枯山水の庭で大海を表す白砂。その白砂には、比叡山から京都盆地へ流れ出る白川が削り出した、白川砂が使われます。
その白川に沿って比叡山の肩を乗越して、大津まで通じている通称山中越え。その中腹にある「京都 北白川天然ラジウム温泉えいせん京」を紹介いたします。実は経営者の藤田恒二郎君と私は中学生からの友人で、魅力的に生まれ変わった宿を、是非取材させて欲しかったのです。
ゆったりとした上質の客室、テラスからは野趣あふれる山の斜面が望める
当宿の歴史は、名古屋で教師をされていた藤田君のご祖父様が、縁あって公有地払い下げで、この山林を購入されたことから始まります。敷地内に自噴している上質の泉を3つ発見、地元では「おたすけ水」と呼ばれていて、怪我を洗えばみるみる治り、飲めば腹痛にも効くと言い伝えがあり、分析してみると大量のラドンが含まれていました。
裏山の斜面を100mくらい分け入ったところにある、源泉3本のうちの2本を点検する藤田氏
源泉から湧き出した温泉水が一旦ここにプールされる。
館内の水はすべてここから供給される。琵琶湖からの水は来ていないので使いようがない
そこで教師を辞め、人助けのための温泉施設を昭和30年に開業されます。いわゆるヘルスセンターのようなものでした。その後ご両親が引き継ぎ、昭和48年から宿泊できるようになりました。フジタトラベル観光で8年間旅行ビジネスを学び、京都の卸売市場から最も仕入れていると言われていた、仕出し店の二和佐の板場で、3年間みっちり鬼のように料理を叩き込まれた恒二郎君が10年前に本格的に参入しました。しかし建物の老朽化はままならず、3年前の2018年に全面改装し現在に至っています。
和の趣の中に、洋も取り入れた静寂のラウンジ
露天風呂付の客室
彼は、京都嵐山にある和建築の才門俊文建築事務所の力を借り、宿を現場で一緒になって作り上げますが、一つの教科書に大きくインスパイアされ、それを指針としたそうです。それは「星野リゾートの事件簿」と「星野リゾートの教科書」で、星野さんにはお会いしたことがないけど、もし機会があったら本当にお礼を言いたいそうです。
厨房に立つ経営者の藤田恒二郎氏。すべての料理を手掛ける
客室は全5室、4室が露天風呂付、2室はコネクトできます。このような本当にこじんまりした宿ですが、3室埋まれば満室にするそうです。
次号では素晴らしい、温泉と料理を具体的に紹介します。
京都 北白川天然ラジウム温泉 えいせん京