今年のクリスマスは東京からちょっと足を延ばして箱根で過ごすのはいかがでしょう。巨大ツリーが輝くふたつのミュージアムをご紹介します。
まずは『箱根ガラスの森美術館』です。
比較的新しいものと思われるかもしれませんが、ガラスの起源は実は約4000年前の古代メソポタミア文明まで遡ります。はるか昔から装身具や工芸品としてガラスは活用されていました。
中世に入るとヨーロッパ全域でガラスが普及しますが、その筆頭がヴェネチア(イタリア)でした。ヴェネチアは海上覇者として地中海の制海権を13世紀ごろにほぼ掌握し、貿易を通じて巨万の富を築きました。その輸出品のひとつがガラスだったのです。
ヴェネチアン・グラスを鑑賞できる箱根ガラスの森美術館
しかし実はヴェネチア地方ではガラスの原材料が取れませんでした。もしガラス製造の技術が国外に漏れたら原料や燃料を有する国がガラスを作ってしまい、ヴェネチアはガラスを独占できなくなる。それを恐れたヴェネチア当局は、1291年にすべてのガラス職人をヴェネチア沖の周囲わずか約5kmのムラーノ島に職人だけでなく助手や家族にいたるまで強制移住させました。彼らに島外不出の掟を守らせてガラス技術がヴェネチアの外へ流出するのを防いだのです。ムラーノ島は現在もヴェネチアン・グラスの中心地として多くのガラス工房が密集しています。
このような歴史があるヴェネチアン・グラスですが、特に世界に名声を轟かせたのが16世紀に発明された「レース・グラス」です。透明なガラスの素地にレースのような繊細な文様を封じ込め、技巧の限りを尽くした秘法でした。
『箱根ガラスの森美術館』では、15世紀から19世紀にかけてヨーロッパ貴族や貴婦人たちを魅了したこれらヴェネチアン・グラスを鑑賞することができます。
レース・グラスの繊細さは実際に目で確かめて
そして、この時期特に楽しみなのが庭園内にそびえるクリスタルガラスのクリスマスツリーです。高さ11mと8mの2本のクリスマスツリーに合計15万粒のクリスタルガラスが輝き、日中は太陽の光と風に当たって七色に輝き、ライトアップされる夕方には幻想的にきらめく姿を見ることができます。
クリスタルガラスのクリスマスツリー
箱根ガラスの森美術館 https://www.hakone-garasunomori.jp/
クリスマスラブツリー ~ラ・コッピア~ 12月1日(火)~25日(金)点灯時間16:00~17:30 「Buon Natale! 幸せを運ぶヴェネチアン・グラス」も同時開催中。
次にご紹介するのは、『箱根ガラスの森美術館』のすぐ近くにある『星の王子さまミュージアム』。童話『星の王子さま』とその作者サン=テグジュペリをテーマにした世界で唯一のミュージアムです。
イルミネーションで彩られる『星の王子さま』
展示ホールでは、郵便輸送パイロットとしての欧州~南米間の飛行航路開拓や第二次世界大戦時の偵察飛行、そして地中海上空で行方不明となるラストフライトなど、作家であり飛行家でもあったサン=テグジュペリの波乱万丈な生涯を知ることができます。
作者ゆかりの20世紀初頭のフランスの街並みが再現された園内もどこを撮っても絵になります。
1930年代のフランス・パリの街並みを再現した「飛行士通り」
そしてこちらも高さ7mものクリスマスツリーと壮大なイルミネーションで敷地内が彩られます。来年1月5日まで見られる今年のツリーのテーマは、ガーデンデザイナー吉谷桂子さんによる「Little boy dream」。男の子(子どもの頃のサン=テグジュペリ)の、夢の世界・空への憧れが表現されているそう。
サン=テグジュペリが幼少期を過ごしたサン=モーリス・ド・レマンス城を再現。
フランス式庭園にクリスマスツリーが輝く
星の王子さまミュージアム https://www.tbs.co.jp/l-prince/
ロマンティック・スターリー・ウィンター 開催中~2021年1月5日(火)点灯時間15:30~18:00(最終入園17:00)
どちらもこの季節ならではの美しさ。冬を迎える箱根はちょっと寒いので、あたたかくしてぜひ訪れてみてくださいね。
※イルミネーション写真提供:箱根ガラスの森美術館・星の王子さまミュージアム(写真は過去のもの)