由比漁港で行なわれる桜えび漁は春(例年4月中旬から)と秋(例年11月初旬から)、年に2回の限られた時期にしか行われない非常に希少価値の高い漁。
更に漁の解禁中でも、天候や水温などの要因で漁船が出港できるか、ギリギリ直前までわからないことも。漁師さんにとっては、毎年どうなるかまるでわからない自然相手のギャンブルのようなものだといいます。
私たちが静岡県の中部、静岡市の由比に出かけたのは4年前の春。
その日は天候が危うく、夕方まで出港の目処が立たずヒヤヒヤとしましたが、
直前になって出港が決定、ありがたくも漁船に同船させていただくことになりました。
桜えびは外敵から身を守るために、暗くなると水の中を上昇してきて餌を取る習性があることから、漁は暗くなりかけた時間に出港となるのです。
漁船には船長を含めた6人の漁師さん。くわえ煙草の一人が船尾に片足をかけて海の様子を眺める後ろ姿には、思わず心惹かれてシャッターを切った記憶が(笑)。
海の男達はかっこいい!
漁は二艘の船が1組で行います。
下ろした網に桜えびがかかると、それぞれの船の距離を近づけて水揚げを行います。
時間との勝負がありながらも、傷をつけぬように丁寧に網を上げていく様子はなんとも緊迫感がありました。水揚げされた桜えびはそのまま急いで漁港へ。
とにかく鮮度が命!そのまま市場に並び、すぐに競りにかけられました。
一夜明けて翌朝のこと。
この時お世話になった水産業者さんに案内されて到着したのはお隣の蒲原の富士川河川敷。こちらが「干し場」。
春漁の桜えびは暖かい気候を活用した天日干しに最適なのです。
競り落とされた桜えびはすぐにここまで運ばれて、太陽が上がる前にふるいにかけながら地面に広げられたシートに撒かれていきます。
同時に何人もが桜えびをふるいにかけていくと、あっという間に辺り一面が桜色に染まります。
正午を跨いで夕方日が落ちるまで天日干しされる様子は、この時期の蒲原町の風物詩。
時間を追うごとに天日干しされた桜えびは色が濃くなり、美しい桜色の絨毯は更に鮮やかに色づいていきます。
乾燥の頃合をみて今度は回収作業。これも長年の匠の技。手分けをして熊手を使いシートの中の桜えびをかき集め、あっという間にトラックに積み込まれていきました。
空気の澄んだ日はその向こうに青い富士山がそびえる美しいコントラスト。
これこそが日本ならではの光景ですね。
夫婦船で水揚げされる桜えび