島根県鹿足郡津和野町。山口県にほど近い島根県の南西部内陸側に位置するこの町は、山に囲まれた盆地で「山陰の小京都」としても知られています。文豪森鴎外や哲学者の西周、画家の安野光雅を輩出したちょっと高尚なイメージがあり、石畳に白壁の街並み、川に泳ぐ鯉を眺めながらゆっくりと散策できる津和野町に、私は2度ほど訪れたことがあります。
町の中心にある津和野大橋。ここからの東側の眺めは、優雅に流れる津和野川の向こうに青野山を臨み、西側は単線の山口線が走る鉄橋の向こうに千本鳥居が山頂の本堂まで続く太鼓谷稲荷神社。
まさに山間の町を感じられる名スポットです。
そんな美しい遠景を眺めながら橋を渡るとふと目の前に白い鷺。「え?」と思うほど普通に白鷺はそこに立っていました。そして私は思わず持っていたカメラのシャッターを切りました。
美しい佇まいにうっかり魅入ってしまうところでしたが、まさかそんな場所に白鷺が立っているなどと誰が思うでしょうか。凛とした立ち姿はまるで置き物のようで、幻想を見ているよう。そしてすぐに白鷺は優雅に羽を広げて橋の向こうに飛び去っていきました。
津和野の人に聞けば、このような光景は珍しくはないとか。白鷺が人々と当たり前に共生しているのが、津和野町なのかもしれません。
それもそのはず、毎年7月の京都祇園祭の時期に、町の小さな弥栄神社に伝わる古典芸能神事として、町を練り歩く「鷺舞」がこの町の代名詞となっています。
「鷺舞」は京都が発祥の地でありながら、受け継がれているのは唯一津和野町だけ。今は国の重要無形文化財に指定されています。この時期地元の小学生の男女が町を舞いながら練り歩く「小鷺踊り」と、大人の男性2名が弥栄神社で舞う「鷺舞」が繰り広げられます。津和野出身の友人も、子供の頃に「小鷺踊り」に参加したと話していました。
それにしても、大人の「鷺舞」は高さ85cm、重さ約3kgの木製の鷺頭と、大中小の3種の羽39枚を1点に集めて扇形にした重さ12kgもある鷺羽を身に着けて舞うというから本当に驚きです。
かなりの重量ですね。
そんな「鷺舞」をモチーフにした「鷺舞の像」は津和野大橋の前に建っていて、その背景に春は桜、夏は緑、秋は美しい紅葉が見られ、撮影スポットとしても人気です。
この像を眺めながら、その姿は本物の白鷺に勝るとも劣らない力強さと美しさなのだろうと想像。いつか「鷺舞」鑑賞が叶いますよう。
津和野町観光協会 https://tsuwano-kanko.net