トコトコ東北 by 川崎久子

第4回 全集中で鬼退治!リアルがいっぱいの「鬼の館」へ(岩手県・北上)

岩手県北上市の市街地と夏油高原を結ぶ県道122号線、「夏油高原いで湯ライン」の道沿いに「北上市立鬼の館」なる施設を発見。私の故郷・福島県にも「安達ヶ原の鬼ばば」という昔話があったなぁと思い出しました。伝説の地である二本松市の安達ヶ原には、鬼ばばが棲んでいたという岩屋や鬼ばばの墓である塚があり、私が読んだ本にはその写真が禍々しく載っていました。伝説から離れたあまりのリアルさに、子ども心にも恐ろしかったのを覚えています。ここ北上市の「鬼」とは、いったいどういうものでしょう。『鬼滅の刃』が流行っている昨今、俄然興味が湧きます。

施設では想像上の鬼を「大人(おおひと)」「鬼神」「餓鬼」「妖怪」に分類して紹介

「北上市鬼の館」は、日本や世界の鬼に関するさまざまな資料を展示する博物館です。なぜ北上にこのような施設があるのとかというと、北上地方に古くから伝わる伝統芸能「鬼剣舞」がその理由。鬼剣舞は、鬼の“ような”面を着け、念仏を唱えながら舞う念仏踊りのひとつ。

その発祥については諸説あり、大宝年間(701〜704)に大和国吉野川で水行し、大観山で苦行した修験山伏が、満願の夕暮れに踊った念仏踊に由来するとも、大同年間(806〜810年)に出羽国羽黒山で舞われ、修験山伏が広めたともいわれています。

鬼剣舞の面は、赤・黒・青・黄・白の5色あり、仏教の五大明王を表しているのだそう。先に鬼の“ような”と強調しましたが、鬼ではなく仏の化身で、もちろんツノもありません。でも、一般には「鬼面」と呼ばれています。確かに、眉間のよった険しい表情や、その色を見ると、鬼を連想してしまいます。

鬼剣舞の衣装。主に8人の踊り手によって披露されます。
「大威徳明王」を象徴する白面は、リーダー格で「一剣舞」と呼ばれます

館内には、この鬼剣舞の衣装も展示されているほか、アジアを中心とした100以上の鬼面がずらり並ぶコーナーなど、見応え十分。展示物を興味深く見ていると、ガラスケースの中に面がひとつ、ぽつんと飾られた展示があります。さて、これは?と思いながら面の前に立つと、一瞬で鬼の形相に変化!何も知らずに展示を見た小心者の私は、思わずおおっと一声、仰け反ってしまいました。

世界の鬼面コーナー。
バリ島の祝祭劇「チャロナラン」で光を司るバロン(右)と闇を司るランダ

鬼の館の野外ステージでは、冬季を除き月に1回、鬼剣舞を披露しています。勇壮な舞は一見の価値あり!です。

北上市鬼の館

https://www.city.kitakami.iwate.jp/life/soshikikarasagasu/oninoyakata/index.html

JR北上線・東北新幹線北上駅より車で約20分 

 

 

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ