小さな頃から、毎年盆と正月は福井県の若狭に暮らしていた父方の祖父母を訪ねていました。
京都までは車で日帰りできる距離。そんなわけで子供の頃から何度となく訪れている京都。
中学生の頃は多分に漏れず、修学旅行で清水寺と三十三間堂を訪れたし、大人になってからも出張帰りにふらりと立ち寄って、美しい寺院だけでなく、季節毎に流れる京都の町の独特な色気に魅了されてきました。
そして久々の京都。コロナ禍でありながら、メディアは止まれないのが現実。取材の機会を得た私が仕事を終えての時間をどう過ごそうかと考えていたところ、同行した編集の女性が瑠璃光院を訪ねると聞き、ついて行かせていただくことにしました。
八瀬の瑠璃光院。紅葉の名所として度々メディアに登場する光景は記憶にありましたが、なかなか訪れるチャンスを得なかった場所。市内からは少し離れており、バスや電車を使って1時間ほど。
瑠璃光院は平安貴族や武士たちに「やすらぎ」の郷として愛されてきた比叡山の麓の八瀬に位置します。元々は別荘として造営された建物は、大正時代の終わりに京数寄屋造りの名人によって大改築され、その後料亭として運営されていたことも。
現在は岐阜県にある浄土真宗光明寺の支院として親しまれ、春と秋の時期に2ヶ月だけ中に入ることが叶うとのことで、今回は願ってもない機会を得ることができたのでした。
訪れた5月半ばは新緑が深まる時期。山門から参道の力強い緑の青紅葉のトンネルを抜けて、静謐な空気が流れる建物の中へ。
参道を抜けて書院を目指す
玄関で靴を脱いで中に入り、階段をあがって2階へ足を踏み入れると、広がる光景に思わず息を呑みました。書院2階から庭に目を向けるとその景色は室内の写経机に映り込んで、目に入る緑、翠、碧のグラデーションが視界一面に広がりました。そこにいる誰もが同じように息を呑んで、ゆっくりと畳に正座すれば、背筋がピンと伸びました。そしてしばらく時を忘れてその光景に身を委ねました。
美しいリフレクションを楽しめる
1階から眺める瑠璃の庭、臥龍の庭にも緑の景色が広がり、苔の香りする中、比叡山を源流とする川のせせらぎを聴いて、また心が落ち着いていくのを感じました。
秋の紅葉の時期とはまた違って、一面に広がる美しい緑と凛とした空気。
心の落ち着きとともに、何かエネルギーが湧くそんな非日常体験となりました。
瑠璃光院の山門
瑠璃光院 住所:京都府京都市左京区上高野東山55
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