子供の頃から家族で毎冬スキーに訪れていた北海道。
その後も仕事やプライベートで何かと縁があって再訪を重ね、広い道内各地の風景や食、歴史や文化に魅了され続けています。最近では、出版したフォトエッセイ「酒場のおんな」を共著した相棒の如月まみさんの出身地である函館に共に5回ほど訪れて、毎回素敵なお店や酒場を愉しんでいます。本州とは異なる点も多く、トリビアが多い北海道からニホンノカタチです。
写真は函館のアンティークショップで。木箱に無造作に積まれていたのは西陽を浴びて美しい佇まいの木札。そしてその木札に書かれた美しい文字に目がいくも、「乙女...」の後が全く解読できなかったことを思い出します。
後にこれは北海道にしかない「板かるた」だと知りました。
飛騨高山地方の郷土料理「朴葉味噌」で知られる朴(ホオ)の木などを用いた木札。その昔紙が高価であった時代に、建物や船の半端材を使って作られたのが始まりでした。
そして書かれているのは美しくて独特な文字。
解読が難しいのはそれもそのはず、これは現在使われていない変体仮名で書かれているからでした。函館で見つけた時に読めなかった木札に書かれていたのは
「乙女の姿暫しとどめん」…つまり百人一首の下の句というわけです。
この板かるたを使って北海道独自のユニークな遊び方をするのが「下の句かるた」。小倉百人一首を元にするのですが上の句は存在せず、下の句を読み上げて下の句の札を取るという遊び方です。3人対3人の団体戦で行われ、今も北海道各地で地区大会などが開催されているそうです。
実はその歴史をたどると、会津発祥というからびっくり。
江戸時代後期に会津藩の武家や商家で行われていて、明治維新後に会津から開拓時代の北海道に入植した人たちが広めたと言われています。雪深い北海道の冬の室内娯楽として盛んになったのでしょう。
紙が高価だったから木製というのは今の時代だと逆のような気もしますが、朽ちることはあっても破れることがないので、ひとつのコレクションとしてもその美しい札を買い求める人がいるのがわかります。
日本各地に継承されるその土地独自の文化伝統の魅力にまた嬉々としました。
函館らしい佇まいのアンティークショップでした
【全日本下の句歌留多協会】
http://www.shimonokukaruta.com
写真・文/yOU(河崎夕子)