために築かれた巨大な石造りの城壁「フェルナンドの市壁」が一部残っているのが今も見られます。富を得た商人がエンリケ航海王子の海外進出を支援したこともあり、15世紀にはポルトから出航した船が北アフリカのセウタを攻略。大航海時代の先駆けとなりました。往時の町の繁栄を象徴するように、12世紀にはロマネスク様式のポルト大聖堂や、14世紀には精緻なバロック装飾の彫刻で知られるサン・フランシスコ教会などの教会建築が建てられました。時代が下ったのちも、ポルトガル一の高さの鐘楼をもつクレリゴス教会や、アルハンブラ宮殿を模して造られた「アラブの間」があるボルサ宮、アズレージョ(タイル)で飾られたサン・ベント駅など多様な建造物が残され、ポルトの歴史を物語っています。
イタリア人建築家によって1749年に建てられたバロック様式のクレリゴス教会
ポルトガルの歴史が描かれた約2万枚のアズレージョに彩られたサン・ベント駅
ひとつひとつの建造物が重要な意味を持つのはもちろんですが、私がポルトを思う時に必ず心に浮かんでくるのは、ドウロ川北岸の丘陵地を対岸から眺める風情ある風景です。赤茶色の屋根の建物が折り重なるように建ち並び、緩やかに流れていくドウロ川にアーチが美しい二重構造のドン・ルイス1世橋が架かっています。世界遺産にも含まれるこの橋は、エッフェルの弟子、テオフィロ・セイリグが設計したものです。ドウロ川にはいくつも橋が架かっており、少し上流にはエッフェルの手によるドナ・マリア・ピア橋もあります。
ドウロ川北岸の丘陵地を埋める赤茶色の屋根の建物。
1時間ほどのクルーズに参加すれば川沿いの景色も満喫できます
また、ポルトはポートワインの集積地としても知られています。ドウロ川上流は、ブドウ畑が広がる、世界有数のワイン産地。アフターコロナに再びポルトを訪れる機会があれば、まだ訪れていない世界遺産「アルト・ドウロのワイン生産地域」へも足を延ばしてみたいものです。