土木感満載の発電施設
杜の都仙台を巡るのに便利な観光シティバス・るーぷる仙台。瑞鳳殿や仙台城跡、大崎八幡宮などの観光スポットをぐるりと巡る便利なバスです。その中に「交通公園・三居沢水力発電所前」という停留所があります。この停留所から徒歩約3分のところに、日本の水力発電発祥の地があります。
瀟洒な発電所建屋は登録有形文化財
わが国初というと、京都の蹴上発電所や足尾銅山の発電所などの説がありますが、三居沢の水力発電の創設は明治21年(1888)。宮城紡績会社の工場内に引いた水を利用して出力5キロワットの直流発電機で工場内に50灯、烏崎山の山頂に1灯のアーク灯がともったのです。それを遠くから見た町の人々は狐火だと騒いだとか。東北初の電灯は、その後三居沢の水力発電を利用して6年後には仙台に365灯の電灯をもたらします。そして明治43年(1910)、現在の三居沢発電所が運転を開始し、今も現役なのです。
発電所=巨大な施設を想像しがちですが、三居沢発電所はモダンでかわいらしい建物。現在は出力1000キロワットの発電所と配電用変電所として無人化され、仙台技術センターから遠隔で監視制御されています。内部はガラス越しから見学できます。
ガラス越しに見学できる現役の発電機
発電所の隣には「三居沢電気百年館」があります。館内に入ると、びっくり! フランスの画家、ベルナール・ビュッフェのリトグラフが飾られています。東北の電気100年を記念して三居沢発電所の全景の絵画を依頼したところ快諾したとのことで、写真を送って描いてもらったそうです。リトグラフと同じアングルから写真を撮ってみましたが、遮るものが多すぎました。
三居沢電気百年館の内部
左は三居沢電気百年館のパンフレット表紙から流用
館の2階のテラスからは発電所の肝が一望できます。発電用水は、広瀬川の水を青葉山を貫く約1.6㎞の導水路から引き込み、水槽に貯めて水圧鉄管で落差26.67mの発電所へ。使われた水は放水路から再び広瀬川へと流れていきます。水槽へ登る階段の中腹にはかつて建設された発電所の放水隧道跡が残っています。外装は煉瓦造りですが内部は石造りになっています。
長い水力発電の歴史を支え、エネルギーを生み出してきたのは広瀬川の豊かな清流。その上流にはニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所もありますね。